オーサム大将の苦悩
今回の主要人物
【さくら神社】
さくら(人間)異世界へ転生者した女の子。タス村の領主兼さくら神社神主。もふもふ同盟。主人公。
タマ(九尾の狐)武術に長け、料理上手。
シゲ(ぬらりひょん)さくら神社の参謀。
くー(コロボックル)コロボックル兄妹の兄。
ちー(マインドラゴン)元ピーナッツ火山の主。さくらの眷属。普段は人代、犬化をしている。
【ゼフ王国】
オーサム大将(人間)ノストラのボスとしての裏の顔を持つ。【軍師のネックレス】持ち。
【ノストラ】
オスロ(人間)商人。初登場。
視察団の報告を受けたオーサム大将は予想外の内容に頭を悩ませていた。
壊滅状態にしたタス村に、異世界からの転生者とエスターを赴任させ、異世界からの転生者でも死んでいたら、さらにエスターを追い詰めることが出来ると思っていたのだ。
実際のところは、両者とも生存しており、歩けない状態にしておいたはずのタス村の女性達は普通に歩いていた。食糧難で苦しんでいる気配もなく健康的である。さらに生活基盤が出来ており、大戦に向けての準備を始めると言っているという。産業もない為、納税免除の約束もしてきた。
(どうしたら、そんな状況まで短期間で戻せるのだ…異世界からの転生者は使えないスキルだけだったんじゃないのか…)
他にも、オーサム大将を悩ませているものがあった。
ピーナッツ火山の変化である。常に噴火し濃い噴煙がバジ王国に流れていたのだが、最近は火山が大人しくなり、噴煙もほとんど出ていなかった。
定期的に生贄として獣人を安定供給していたが、その村もワイバーンによって荒らされていた。ほとんど戦闘能力の無い獣人だったので、ワイバーンに全てやられてしまったのだろう。
獣人の買い手が繁殖させないように、避妊手術してから販売していたのも痛かった。すでに獣人のストックも無いので、これからは流通させることが出来ない。
さらに、ワイバーンやサラマンダーなどのモンスターが防衛都市カサス近郊まで出没するようになっている。今は冒険者ギルドに討伐クエストを出しているが、その出費も響く。【軍師のネックレス】の効果が有っても、奇策が浮かばない。
せめてバジ王国の食糧難が改善する前に、食料供給という手柄を立てさせて、ノストラの幹部をバジ王国上部に潜り込ませたかった。
オーサムと同じく武力は低いが、頭の切れるノストラのオスロを呼び出した。表向きには商人である。
「バジ王国が、もっと食糧難になってから、お前を送り込む予定だったが、ピーナッツ火山が急に大人しくなった。急いで食料を手配して、バジ王国に取り入るのだ。」
「カーク様、お任せください」
「ここでは、カークではなく、オーサム大将だ!」
イラつくオーサム大将は、少しのことでも気に障っていた。
ピーナッツ火山でしか採掘出来ないオリハルコンを安定して入手するルートだけは、何がなんでも維持しなければいけなかった。ノストラとして。
しかし、オーサム大将は知らない。
ピーナッツ火山から主だったマインドラゴンが去った事を…
マインドラゴンの恩恵で、バジ王国はピーナッツ火山からオリハルコンを採掘出来ていた事を…
ピーナッツ火山でマインドラゴンが間引きしていたモンスターが増えてきている事を…
平和なタス村で、さくらは縁側に座って、くーちゃんを膝に乗せて、夜空に輝く星を見ていた。
そこにタマさんが日本酒を持って隣に座った。
「月の上がらない夜空は、つまみにならないぞえ」
「でもお星様は綺麗だよ!」
「さくらは、この世界で、体が軽くなったとか変化を感じてるのかえ?」
「病気はなくなった分楽になったけど、体の軽さは変わりないかな」
「星が空に煌めき、重力も変わりない世界ぞえ」
そう言って、タマさんは居間に戻った。
(ここは地球と同じサイズの星なんだ…)
それからさらに数日経過すると、夜中に食料を積んだ馬車がこっそりバジ王国に向かう。
神社Lv19まで上げたさくら神社は、タス村からヒク村までの街道をさくら神社の敷地にしている。
最初は気分が悪いほどしか感じていないノストラの商人も、タス村からヒク村の中間地点ごろには、具合が著しく悪くなり、回復ポーションを飲んでも改善しないため、馬車から馬を外し、荷物をそのままに王都に馬で駆けて戻って行った。
残された食料は少量を残して、さくら神社が回収し、馬車は犬化したちーちゃんに破壊させ、モンスターに荒らされたように偽装した。
回収した食料は、シゲさんに頼み、出元がわからないようバジ王国に流した。
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次話は、さくら神社のお祭りのお話です。