ジョザ村の村民、タス村に亡命する
今回の主要人物
【さくら神社】
さくら(人間)異世界へ転生者した女の子。タス村の領主兼さくら神社神主。もふもふ同盟。主人公。
エスター(人間)孤児院出身の元ゼフ王国大将。もふもふ同盟。
タマ(九尾の狐)さくら神社に祀られている、アーティファクト「お稲荷様」の化身。武術に長け、料理上手。
シゲ(ぬらりひょん)さくら神社の参謀。
【リス獣人】
イスト(リス獣人)代表。
リン(リス獣人)初登場。
【ジョザ村】
デリエ(人間)ジョザ村の村長。
バージル(人間)鍛治職人。
クボ(人間)初登場。男の子。
シナ(人間)初登場。女の子。
亡命のため、タス村を目指しているジョザ村の村民達の上空を、隕石が上空を通過していく。
(このタイミングでゼフ王国に巨大魔法攻撃を仕掛けるなんて、最悪じゃないか)
それでも戻る事が出来ない一行は、隕石の行方を見ながら落下方面を目指して足を進める。
もうすぐヒク村に着くはずだ。
隕石に向かってドラゴンが飛んでいくのが見え、翼を広げ隕石をその体に受け、受け損ねた隕石を尻尾で砕いている。
「これから行く所は、ドラゴンが居る所なの?」
ジョザ村で一番小さい子供のクボが震えながら、お父さんのバージルに聞いた。
「今の状況を見るとそうかもしれないな…お父さんが守るから大丈夫だ!」
クボのお姉ちゃんのシナは、震えているだけで、足がすくみ顔は青ざめていた。
(俺だって怖いさ…ドラゴンを見た者は、死ぬかドラゴンスレイヤーの称号を得るかって言うくらいだからな…うちらの運命は前者だろう…)
バージルは、シナを抱え、クボの手を引いて、空腹で倒れそうなのを気力で耐えながら足を進めた。
ジョザ村の村民は、もうみんな限界を通り越している。楽になりたいと思う者も中にはいるかもしれない。
ドラゴンが隕石を受け切ったように見えたが、大きな地響きが伝わってきた。
俺だけの隕石を砕いたとはいえ、地上に落下した衝撃だろう。タス村は大きな損害を受けていて、私達を受け入れてもらえないかもしれない。ジョザ村の村長のデリエは自分達の不運を呪った。
バジ王国が大型魔法攻撃を行った村に、バジ王国から亡命したいと助けを求めたら、普通は人質として拘束され、交渉の材料にされるかもしれない。
ドラゴンが守ったように見えたが、実際は守り切れていなく、亡命しようとしている村が壊滅状態かもしれない。
そもそも、ドラゴンが襲ってくる可能性の方が高そうだ。
デリエは歩きながら色々な可能性を考えるが、ジョザ村の村民が受け入れてもらえるように話が進む事が考えれなかった。
ヒク村の惨状も見た。「亡命者もこの村人同様に切り捨てる。ゼフ王国 タス村領主兼大将 エスター」の貼り紙も目にした。せめて自分ひとりの命だけで、村民を受け入れてもらえれば、成功と言えるだろうとデリエは覚悟を決めていた。
「さくらちゃん、みんな固まって…あんたら何してるんだぁ?」
シゲさんの声が聞こえて、みんな固まる。シゲさんとくーちゃんが命がけで潜入して情報収集している間、プリンに夢中になっていただなんて言えない。
トコトコ寄ってきた、くーちゃんがバケツの中を覗いて…
「さくら!くーもプリン食べたい!」
とバラした。
「活躍してくれたちーちゃんの願いで、プリン食べたいって言われたから、お取り寄せして…お裾分けもらってた…」
「ご主人様!ひどいのだ!それだとアタイが悪いみたいなのだ!」
「さくらちゃん、責めてるわけじゃねぇんだぞ、みんな車座になって顔を寄せているから、不気味だったんだよ」
さくらは、咎められてると思ったが、そうでないことにホッとした。
「攻撃したのは、ヒク村の仕返しとしてバジ王国が仕掛けたもんだったぜ。集まって対策しなぇとだな」
そう話している時、ラウロさんが駆け込んで来た。
「さくら領主様、バジ王国からの亡命者が20名来られました。村に入れてもいいでしょうか?」
さくらはスマホの【マップ】アプリで、タス村の入り口を見た。敵対する赤い丸ではなく、ノーマルな白い丸な事を確認し、公民館に通すようにラウロさんにお願いした。
「攻撃仕掛けてすぐに亡命してくるって怪しすぎじゃねぇかぁ?」
シゲさんの言うのは、もっともで有る。
さくらは、エスターさん、シゲさんと一緒に公民館に向かい、亡命してきた人たちと会う。
(亡命してくるほどだから、きっとお腹すいているよね)
タマさんには、お料理教室の生徒達と炊き出しの準備をお願いした。
「任せるぞえ!」
公民館に入り、さくらの挨拶から始まった。
「私はタス村の領主さくらと言います。こちらは、補佐のエスター、タマ、シゲです」
「さくら領主殿、村に入れていただき、感謝いたします。私達はバジ王国のジョザ村の村長をしていたデリエと言います。一緒に居るのは、ジョザ村の村民全員です」
「何故、亡命をしてきたのですか?」
「ピーナッツ火山の噴火が収まり、モンスターの襲撃と食料難が続き、バジ王国に助けを求めましたが助けは何もありませんでした。抵抗虚しくモンスターの襲撃に村はのまれ、生き残った者だけで都市ギルに向かいました。そこでは、食料難に苦しむ民はおらず、普通に暮らしている姿があり、私たちの村は国から見捨てられたと判断しました。一度見捨てられた民が、どうやってバジ王国で暮らしていけましょう。ヒク村で亡命者もヒク村の村民同様に切り捨てるという内容のビラも拝見しました。責めて、私ひとりの命で他の村民を受け入れてもらえないでしょうか」
(ヒク村に脅すビラなんてあったね…それを見てもこの村を目指して来たって…辛かったよね。小さい子供もいるのに…)
「ここにくる途中、見たんだろぉ?隕石でお前さん達のバジ王国がこの村に隕石ぶっこむ光景。この村の者が、バジ王国に、いい感情なんて持ってねぇとわかってるだろ?被害受けてまだ間もないのに、この村に足を踏み入れたのはなんでだ?」
「私の命は、どうぞ好きにして下さい。その代わり、せめて未来ある若い者には…慈悲をいただけないでしょうか。なにとぞ、お願いします。」
シゲさんの揺さぶる質問に、デリエさんは、魂の叫びのように答えた。
小さい子供は震えて顔も真っ青になっている。
さくらは、公民館の窓の外から、心配そうに多くのリス獣人達が覗き込んでることに気がついた。
(なんでだろう…)
その時、ひとりのリス獣人が入ってきて、真っ青のな顔で震えている二人の子供に駆けて行き、抱きついた。
「シナ!クボ!怖がらないで!この村は天国だよ」
『リン!!』
どうやら小さい子供とリンという獣人は顔見知りらしい。
「さくら領主様、私はリンと言います。この二人…シナとクボは、お父さんにお昼のお弁当を届けにピーナッツ火山によく来てました。その時に、一緒に遊んだり、果実をあげたりしてた友達です。どうか助けてあげてください。」
とお願いをしてきた。
(リス獣人が警戒しないで接するような人達ってことなんだね)
「大事な席に、突然入り込んでしまってすいません…」
と言って、イストさんにリンさんは公民館の外に連れて行かれた。
「エスターさん、シゲさん、私の一存で決めてもいい?」
「さくら殿に従う」
「さくらちゃんの好きにしな」
「みんなありがとう!」
「タス村の領主として、亡命を望む20名全員に、今この時点で死んでもらいます」
「やっぱり…せめて私の首一つで!なにとぞ!」
(もののけと一緒に居ると、意地悪な性格になっちゃうのかな…前も同じ展開が有った気がする…)
「ダメです。20名全員死んでもらうのが亡命の条件です」
「えっ?死んで…亡命?」
「はい!バジ王国の国民として死んでもらいました。そして、この瞬間からタス村の村民として生きてもらいます」
『おおぉ!』
今まで絶望に覆われていた亡命者達の表情が変わった。
「それでは、私の首で…」
自害しようとしたデリエさんを、エスターさんが瞬時に止める。
(さすがエスターさんだ)
「さっきいいましたよね、もうデリエさんは、タス村の住人ですよ?勝手に自害などしないでください!」
「さくら領主様、ありがとうございます」
「ただ、表立って亡命を受け入れた事に出来ないから、しばらくは、獣人達のエリアで過ごしてもらうけどいいかな?」
「どこでもいいです」
「タス村の住民の条件としてさくら神社という宗教の氏子(信者)になってもらうのと、人間を殺さないという事を守ってもらうんだけど、大丈夫?」
「それくらい、大丈夫です」
「それじゃ…ようこそタス村!さくら神社へ!これから皆様よろしくね!」
『よろしくお願いします』
タイミング良く、
「お待たせしたぞえ!」とタマさんを先頭にお料理教室の生徒が料理を持って入ってきた。
初めての作品「さくら神社の防衛戦争」を読んでいただき、ありがとうございます。
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次話は、ジョザ村の村民歓迎会のお話です。