シゲ、ワシ、それぞれの策略
【さくら神社】
シゲ(ぬらりひょん)
エスター(人間)孤児院出身の元ゼフ王国大将。
ワシ(座敷童)おばあちゃん。
くー(コロボックル)兄妹の妹。
ケルン(人間)孤児出身の男の子。
フィル(人間)孤児出身の女の子。
ちー(マインドラゴン)さくらの眷属。
新しい住人の歓迎会準備をしている間、二つの動きがあった。
台所にはタマさん、さくら、メルツが調理に行ったようだ。
先ず一つ目はシゲ。
シゲとエスターが話をしている。
「救出した孤児達、あの状態で王都を出てタス村まで辿り着けたると思うか?」
「シゲさん殿、もしも協力者が居て馬車で移動したとしても今頃…防衛都市のカサスにたどり着く前に…息絶えていただろう…歩いてなら王都を抜け出せたかどうか…」
「だろうなぁ。もし王都を抜け出せてたら、亡骸はモンスターに襲われてるか?野生動物に食べられてるか?」
「街道が、深闇の森から離れているから、野生動物の方が可能性があると思われる。」
「なるほどなぁ…」
シゲは、タマと話している、ケルンとフィルに聞く。
「ケルン!フィル!今日来てた服、おじさんにもらえないか?できればメルツの服もだが。」
ケルンは、
「こんな綺麗な服をもらえたので、僕の服は自由にして下さい」と答えた。
フィルは台所に行って戻ってきて、
「シゲさん、私とメルツお姉ちゃんの服なんかで良ければ、あげてもいいです」
と答えた。
「そっかぁ、ありがとよ!」と言ってスマホをいじりながら住居玄関の方に行き、輸血用の血液パックを持って戻ってきた。
シゲは、救出した三人の衣服時に、血液をかけ、
「ちーさん、すまねぇが、犬の姿になって、赤く濡らした部分を爪で引っ掻いて破いてくれねぇだろうか」とお願いした。
「そんな簡単なこと、アタイに任せろ!」
と、ちーさんは手伝ってくれた。
血がついて破けた衣服を持ったシゲは、スマホのマップで場所を指示して
「くー、王都ゼフと防衛都市カサスの中間あたりに連れてってくれねぇか」
「シゲ!いいよ!」
と、くーは引き受けてくれた。
シゲは、孤児院の三人が、タス村移動中に野生動物に襲われたと見せかけるため、洗濯前の汚れたままの衣服に血を付け、獣に引き裂かれたようにして、街道とその周りに散乱させた。ゼフ王国からタス村を怪しませない為に。
(これで少しは時間稼ぎが、できるだろぉ)
二つ目は、ワシ。
「ちょっと、おばあちゃんにお話きかせておおくれ。」
と言って、ケルンとフィルを近くに呼んだ。
「お前達をいじめた、怖い大人は覚えているかい?」
おばあちゃんの質問に二人は、顔色を悪くさせたが、頷いた。
「怖いこと思い出させてごめんよ」
と言って、おばあちゃんは、ケルンとフィルを抱き寄せて、三人のおでこを合わせた。
(こやつらが、いじめおったのか…)
おばあちゃんは、髪の毛を一本抜いて息を吹きかけた。すると、瓜二つのおばあちゃんが現れて、スーッと消えた。
「びっくりしたかい?ケルンとフィルに、怖いことを思い出させてしまった…おばあちゃんからのお詫びの手品だよ」
と、おばあちゃんは誤魔化した。
「おばあちゃんの手品すごーい!」
とフィルは顔をびっくりさせ、ケルンは無言で頷いた。
その頃、とあるギルドハウスに、ワシの姿があった。
しかし、ギルドハウスのメンバーには見えない。
「俺たちも、いい依頼が冒険者ギルドから回してもらえるようになったのは、ラッキーだな」
「それを言うなら、俺のおかげだろ?状態異常の魔法を使えるパーティ限定だったんだからな!感謝しろよ」
「ちげえねぇ!お前のおかげだよ!」
メルツ達を襲ったギルドのギルドハウスである。
「軍からのシークレット依頼だからなぁ、報酬も良いからなぁ」
「孤児院の家財道具の取り立てと、住人に状態異常をかける、後は孤児院の入り口を見張り、表に出さない。それだけで、一ヶ月分以上の報酬だぜ?笑いが止まらねぇ、美味しい仕事だぜ!」
そこに別のギルドメンバーが入って来る。
「軍からの報酬、3倍にしてくれるってよ!追加のシークレット依頼が来たぞ!明日、孤児院の中に入って、全ての遺体確認するだけで、今回と同じ3倍の報酬だってよ!」
「それじゃ、この数日で半年分以上の稼ぎじゃねえか!俺達のギルドもツキが向いてきたなぁ!今晩は、見張りのメンバーには悪いが、パーっと前祝いしようぜ!」
『おー!』
座敷童の効果が直ぐに現れたようだ…しかし、髪の毛から出来たワシの分身は2時間ほどで消えてしまう。
明日、孤児院にあるべき遺体が3体なかった報告をしなければいけないことを、彼らは知らない…
裏口ドアに貼られた「当孤児院は、エスターを頼りタス村に移住します。」とタマが書いた半紙を冒険ギルドを通じて、任務失敗の報告をする事を…
座敷童の住む家は栄える、座敷童の去る家は廃れる。
このギルドハウスの未来は、もう決まっている。せめて、今を楽しむがいい。
初めての作品「さくら神社の防衛戦争」を読んでいただき、ありがとうございます。
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その応援がはげみになります。
今回は、ちょっと短い内容でした。
おばあちゃんは、優しいだけじゃなく、冷酷な一面もあるんです。
ネット小説大賞から感想が届きました。
凄いですね、こだわった展開について、評価してもらえたのが嬉しいです。
次話は、新しい住人の歓迎会のお話です。