第一回 さくら神社会議 後編
「短時間でここまで調べてくれて、シゲさんありがとう。ぬらりひょんって凄い能力あるんだね。先ず地図を見て思ったのが、タス村って、この世界?この島?のほぼ中心なんだよね。さくら神社の名物は、へそ饅頭とかへそ団子とかがいいと思う!」
さくらは、暗くなっている空気を壊すために、少しボケてみた。
(エスターさんは、怒っちゃうかもね…)
「それなら、へそ稲荷寿司がいいぞえ。開いてご飯が見える方を上にして、真ん中に砂糖蜜を絡めたクルミを乗せて、おへそに見立てるぞえ。さくら神社のへそ稲荷寿司は、でべそぞえ♪」
タマさんが合いの手でボケてきてくれた。
バン!と音を立てて、座卓を叩き、
「今にも孤児院に残された…私には家族のような大切な人達が、飢え死にしかけてると言うのに…そんな話は、今するべきものでは無いだろう!」とエスターさんは涙を流しながら訴えた。」
腕を組んで難しそうな表情をしたシゲさんが、
「エスターの気持ちもわからねぇでも無いが、お前さんが直接孤児院に毎月援助金を渡していれば、今の惨状はなかったんじゃねぇのか?それに餓死を心配するなら、孤児院の3人もバジ王国の国民も、命の重さは一緒だろ。飢え死にしかけてる人を助けてぇなら、多くを救えるバジ王国のことを考えるんじゃねぇのか?まぁ、感情に流されると、大切なものを見逃しちまう」と言った。
「わらわ達は、さくらが楽しく安全に暮らせるのが一番の願いぞえ。さくら神社が安泰なら、ゼフ王国もバジ王国も、どうなっても気にならないぞえ」
とエスターに追い討ちをかけた。
「さくら殿、馬を一頭借りる。私一人で王都に戻って、生き残っている孤児院のみんなの元に行かせてくれ!」
と訴えてきた。エスターさんの膝の上に座ってるさーちゃんは、どうしたらいいか分からず不安そうな表情でエスターさんの服を握ってる。
(さーちゃん、びっくりしちゃったね。それにエスターさんごめんね)
「エスターさん、もう感情が先走って、冷静な判断が出来無くなっちゃってるよ…私達二人は、タス村で大戦の準備しなさいって、ゼフ国王から命令されてるんだよ?それなのに堂々と命令を破って、孤児院にエスターさんが居るのがバレたら、反逆で捕まっちゃうよ。孤児院の人たちも、エスターさんをかくまった罪で捕まっちゃうかもしれないんだよ?さらに、ノストラのボスに利用されて、食料とバジ王国民からゼフ王国の恨む象徴に刷り込まれたエスターさんをバジ王国に引き渡すかもしれないんだよ?オーサム大将に都合よく使われたくなんか無いよね?馬を飛ばしている間に孤児院の人が餓死しちゃうかもしれないんだよ?」
混乱しているエスターさんにさくらは追い討ちをかけるように言う。
「それでは、さくら殿は…私にどうしろと言うのだ!」
「エスターさんや、最後までさくらの話を聞いてやってくれんかの?」
とおばあちゃんが、優しくエスターさんを諭すような口調で嗜めた。
「先ずは、このさくら神社の氏子は、人間を殺すようなことは禁止します!もちろん、一年後の大戦も!怪我はさせちゃうかもしれないし、悪いことをした罪で裁かれたり自害しちゃうのは仕方ないけどね。」
さくらの優しさが出ている大方針である。
「エスターさん、孤児院の人は、さくら神社に敵対する可能性ってあるのかな?敵対する可能性があると、さくら神社の境内に入れても、何らかのバチがあたっちゃうかもしれないんだけど…」
「さくら殿、それは大丈夫だ。恨み、妬みなど無い純粋な人間ばかりだ」
タマさんが茶箪笥から硯と筆を出し、半紙にすらすらと描き始めた。
「当孤児院は、エスターを頼りタス村に移住します。」と書いた。
「よかったぁ!それじゃ、エスターさんはその半紙を持って、さーちゃんと一緒に、孤児院へ行って氏子勧誘ね!」
(これで、さくら神社のレベルが上がる♪)
「エスターだけで三人は抱えられねぇだろう、俺も一緒に行ってやらぁ」
とシゲさんが手伝いを買って出た。エスターさんにきつい事を言っていたシゲさんだが、さくら神社を一番に思ってくれていただけで、本当は心が優しいもののけなのである。
「シゲさん殿、ありがたい。なんて礼を言えばいいか…」
「礼は、救出する三人が元気になってからにしてくれなぁ。俺の判断で、さっきは条件確認しただけで、見捨てて来たんだからなぁ」
この憎まれ口も、シゲさんの照れである。
「孤児院問題の次は、お隣のヒク村。ナビさん教えて!今は神社レベルが低くてタス村の一部しかさくら神社の結界内に出来ないけど、もっと神社レベルあげたら、タス村とヒク村を結ぶ街道とヒク村全域までさくら神社の結界内に入れることできるのかな?」
「可能です。神社レベルを上げて行けば、この島全部も可能性です」
(島全部は管理出来ないよぉ)
「大戦前にヒク村までさくら神社の結界内にできるように神社レベルを上げる事を一番の目標にします!それまでは、管理出来ないのでヒク村は放置しておきます!」
大戦前にさくら神社の防衛強化の方針である。
「さくら神社に敵対していない人であれば、炊き出しなどの援助をします。希望が有れば、氏子としてさくら神社に住んでもらいます!さくら神社に害の無い人であれば、来るものは拒まず、去るものは追わずです!」
(うんうん、さくらは優しい子だね。おばあちゃんも応援しているよ)
「ゼフ王国の視察は、さくら神社の存在は結界で隠し、エスターさんと私の服を【神社ディフェンス】の時にゴブリンに破かれるようにして、タス村にその服を放置してゴブリンに襲われて連れ去られたと誤解させましょう!あざむいている間に神社レベル上げて、準備が出来たら、さくら神社はゼフ王国から独立して中立の立場をとります!」
さくらも、この世界の中心になるかもしれない事を覚悟していた。
「さくらも強い心を持った子に育って、嬉しいぞえ」
タマさんが、我が子の成長を喜ぶように褒めてくれた。
「さくらちゃん、ノストラはどうするんだい?」
腕組みをしたままのシゲさんが聞いてきた。
「大戦を陰で操っていたりしている本当の敵でしょ…きっと次の狙いはバジ王国に深く入り込むために、食料難を解決させる救世主でも祭り上げるつもりだよね。思い通りにはさせないよ!今はアイデア浮かばないけど、ノストラが動き出す前に、さくら神社を独立させて妨害しないとだよね。その時は、バジ王国民から恨みの象徴にされてる「ゼフ王国のエスター大将」さんには、「さくら神社のエスター大将」さんとして崇められる存在にして名誉挽回させないとだよ!」
「さくら殿、もう私は大将などではないのだ。」
「ノストラにいいように使われてるなんて面白く無いもん。さくら神社の神主として、その時は任命しちゃうもんね!」
(さくらちゃんも、良い策士の素質あるんじゃねぇのかぁ…)
ノストラ対策を考えている時、珍しくしろさんが居間に入って来た。もののけ達は、一斉に背筋を伸ばして、しろさんに向く。初めて見る光景に、さくらもエスターもあっけに取られて動けなかった。
浦島太郎の玉手箱を開けたように、突然しろさんを白い煙が覆い、煙が引くと仙人のような白髪の老人が立っていた。
「龍神様、その姿をお見せいただけるのは、お久しゅうでございますぞえ」
(しろさんは、龍神様だったんだ…タマさんでも緊張する存在なんだね。)
「さくらは、この姿を見るのは初めてじゃな」
「うん!…じゃなくって、はい、龍神様!」
「そうかしこまるでない、いつも通りしろさんと呼んで普段のように話してくれればいい」
「う、うん…わかりました、しろさん。それで姿を見せて頂いたのは、何か理由がおありでしょうか?」
さくらも、普段使いっぽくしてみようとしたが、変な敬語になる。
「ピーナッツ火山という所でドラゴンが悪さをしてるって聞こえたから、ちょっとお灸据えてくる。そうすれば助かる人間も増えるんじゃろ。後で、くー近くまで連れて言ってくれ」
「はい!龍神様!」
くーちゃんは、最敬礼をして任務を引き受けた。
(くーちゃん、可愛いい!)
「お留守番組は、粥や休める場所を準備するぞえ」
タマさんの指示で、おばあちゃんが頷く。もちろん私も。
プロジェクターに映るナビさんを見ると、ホワイトボードには、新しくこれからのことが書いてあった。
【さくら神社基本方針】
・人間を殺める事禁止。怪我までは可。
結果として裁かれたり、自害は含まれない。
・敵意が無い人間は、来る者拒まず、去る者追わず。
・さくら神社の名物は「へそ稲荷寿司」
・将来的に独立して中立領地へ。それまでに神社レベルアップし防衛強化。
【視察対策】
・さくらとエスターは死んだと思わせて、独立準備の時間稼ぎ。
【ノストラ対策】
・妨害したいがアイデア無し。
・実行する際は「さくら神社のエスター大将」が活躍する予定。
※今日これからの作戦
【エスターの孤児院救出作戦】
・担当、エスター、さー
【ピーナッツ火山のドラゴン対策】
・担当、龍神様、くー
【お留守番】
・担当、さくら、タマ、ワシ、ナビ
「それじゃぁ、みんな始めるよぉ」
『おー!』ぞえ」
さくら神社が動き出した。
初めての作品「さくら神社の防衛戦争」を読んでいただき、ありがとうございます。
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次話は、孤児院救出作戦です。