第一回 さくら神社会議 中編
シゲさんがさくら神社に戻り、居間に氏子が全員そろった。
シゲさんが情報収集をしている間、さくらはプロジェクターと100インチの自立スクリーンを【スグクル】で購入していた。雨戸を閉め、真っ暗になった居間に、スマホと接続したプロジェクターが映し出される。今回も伊達メガネにスーツ姿のナビさんが、前回は出番が無かったホワイトボードの前に立っている。
シゲさんは自分のスマホを取り出し、
「まずは、これがこの世界の地図だ」
そう言ってプロジェクターに、今居る世界を映す。
(スマホの【マップ】はあるけど、こっちの方がわかりやすい!)
「続いて、これを聞いてくれ。エスターのプライバシーも含まれるが許してくれ」
エスターさんは、うなずいて了承した。
シゲさんとゼフ王との会話だった。ナビさんが会話の内容を随時をホワイトボードにまとめていく。
(プロジェクターの大きい画面だと見やすくてよかったぁ)
・エスターさんは、さくらちゃんの監視役ではない。
・さくらちゃんとエスターさんは、大戦時の時間稼ぎとして赴任。(おこ!)
・エスターさんは孤児院出身。大将の役職まで出世。任務の失敗のため、一般人に階級が落とされた。
・エスターさんが陰から出身の孤児院に援助していたが、さくらちゃんの召還費用の補てんとして没収。その後。孤児院への援助は打ち切り。
・前の転生者は勇者タケル。アーティファクトは【軍師のネックレス】。今はオーサム大将所有。
・勇者タケルの死後、奥さんと娘さんは自害。
・後日、タス村に視察が来る。
脇に座っているエスターさんの顔が青ざめていた。
(私やエスターさんをディスるくらいは、まだ我慢できるけど、孤児院は心配だよね…)
「次はこれをみてくれ。オーサム大将の机の隠し引き出しに入っていた物だ」
プロジェクターに、ゼフ王国とノストラの取引帳簿、バジ王国とノストラの取引帳簿。ゼフ王国のオーサム大将としての指輪印章とノストラのボスであるカークとしての指輪印章。が映し出された。オーサム大将はノストラのボスでもあることが暴かれた。
最後に映し出されたメモが、一番衝撃的だった。
全ての□にチェックが入っているメモ…
□勇者タケルの妻と娘を拉致
□勇者タケルに、ヒク村への急襲と護衛にエスター大将をつけるように提案させる
□ノストラの傭兵でヒク村の村民を排除し、村民になりすます
□命乞いをする村民を装い、勇者タケルを殺害、【軍師のペンダント】回収
□エスター大将のビラをヒク村にまく
□タス村の村民排除
オーサム大将がエスターを陥れ、勇者タケルを殺害して【軍師のペンダント】を自分のものにする計画だった。
隣に座っているエスターさんは、顔を真っ赤にして震え、目を見開いてまばたきをせず涙をながしている。顔は般若のようだ。
(同僚が武器商人組織のボスで、エスターさんを失脚させるだけでなく、結果的に勇者タケル一家を殺したんだ…それで私を召喚して、期待外れだったみたいだけどね…)
ナビさんは、ホワイトボードに
・ゼフ王国、バジ王国共に、武器商人組織のノストラと取引。
・オーサム大将=ノストラのボスのカーク。
・勇者タケルの死、エスターさんの失脚はノストラの策略
「そのあと、ゼフ王都で聞いた話がこの会話だ」
とシゲさんが言うと、町のおばちゃん達の会話が始まった。
ホワイトボードにナビさんは、追記していく。
・ピーナッツ火山にドラゴンが生息。
・噴火の原因はドラゴンの噂。
・バジ王国の食料難は、ビーナッツ火山の火山灰が原因。
「ここで一度、さくら神社に戻ったんだが、ゼフ王国も気になって、ゼフ王都にも行ってきた。次はこれを聞いてくれ」
今度は、シゲさんとバジ王との会話だった。
・ゼフ王から、一方的に、「不利なレートでの貿易要求」、「娘の側室要求」をバジ王が断り、国交断裂、一年後の開戦が決まる。
・食糧難だが、当てにしていたノストラから食料が供給されない。
・バジ王国には、異世界からの転生者は居ない。
「バジ王はやつれていて、死相がでてやがった。おまけに部屋の隅に死神まで待機してやがった」
(死神って実在するんだ…)
「次は、バジ王都はほとんど人が出歩いていなかったから、そのへんの家に入って聞いた内容だ」
ナビさんは、ホワイトボードに追記していく。
・食事は毎朝一回の配給のみ
・タス村にはエスター大将が非情な行動をとり亡命希望の難民を虐殺している噂有り。
「タス村の反対に位置するヒク村にも寄ったんだが、タス村同様に廃村になって人なんて住んでいいなかった。そのかわりこんな張り紙がいたるところに貼ってあった」
プロジェクターに映し出された写真には、「亡命者もこの村人同様に切り捨てる。ゼフ王国 タス村領主兼大将 エスター」の張り紙だった。
(この噂がバジ王都に広まってるんだね…)
「バジ王国は魔族の国って聞いていたから、バジ国王は魔王で、魔王城にでも潜入するのかと思ったが、普通の人間だったな。背中に翼が付いていたり、頭に角がついている者は一人もみかけなかった。ただ、肌が黒いだけで…発展途上国の栄養失調な黒人って感じだったな。白人が肌の色だけで、魔族って言って人種差別しているだけだろう」
「最後の報告だが…ゼフ王都を調べる最後に、エスターの出身の孤児院も見てきた。食料が無く、小さな子供はみんな餓死していた。生きていたのは、エスターと同じくらいの女性が一人と、男の子と女の子が一人づつの三人だけ。エスターと同じくらいの女性は、もう危ないかもしれねぇな」
書くか迷っていたが、ナビさんは最後の一行を書いた。
・孤児院の現在生存している者は3名。食料なし。
「以上が見てきた内容だ」
ナビさんがホワイトボードを整理した。
【大戦の理由】
・ゼフ王の理不尽な要求をバジ王が断ったことにより国交断絶、一年後の大戦へ。
【ゼフ王国】
・国民は平和ボケ。大戦は他人事。
・後日、ゼフ王国の視察がタス村に来る。(対策必要?)
・エスター出身の孤児院、現在生存している者は3名。食料なし。
【ノストラ】
・オーサム大将=ノストラのボスのカーク。
・策略が成功し、前の転生者である勇者タケル一家は死亡。エスターさんは失脚。【軍師のネックレス】はオーサム大将所有。
・ゼフ王国、バジ王国に深く入り込んでいる。
【バジ王国】
・食料難、国王には死相あり。異世界からの転生者なし。
・魔族ではなく人間。肌の色の違いだけ。
・食事は毎朝一回の配給のみ
・タス村にはエスター大将が非情な行動をとり亡命希望の難民を虐殺している噂有り。
・ヒク村は無人で廃村状態。
【ピーナッツ火山】(噂話)
・ピーナッツ火山に噴火の原因になるドラゴンが生息。
・バジ王国の食料難は、ビーナッツ火山の火山灰が原因。
「ナビありがとうな!今回調べた内容はこんなところだ。それで…さくら神社としてこれからどうするかきめねぇとな?さくらちゃんどうする?」
と言って、シゲさんはさくらを見た。
初めての作品「さくら神社の防衛戦争」を読んでいただき、ありがとうございます。
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次話は、さくら神社会議の続きです。