巫女のタマさん
週に一回届けてくれるシゲさんの生活品や食料品の中には毎回欠かせないものが入っている。
毎日おそなえする油揚げである。翌日お供えする油揚げは冷蔵庫、それ以外は冷凍室にいれておく。朝、油揚げをお供えにもっていくとき、翌日分の油揚げを冷凍室から冷蔵庫に移動して解凍させるのである。
さくらは、どの油揚げでも一緒だとおもっているのだが、巫女のタマさんにはこだわりがある。
【匠こだわりの特選油揚げ】という普通の油揚げより0が一つ多い高級食材を指定する。
タマさんが言うには……「この油揚げは昔ながらの油揚げぞえ! 添加物なぞ入っていない、ほんまもんのあぶらあげぞえ!」らしい。
さくらのお母さん代わりでもあるタマさんは、料理や洗濯などの家事全般を担当してくれている。
油揚げが大好物なタマさんは、おさがりの油揚げを使って毎日おいなりさんを作り飽きずに美味しそうに毎回食べている。
一度冗談で、さくらがタマさんに「油揚げの無い世界に行くことになったらどうするの?」と聞いたら
「油揚げの無い世界なぞ、わらわが終わらせてやるぞえ」と怖いことを言っていた。
私とおばあちゃんは、時々おいなりさんのおすそ分けをもらうくらいで、朝はトーストだったり和食だったり、お昼はお蕎麦だったり、パスタだったり、夜はカレーだったり鍋だったり……某動画サイトでレシピを見ながらタマさんが油揚げ縛り無くおいしくつくってくれる。タマさんの料理はとても上手なのだ。
独特な古風の話し方をする巫女のタマさんにも、さくらがちょっと困っていることがある。例えば、リモート授業の間にうたた寝いるさくらの顔にいたずら書きをし、その顔のままリモート授業に出てしまいクラスメイトから笑われることもあった。
タマさんは、いたずらが好きなのである。
そんな神社の軒下では、白蛇の姿をした龍神様が今日も見守っていた。
時々姿をみせる白蛇を、さくらは、しろさんと呼んでおり、見かけた日はラッキーな日とげんをかついでいる。