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シゲさんの諜報活動 バジ王国

 くーに手を引かれてさくら神社の草むらに戻って来たシゲは、考えを変え…

「くー、もうちょっと調べてぇから、バジ王国の王宮の草むらまで連れてってくれねぇか?」

「シゲ!いいよー」

「くーはいい子だなぁ」とシゲは、くーの頭を撫でた。

「えへへ」と照れながら、くーは嬉しそうに笑顔を見せた。


 バジ王宮前までやってきたシゲは

「終わったら、草むらに入って呼ぶから、今回も帰り頼むぞ、くー」

「シゲ!わかったー」と言って、くーは草むらに帰って行った。


(今回も直接、王直々に聞いてみっかぁ〜)


 自宅に入るかのように、シゲはバジ王がいる王宮に入って行く。

(なんだか、こっちの国は元気がねぇなぁ)

すれ違う警備兵など、顔色はあまり良く無く、疲れているようだ。


 シゲは、数人に聞きながらバジ王の居る部屋までたどり着いた。

(こいつはひでぇ…)


 目の下にクマを作り、頬が削げた姿の中年の男性が、椅子にもたれかかるように座っていた。

シゲは、今回もスマホの【ボイスレコーダー】の録音ボタンを押してから、精気を感じられない男に話しかけた。


「おめぇさんが、バジ王かい?」

「いかにも、余がバジ王である」

(声にも張りってもんがねぇなぁ…)


シゲは背後に同族の気配を感じ振り向いた。そこには無表情で白いスーツ姿をした人物が立っていた。

(こっちの世界も死神は白い服装なのかい。こんだけ死相が出てりゃ、死神も待機するわなぁ…早く終わらせるか…)


「なんで、この国のもんは、皆元気がねぇんだ?」

「今までは、ゼフ王国と国交を結んでいたが、この前の両国での会議で、一方的に破棄されてしまったからだ。」


「破棄って言ったって、理由ってもんがあるだろ」

「資源は腹を満たさないが、食料無しじゃ人間も魔族も生きていけない。資源を安く叩かれて食糧を輸入できるなら、まだ許せた。しかし、ゼフ王は、私の娘を側室によこせと追加要求してきたので断った。娘には心に決めた人がいるのを知っている。王でもあるが、父親でもある。娘の幸せを政治の犠牲になど出来るものか」

(上に立つものなら国民の為に策略家結婚ぐれぇ覚悟するもんだろぉ…まぁ、あの豚に娘を差し出す親の気持ちもわからねぇことも無いがな…あの豚の精気、タマに干からびるまで刈り取ってもらえば世の為になるんじゃねぇかぁ〜。そう言やぁ昔タマは「男なぞ、顔や体より、精気の濃さが大事ぞえ。」と言ってたなぁ)


「お前さんたちの国、一年後まで国民の命はもちそうなのかぁ?」

「当初はノストラから食糧を手配してもらう約束だった。それなのに、一向に食糧は入って来ない。備蓄食糧を小出しに配給するのがやっとだ」

(ここでもノストラが絡んでるってのかぁ)


「この国は、一年後の大戦に勝てると思うか?」

「今の食糧事情じゃ、一年後まともに戦えるはずが無い…せめて、噴火灰が収まって、日の光と雨さえ降ってくれたら…」

(いい装備持ってても、操る中身の魔族がフラフラじゃぁなぁ…)


「この国はゼフ王国をどう思っているんだ?」

「豊富な食材があると妬んでおる」

(だろうなぁ。その妬みの念が深闇の森のモンスターを産む糧にちげぇねぇ。)


「この国には異世界からの転生者は居るのかい?」

「いせかいからのてんせいしゃ?それは何だ?」

「気にしなくていい、悪かったな」

(この国には異世界からの転生者は居ないって事だなぁ)


 シゲは、死神を避けるように部屋を出た。


 王都をしばらく歩いてみたが、ほとんど歩いている魔族の人は居ない。

得意の井戸端会議から情報収集も出来ないので、その辺の民家に入ってみた。

家族は1箇所に固まり、じっとしている。台所には食糧も置いて無い。


「お前さんたち家族は、最後に食事をしたのはいつだい?」

「今朝の配給を食べたっきりだ」


「王都ですらこんなだ、他の都市や村はどうなんだい?」

「王都より状況は悪いって話だ」


「一年後に大戦が有るのは知ってるかい?」

「あぁ、知ってるさ。そのせいで、バジ王国はこの有様だ。明日の生活もままならないのに、一年後の大戦なんて考えられるか」

空腹時は、ちょっとのことでも気に触るのは、人間も魔族も一緒らしい。

(一応配給は有るが、全然足りてねぇなぁ)


「ゼフ王国に亡命は考えねぇのかい?」

「そんなん無理だろう。噂じゃ、ゼフ王国の入り口になるタス村に、一騎当千の異名を持つエスター将軍が、難民を切り捨ててるって話だ」

(エスターって、さくらちゃんと一緒にいた子だろ?そんな事してる姿は見てねぇし、エスター自身がゼフ王とノストラの策に引っかかってる状態だもんなぁ。これもノストラの情報操作にちげぇねぇ)


民家を出たシゲは、近くの草むらに入って

「おーい!くー待たせたな」

「シゲ!今回は早かったね!」

「くー、悪いがもうさくら神社に戻る前に、ヒク村に寄ってくれるか?」

「わかったー!」


 ヒク村の草むらからヒク村に出たシゲは確信した。

(全てノストラのカークの筋書き通りってことかぁ。)


ヒク村も、タス村同様に村民は誰もおらず、廃村のようになっていた。ただ違うのは、「亡命者もこの村人同様に切り捨てる。ゼフ王国 タス村領主兼大将 エスター」の張り紙が至る所に貼られていた。不思議と死体は男性や子供のみで、女性の死体は無かった。

(女はどこかに売るためにもちかえったってぇのか?)


この惨状を知ったバジ王国の国民を通して噂が伝わっていったのであろう。バジ王国の魔族をこの国に留めさせる為に…



実は、オーサム将軍の部屋で、とあるメモをシゲは見ていた。

下記項目の全ての□にチェックが入っているメモを…


□勇者タケルの妻と娘を拉致

□勇者タケルに、ヒク村への急襲と護衛にエスター大将をつけるように提案させる

□ノストラの傭兵でヒク村の村民を排除し、村民になりすます

□命乞いをする村民を装い、勇者タケルを殺害、【軍師のペンダント】回収

□エスター大将のビラをヒク村にまく

□タス村の村民排除


(ゼフ王もバジ王も、王の器じゃねぇ。ノストラが本当の敵って事だなぁ。まだ知らねぇ悪巧みが進行してるんだろうなぁ。ノストラはバジ王国を乗っ取るのかぁ?それは何も得がねぇから悪手だなぁ…大きな恩をこれから売って、バジ王国を自由に操るって国家予算を自由に操れるようにすりゃぁノストラが得するなぁ。食糧事情を改善させる人物を仕立て上げて、バジ王国版のオーサム大将でも作り上げるにちげぇね…)

悪巧みをするものの考えがシゲには手に取りようにわかる。自分だったらどうするか考えればいいだけだから。


 草むらに入ったシゲは、

「くー!さくら神社に帰るぞ!」

シゲの手を握り、くーは元気良く

「うん!帰ろう!」と無邪気に言った。


さくら神社の住人に多くの決断が迫られる事になる。

初めての作品「さくら神社の防衛戦争」を読んでいただき、ありがとうございます。

タイムリミットある中、異世界でのさくらの活躍を応援してください!


次回の予告と異なる内容になってしまい、ごめんなさい。

突然シゲさんが心変わりしちゃうんですもん…


さくらの活躍を応援していただける方は、ぜひ評価(下部の☆☆☆☆☆)にて後押しお願いします。

その応援がはげみになります。


次話こそ…シゲさんの集めた情報を元にさくら神社会議が進みます。

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