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フィルが見た、孤児の悲劇と異世界文化

【お詫び】

この話の中心人物のフィルが、タイトルと文中含めてフィンとなっていました。

ご指摘ありがとうございます。4/16 16:10に修正させて頂きました。


【さくら神社】

さくら(人間)異世界へ転生者した女の子。タス村の領主兼さくら神社神主。主人公。

エスター(人間)孤児院出身の元ゼフ王国大将。

おばあちゃん(座敷童)ドラマ好き。

タマさん(九尾の狐)武術に長け、料理上手。

メルツ(人間)孤児院の生き残り。エスターの親友。

ケルン(人間)孤児院の生き残り。男の子。

フィル(人間)孤児院の生き残り。女の子。

 私は、フィル12歳。孤児院で生活してるの。

母親代わりのメルツお姉ちゃんが居て、同じ歳のちょっと内気な男の子ケルン、他は来たばかりの小さな子達。

両親に捨てられたりして、身寄りが無かったり、戦争で親を亡くしたりした子供たちが生活してるんだ。


 お昼前に馬車に乗ったエスターお姉ちゃんが来て、メルツお姉ちゃんと話をして抱き合って泣いていた。

エスターお姉ちゃん、冒険者ギルドってところにお仕事変わったって言ってたけど、何処か遠い街に行くことになったのかな?でも、孤児院のみんなの前で言わないっていうのは、きっと訳ありなんだよ。


 ケルンが、抱き合って泣いているエスターお姉ちゃんとメルツお姉ちゃんのところに行こうとしたけど、手を引っ張って止めたの。


「なんで止めるんだよ!ボクはお姉ちゃん達が泣いている理由聞きたいんだよぉ」

まったく…男の子は気が回らないんだから…

「聞かれたく無い理由があるから、玄関でこっそり二人で泣いてるの。少しは空気読んで、二人っきりにしてあげるの。わかった?」とフィルは、ケルンを引き止めた。


 馬車の荷台には白い布を被った女の人が、街を珍しそうにキョロキョロ見ている。

(あの女の人を極秘にどこぞに連れて行く護衛任務のようね。遠い所までだと、バジ王国まで届けるのかな…それだと命の危険あるから、泣いているんだわ!)


 フィルは、遠からず、近からずの予想をしていた。


 エスターお姉ちゃんが行った後、少ししたら、「冒険者ギルドの者です」ってお客さんが来たの。

孤児院にお客さんが来るのは珍しいことだけど、エスターお姉ちゃんのお仕事している所だから、警戒せず玄関を開けたら、怖い大人の人が数人入ってきて…お家の中の物、全部持ってっちゃった。


メルツお姉ちゃんとケルンがやめさせようとしたけど、振り解かれてダメだったの。

私は部屋の隅で小さい子を抱いて固まってた。


 最後に、「怨むんならエスターを恨むんだな」と訳がわからないことを言って、私達に向かって手のひらを向けたの。そうしたら、みんな体に力が入らなくなって、体が熱っぽくなって、動けなくなっちゃった。


 お腹が空いたので、はいつくばって台所に行ってみたけど、食料どころか、お料理する道具や椅子もテーブルも無くなっての。井戸にお水だけでも汲みに行こうとしたけど、家の外に怖い大人が居て、「家から出てくるんじゃねえ!」って怒鳴られちゃった。


 それからは、メルツお姉ちゃんを真ん中にして左右に私とケルン。小さい子は私達三人が抱っこして、じっとしてた。昼間はあったかいけど、夜は寒くて、よりくっついてじっとしてたの。


 小さい子が冷たくなっちゃったら、メルツお姉ちゃんが部屋の隅に寝かせていったんだ。きっと天国に行っちゃったんだね。気がついた時には、メルツお姉ちゃんとケルンと私達だけになっちゃってた。もう、何日食べてないんだろう…唇も乾いて引っ付いちゃってるもの。


 そんな時、真っ黒な服装に身をまとった女の人が来たんだよ。

私は、もう動けなくて、目で見るのが精一杯。この人は誰なんだろう…天国に連れて行ってくれる人?


 その黒い女の人が、メルツお姉ちゃんの頬叩いてる…いじめちゃダメなんだよ…

そして、「メルツ!しっかりしろ!ほら!メルツ!」って言ってる。

あれ?この声聞いたことあった気がするけど…もう考えるのも面倒になっちゃった…

メルツお姉ちゃんも、「あなたは、だあれぇ?」って言ってる。


 ごめんね、私…目も開けているのが辛くなっちゃった…


「エスターおねぇちゃん、天国に連れてってくれるの?」ってケルンが言ってる。

頑張って目を開けたら、黒い人がマスク外してエスターお姉ちゃんになってた。さっきはエスターお姉ちゃんと違う髪してた気がする…そんなのどうでもいいや…

エスターお姉ちゃん、私達より先に死んじゃってたんだ…私も天国に連れてって欲しいな…

「エスターおねぇちゃん、私も一緒に天国に連れてって…」って頑張ってお願いしたの。


 これが最後の力だったのか、覚えてないの。

甘いお水と、すっごく甘いムニムニしたのを口に入れてもらった気がする。

そして、大人の人に担がれて、気がついたら…知らないお家に木の床に立たされてたんだよ。

その先は緑色の床だ…天国のお家って不思議な建物なんだね。


 あっ!低いテーブルの上にいい匂いのするご馳走が並んでいるよ。

ご馳走に見とれていたら、私より背の低いおばあちゃんが手と顔をあったかい柔らかな布で拭いてくれたの。

思わず「あったかくて、気持ちいい…」って言葉が出ちゃった。

あれ?苦しくない?熱っぽく無い?死んじゃったから?でも拭いてもらったお礼は言わないとね。


 状況がわからず、ぼーっとしていると、

「私はさくら!この神社の神主で、タス村の領主だよ!よろしくね!」って女の人が言ったの。

この人、私知ってるよ!エスターお姉ちゃんの馬車の荷台でキョロキョロしていた人だ!

じんじゃってなんだろう?かんぬしってなんだろう。それより、ここは天国じゃなくタス村なの?

もう訳がわからないよ…


 そのあと、促されて食べたご馳走おいしかったの!

甘いとか、しょっぱいって味がするんだよ!

とんじるって言ってるスープだって、見た事の無い物ばっかり入ってるけど、程よくしょっぱくて、それでいて甘さもあって…お肉だって柔らかいんだよ!孤児院でご馳走だった干し肉のカケラ入りのスープなんて…なんだったの!黄色いふわふわした、だしまきたまごって食べ物も甘くて美味しくし、茶色い皮で覆われた、へそいなりずしって食べ物もあまくじょっぱくてお腹が膨れる感じがするし…身体中にあったかさと力が戻ってくる感じがする。


 お腹いっぱいになるまで一気に食べちゃったら、お腹がぽっこりしちゃった。こんなにお腹いっぱい食べたのって、生まれて初めてかも…


 メルツお姉ちゃんがタス村に移住をお願いした時、領主様から死んでって言われた時はびっくりしたけど、お腹いっぱいにしてもらえないゼフ王国より、ここの生活の方が絶対いい!もう王都なんか帰りたくなんかないもん!


 その後の、お風呂にもびっくり。

お風呂って貴族様とか国王様とか偉い人が入る物だよね。さっき手と顔を拭いてもらったように、体も拭くと思ってたら。本物に聞いたことのあるお風呂だったの。

エスターお姉ちゃんに使い方を聞きながら、白い泡で体を洗いっこしたんだけど、すぐに白い泡が茶色くなって、恥ずかしかった。髪の毛もいい匂いするものつけてもらっちゃったし、湯船に浸かるって、すっごく気持ちがいいんだね。やっぱり、ここは天国だよ!


 湯船に浸かってほっこりしていると、

「あぁー!プリン出すの忘れたぁ!」って領主様の声が聞こえた。

ぷりんってなんなんだろうね。


 お風呂を出ると、領主様が新しい下着と服を用意してくれたの。

服はすうぇっとっていうものらしいんだ。領主様ともエスターお姉ちゃんともおそろいなの!




 お風呂を出てポカポカした体で、ご馳走を食べたお部屋に行くと。

「お風呂上がりにはこれぞえ」と言って、もふもふした尻尾をいっぱい付けてるお姉さんが、私とケルンに冷たい白い棒状のものをくれた。

「これはなんですか?」ってケルンが質問しした。

(ケルン、頬赤くない?ポカポカした体のせい?)

 「ミルクキャンディぞえ。優しい甘さで、冷たくて美味しいぞえ。」と言って食べさせてくれた。

(本当に優しい甘さで…冷たくて、美味しい)


 さくらは、おばあちゃんと一緒にお茶を飲みながら、ミルクキャンディを頬張らせ、ケルン君とフィルちゃんを左右に座らせ肩を抱き寄せる縁側に座るタマさんを見ていた。


「孤児院で亡くなった小さい子供がいただえ?」

「うん…」ケルンが力なく頷いた。


 肩をだくだけじゃなく、もふもふの尻尾でケルン君とフィルちゃんの腰に巻き付かせて、

「この世は全員が、宿題を持って産まれてくる場所ぞえ。その宿題が終わると、天に帰って宿題を提出するのだえ。」

(ちょっと!私もまだタマさんの尻尾もふもふさせてもらっていないのに!ケルン君とフィルちゃんずるい)


 さくらは、残りの7本の尻尾をロックオンしてタマさんにそーっと近寄る。

おばあちゃんからあずきキャンディをもらい、口に頬張ったままのエスターさんとメルツさんも同じく近寄る。もふりたい三人が目で合図しながらタマさんのもふもふ尻尾にゆっくり近づいていく。

さくらだけでは無く、同士が居た。


 己の欲望に溺れた三人とは違い、

「それじゃ今回苦しんで亡くなった小さい子もなの?」思い出して涙を流しながらフィルちゃんが質問した。

「そうだぇ。きっと簡単な宿題だったぞえ。でも自害は宿題放棄になるから、してはいけんぞえ。亡くなった子供の分まで頑張ろうなど考えなくていいぞえ。亡くなった子供に悪いからって楽しいことを我慢しなくていいぞえ。ケルンはケルンの宿題、フィルはフィルの宿題が終わるまで楽しく生きるんだえ」

と言って二人をより抱きしめた。二人とも、タマさんの大きなおっぱいのに片方の頬を埋めるようになってしまった。


(今朝までは、タマお姉さんの場所にメルツお姉ちゃんがいて、あんなに苦しかったのに…今はこんなに幸せな気持ちに慣れてるの。不思議だなぁ。こっそり今朝の私にだけ教えてあげたいな。もうちょっと頑張ったら、この世の天国が待ってるよって…)


 子供たちがタマさんに抱かれて心を癒やしてもらっている時、

「タマさん、私だって尻尾もふもふしたかったのぉ!」

「タマさん殿、私ももふもふが、我慢出来ない。許して欲しい」

「タマさん、私も今日までの心の傷を埋めるためにもふもふさせて下さい」

と言って、もふり欲にまみれた三人は、タマさんの尻尾に顔を埋めたり、撫でたり、もふもふに溺れた。


「こそばゆいぞえ。今日だけ特別ぞえ」

今日のタマさんは優しかった。


そのタマさんの視線の先の草むらが、ガサゴソと動いた…

初めての作品「さくら神社の防衛戦争」を読んでいただき、ありがとうございます。

タイムリミットある中、異世界でのさくらの活躍を応援してください!


さくらの活躍を応援していただける方は、ぜひ評価(下部の☆☆☆☆☆)にて後押しお願いします。

その応援がはげみになります。


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評価ポイントが36→46

になりました。本当に嬉しいです!ありがとうございます!


次話は、ピーナッツ火山組のお話です。

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