龍とドラゴン
【さくら神社】
しろ(龍神)普段は白蛇姿。
くー(コロボックル)コロボックル兄妹の兄。草むらや森の中を瞬時に好きな場所に移動出来る。
【ピーナッツ火山の主】
ドラゴン
孤児院救出組のシゲが救出準備を始め、留守番組が台所に立った頃、しろはクーの体に巻き付き、頭をくーの右肩に乗せた。
「ワシ達が最初に出発するとしよう」とくーに言うと、
「はい!龍神様!」と返事をして、最敬礼をした。
今は、くーに巻きついているしろは、勢いよく地面に頭を叩き付けられそうになる。
子供のお辞儀はどうしてそこまで曲がるものやら…
しろにとっては、シゲどころか、タマやワシですら子供のような者だ。
くーは草むらに入るとすぐにピーナッツ火山の南に出た。
ピーナッツ火山は噴煙を大きく上げており、時折り地鳴りがする。
(ここの主は機嫌が悪そうじゃの…)
命令すれば、くーは噴火口まで連れて行ってくれるだろう。しかし戦闘能力がないくーでは、暴れたピーナッツ火山の主にひとたまりも無かろう。
「くー、少し時間がかかるやもしれん、草むらの安全なとこでゆっくり待っとれ。」
「はい!龍神様!」と返事をして、くーは最敬礼し、草むらに消えて行った。
(それじゃワシも行くかの…)
普通の蛇とは思えない速い速度で、しろはピーナッツ火山を登って行く。
しろの姿を見つけ、捕食しようと何度かワイバーンが近寄って来たが、その都度、雷で撃ち落としていた。
龍神のしろは、普段は省エネの姿をしている。本来の姿になれば、大空も飛べるが、自然と嵐が巻き起こり、暴風、落雷、豪雨が起きてしまい、人間に被害を与えてしまう可能性があるのだ。
しろは省エネの白蛇姿でも、雨を降らせたり、雷を操るのは容易いこと。
(雨を降らせるだけなら、タマでもきるがな…)
白蛇姿でも、自然と漏れ出るオーラから水が浄化され、癒される効果が付与されていた。さくら神社の境内の水は全てしろの加護付きだ。トイレを流す水でさえ、この世界のハイポーション以上の効果はある。
また、水さえあれば、どこにでも移動が出来る。
今回は、珍客を連れて帰るやもしれんので、くーを連れてきていた。
(ワシも、もうろくしたかの…)
しろはピーナッツ火山の主に会い、万が一、争いになった時を考えて、自分の能力を思い出しシュミレーションしていて思った。
目の前と火口付近に、通り雨を降らせ水溜りを作り、一瞬でピーナッツ火山の山頂にたどり着いた。
(最初からやっていれば、赤いコウモリもどき…ワイバーンのことらしい…を黒ごけにせんでもよかったわい)
火口付近を見ると、ここの主らしき赤いドラゴンが、尻尾で壁を叩き、割れた岩を尻尾で撃ち、噴火口に落としていた。噴火口に岩が落ちると、刺激でマグマが噴火し、ゼフ王国の方に流れ、吹き上がった火山灰は、東からの風に乗りバジ王国の方に流れて行く。岩が入らないと地団駄を踏んで地面が揺れる。
(これが、シゲが聞いてきた話の状況じゃろ。いつの世も世界が変われども、噂話はほとんどが的を得てるもんじゃ)
しろは火口におり、ドラゴンに話しかけた。
「お前がこの山の主か?」
「ここに客が来るのは、久しぶりだぞ!よく来た!…で、主ってなんじゃ?」
ドラゴンは喜んでいるようだが、質問にはピント来ていない。
「主とは、そうじゃのう…ピーナッツ火山で一番強い親分か?」
「親分?かは知らないが、アタイが一番強いぞ!」
「火口に岩を入れてるのは、なぜじゃ?」
「うーん…暇だからだ!一緒にやらないか?お前も尻尾があるのだ!やろう!やろう!」
「その暇潰しで人間が困っておる。お主は人間を困らせる気があるのか?」
「人間を困らせる気なんてないぞ!人間は、弱っちいから近くに居ると、ぶつかったり踏んじゃったりするだけで死んじゃうじゃないか!だからアタイは、人間が来ない所で遊んでるんだぞ!アタイは人間に優しいんぞ!」
ドラゴンは不本意な事を言われて、ジタバタと暴れる。
「そんなに暴れるではない」
「お前、アタイが下手に出ていると思って…ちっこい蛇のくせに生意気だぞ!」
と言って、口から豪華の炎をしろに向けて吹いた。
「おてんば娘には、少しお灸が必要じゃの」
と言って、しろは本来の姿に戻った。
ピーナッツ火山の噴火口には、ドラゴンの轟吠に刺激され噴火を増し、龍神の本来の姿に刺激された大気が雷雲を呼び、豪雨と暴風が吹き荒れる嵐が巻き起こった。
「土石流を起こすわけにはいかないから、短期決戦で行くから、許せよ」
「アタイは強いんだ!そう簡単には…」
長い髭を蓄え、空を舞うしろは、一気にドラゴンに飛びかかり、胴体で首に巻き付き締め上げる。
鱗に覆われて皮膚が厚いとはいえ、頸動脈を締め上げれば頭に血が通わず意識を失う。
力なくドラゴンが崩れるのを見て、しろは力を弱め、元の白蛇に戻らず、白髪の老人…人化してドラゴンに癒しの水を飲ませた。
すぐにドラゴンは意識を戻し、
「あれ?アタイは…意識がおちていたのか?」
「そうじゃ、短期決戦と言うただろ」
「お前も、アタイも死んでいないから引き分けだな!ワッハッハッ!」とドラゴンは豪快にわらった。
「おてんば娘は、簡単には変わらないものか」
「お前は色々変わる事ができるんだな!アタイは、羨ましいぞ!」
「お主もコツさえわかれば、直ぐにできるだろう!」
「アタイにも教えてくれ!」
「かまわん、それでは、まず初めははのう…」
しろは惜しむ事なく変化を教え、ドラゴンは直ぐにコツを掴んだ。
しろは、白髪の老人と白蛇だが、ドラゴンはさくらと同じくらいの女の子と茶色のもふもふした犬のようになった。背中にはドラゴン独特の翼が有るのだが、もふもふした毛に覆われていて目立たない。
「この姿なら、ピーナッツ火山も強いオーラに刺激されずに、少しおとなしくなるじゃろ」
「なんだ?アタイと一緒の遊んでくれるんじゃないのか?」
「ワシはこのピーナッツ火山を大人しくさせに来ただけじゃ」
「嫌じゃ!嫌じゃ!アタイは暇で暇で寂しいんだぞ!」
ドラゴンは、女の子の姿でジタバタしてる。
(やれやれ…一度さくら神社に連れて帰って、判断してもらうかのぉ)
「ワシは、タス村にあるさくら神社に住んどる。お主も来るか?」
「遊んでくれるなら、アタイ行く!」
「その代わり、いくつか守ってもの問題らう事があるのじゃが、出来るか?」
「アタイが出来ることか?」
「さくら神社に住んでいる者、人間を殺さないことじゃ」
「変化していれば、アタイも、あまり力でないから問題ないぞ!村って言うなら、人間もいるのか?」
「あぁ、数人しかおらんがな」
「アタイ、タス村に行く!」
(やっぱりこうなったか…)
「ではいくかのう。ワシはしろじゃが、それでお主の名前は何というのじゃ?」
「うーん…正しい名前を最初に言われると眷属になる種族なのだ。アタイの名前は教えられないから、ドラゴンでも犬っころでも、メスでも好きに呼んでいいぞ!」
(神社に戻ったら、さくらに任せるとしようかの)
もふもふした犬っころになったドラゴンにしろは巻き付き、くーを待たせている草むらにまで戻ってきた。
「くー!おるか?」
すぐに草むらから「龍神様、お帰りなさい!」と出てきた。
そして、「龍神様が乗ってるのは…何ですか?」
「このピーナッツ火山の主のドラゴンじゃ。変化を教えて犬っころになっとる」
「くーだよ!ドラゴンさんよろしくね」
「くー!お前もちみっこだぞ!お前もアタイの背中に乗っていいぞ」
「ドラゴンさんありがとう!」と言って、犬っころの背中にまたがり、くーは、草むらに進むように依頼した。
初めての作品「さくら神社の防衛戦争」を読んでいただき、ありがとうございます。
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次話は、孤児院救出作戦 後編の前に、お留守番組の台所のお話です。