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シゲさんの諜報活動 ゼフ王国

 ゼフ王国の王宮の草むらに、ひょんと現れたシゲさん。

「終わったら、その辺の草むらに入るから、帰りも頼むぞ、くー」

「シゲ!わかった!待ってるー」と言って、くーは草むらに消えていった。


(先ずはゼフ王から当たってみるか…)


 まるで王宮に元々出入りしているかの様に、王宮入り口を守っている警備兵の脇を堂々と通り過ぎていくシゲさん。警備兵に止められることも、声をかけられることもない。


 何回か「ゼフ国王の私室はどっちだったかい?」とすれ違う人に聞きながらなんなくシゲさんは、ゼフ国王の私室まで入った。ちょうど私室にはゼフ国王が一人で書類に目を通していた。

 腹黒公家、二枚舌大名、腹黒商人、私腹を肥やす政治家、ブラック企業経営者それらを長年見てきたシゲさんは思う。

(悪い奴らは、みんなぷくぷくと太ってやがるな…ちったぁ運動しろ…)


 何をしてもバレないシゲさんは国王に話しかけた。スマホの【ボイスレコーダー】の録音ボタンを押してから。

「タス村に赴任させたエスターとさくらは覚えてるかい?」

「異世界からの転生者をタス村の領主として、エスターを補佐としていかせたが、転生者の名前は、さくらだったか?もうおぼえておらん。あんな使えないスキルしか持っていない転生者などはじめてだったわい。そういえばスキル【引きこもり】なんてのがあったな。クズ人間らしいスキルだ」

(おいおい、俺がさくらちゃんに付けたスキルが、酷い言われ様だな…)


 今のシゲさんなら、サクリとゼフ王を暗殺することなど容易い。しかしシゲさんは、今まで自らの手では人を殺したことは無い。


「エスターってのは、転生者に付けた監視役かい?」

「ゴミの様な転生者に監視役などつけるほど我が国は人が余っている訳じゃ無いではないか。開戦時は、タス村付近が真っ先に戦場になる場所だからな。少しは武力のあるエスターが居れば時間稼ぎの役ぐらいにはなるだろ」


「エスターってのは、どんな人物なんじゃい?」

「戦争孤児で孤児院上がりの貧乏臭い女だ。戦の腕はあるようで武勲を上げて大将にまでなったが、貴重な英雄を死なせおって…肝心な所でボロを出しおったから、軍から追放して、前線に厄介払いしたまでだ。育ちが孤児院で殆どの給料も国名義で孤児院に支給されるように積み立てていたが、全て没収し…おかげでクズ人間の召還に使った莫大な経費を補填させてもらったから、良かったがな」

(エスターは孤児院上がりで、ほとんど贅沢せず育った孤児院の運営資金にあてていたってのかい…しかもパトロンとわからぬように国の援助に見せかけて支給っていうのが泣かせるじゃねえか!)


「孤児院に支給するための運営資金を使っちまったなら、今その孤児院はどうなってるんだい?」

「何も支給されとらんじゃろな。貧乏臭い人間が数人餓死したところで、この国は痛くもないわ」

(この国、長く持たねぇな…)


「前の転生者だった勇者はどんな人物だったんだい?」

「タケルのことか。あれは頭の切れるやつだった。スキル【軍師】を持っていたからな。正しく片腕として信頼しておった。タケルとオーサム大将から開戦前に、バジ王国側の深闇の森に一番近いヒク村を急襲して押さえてしまおうと提案された時は、驚いたわい。大将だったエスターを護衛に付けたが、余の片腕のタケルを死なせおって…忌々しい…唯一の救いは、自らの意思でヒク村に援軍として動いていたオーサム大将の機転で【軍師のペンダント】をバジ王国の奴らの手に渡らなくて良かったわい」


「回収した【軍師のペンダント】は今誰が持っているんだい?」

「オーサム大将に褒美として授けた。今はスキル【軍師】もちとしてタケルの代わりとなって片腕として信頼しておる」

(前の転生者は信頼してたのか。一番得をしたオーサム大将ってぇのがなんか怪しいな…)


「亡くなったタケルには家族がいたのかい?」

「嫁と娘がおったが、後を追って命を断ちおった。娘などどうでもいいが、タケルの嫁は美人で側室に召し抱えようしたおったのに残念だったわい」

(この豚の側室になるくらいなら、死を選んだってぇのかい…可哀想だな)


「タス村は、今どうなってるんだい?準備は順調に進んでるのかい?」

「後日、どうなってるか視察に兵を向かわせる予定だわい。ほとんどの住人が移住して数少ない貧乏な村人をまとめることができても、大したことなど出来るはずが無いわい」

(タス村の住人が全員死んでいて廃村のようになっているのは、この豚さんは知らねぇみてぇだな)


 聞きたいことが終わったシゲさんは、ゼフ王の私室を出て、オーサム大将の私室に向かう。

(はて…今部屋に誰かおったかの?)

ゼフ王はシゲさんとの会話など覚えていない。


 オーサム大将の私室に向かったシゲさんだが、不在で部屋の鍵がかかっていた。鍵穴のピッキングなどシゲさんには朝飯前である。

(隠し事のあるやつは、大抵机の引き出しの奥に隠し引き出しがついてるんだが…やっぱりビンゴだぜぇ♪時代も世界も違えど、悪い事を考える奴の行動は一緒だな)


 隠し引き出しの中の書類を見てシゲさんは自分の予想が当たったことにニヤリとした。

そこに有ったのは、ゼフ王国とノストラ、バジ王国とノストラの商い帳簿だった。ゼフ王国のオーサム大将としての指輪印章とノストラのボスであるカークとしての指輪印章が有った。封蝋を使っている時代のようだ。

(オーサム?カーク?どっちでもいいかぁ、この2つの名を使い分けてるのが、陰で大戦を操ってる奴だろうなぁ。是非とも一度拝んでみたいもんだ…いい腹してるんだろうな…)


 証拠をスマホのカメラに撮ったシゲさんは、オーサム大将の部屋に入る前と同じ状態に戻して部屋を出る。

(近いうちに使うかもしれねぇから、さくらちゃん用の指輪印章を、くーに作ってもらわねぇといけねぇかもな…)


 王都に出たシゲさんは井戸端会議してる中に入り、情報を集めた。

「この国とバジ王国と一年後に大戦があるってぇのに、王都ではみんな呑気に生活している見てぇだが、大丈夫なのかい?」

「あんた知らないのかい、バジ王国は年中食糧難で人口もあまり多く無い国だから王都までは侵攻なんてしちゃ来ないよ」


「バジ王国は、なんで食糧難になっちまってるんだい?」

一人の主婦が遠くに見える、噴煙を上げてる火山を指差し

「あのピーナッツ火山のせいさね。あそこに住んでるドラゴンの虫の居所が悪いと噴火を起こし、溶岩はこっちの国に、噴煙はバジ王国に流れていくのさ。資源が豊富なピーナッツ火山だけど、こっち側は年中溶岩が流れ出て採掘なんか出来やしない。でもバジ王国側には噴火しても溶岩が流れていかないらしく資源を採掘出来るらしいんだよ。羨ましいねぇ」

「なるほどなぁ。資源は採掘出来るが噴煙が流れて太陽光が遮られ、火山灰が積もるなら作物なんて出来やしねぇから、年中食糧難ってことかぁ」

「あんた賢いねぇ」

(そういうカラクリがあったのかぁ。もしかしたら火山さえなんとか出来たらいいんじゃねぇのか?龍神様でなんとかしてくれたら丸く収まるかもしれねぇなぁ)


 情報を仕入れたシゲさんは、井戸端会議から離れ最後の目的地に向かった?

(あら?さっきまでここに男の人が居たような…って気のせいか)

井戸端会議はいつの時代でも情報の集まる重要な場所である。


最後にシゲさんが潜入したのは、エスターが育った孤児院。

エスターが王都を出た日から何も支給されていないのであろう。小さな子は餓死しており、生きているのは、母親代わりの女性一人と小学生くらいの男の子と女の子が一人づつだけの3人だけだった。きっと水しか口にしていないのだろう。子供より先に母親代わりの女性の方が今日にも死にそうな顔をしていた。

(こいつは、もののけでも見ていて気持ちがいいもんじゃねぇなぁ。死神のやつだけは喜びそうだなぁ。くわばらくわばら…)


 もう王都には用が済んだシゲさんは近くの草むらに入って

「おーい!くー待たせたな」

「シゲ待ってたよ!」

シゲさんに頭を撫でてもらい嬉しそうなくーに手を握ってさくら神社に二人は戻った。

初めての作品「さくら神社の防衛戦争」を読んでいただき、ありがとうございます。

タイムリミットある中、異世界でのさくらの活躍を応援してください!


さくらの活躍を応援していただける方は、ぜひ評価(下部の☆☆☆☆☆)にて後押しお願いします。

その応援がはげみになります。


この作品のきっかけについて触れてみようと思います。

子供の頃の映画に、日本の妖怪と海外の妖怪が戦争する内容の物がありました。

海外の妖怪はドラキュラやフランケンシュタイン、狼男など攻撃力のあるラインナップ。

それに対して、日本の妖怪は、油すまし、小豆研ぎなど攻撃など期待出来ない者ばかり。

ちょっと悔しかったので、日本の妖怪=もののけが活躍出来る作品にしようと思って書き始めました。

九尾の狐は日本じゃなく中国から来たことになってるのかな?


次話は、シゲさんの集めた情報を元にさくら神社会議が進みます。

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「さくら神社防衛戦争」
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処女作ですが、皆様の応援、誤字脱字報告のおかげで一次審査を通過しました。心より御礼申し上げます。

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