初めての【神社ディフェンス】
異世界に来てから初めて満腹で動けなくなったさくらは、スマホのマップを開く。
(さくら神社の周囲に悪意のある者を示す赤い点が増えてる…大丈夫なのかな…)
そんなことを考えていると
「さくらさん、神社ディフェンスやりますか!」
(頭の中にナビさんが、ワクテカしたテンションで話しかけてきた)
「危なく無いの?」
「絶対に大丈夫とは約束出来ないけど、きっと大丈夫です!私のテリトリーまで好き勝手にズカズカ入ってきて、勝手に改造していく、エロギツネと色黒ジジイが居るさくら神社は簡単に負けないはずです!」
(スキル書き換えするほどタマさんがこの世界に干渉してるのはわかるけど、色黒ジジイって誰?)
1人だけ常温の日本酒をちびりとやっているタマさんがさくらに
「わらわは、エロギツネではないぞえ」と言った。
(私とナビさんの会話筒抜けなんじゃん…)
ナビさんから、さくらに
「さくらさん、皆さんのスマホの【神社アプリ】を開いてもらってください。」
とお願いが来た。
さくらは、「皆んな、スマホ開いて、【神社アプリ】起動してくれるかな?】
おばあちゃん、タマさん、エスターさんはスマホを開いて【神社アプリ】を開いた。さくらも開いている。
4台のスマホで【神社アプリ】を起動が終わったタイミングで、全てのスマホから一緒の音声が流れた。
「私の名前はナビ。今後皆さんのサポートをさせていただきます。」
(ナビさん凄いよ。これからは、ナビさんの説明を私が伝言ゲームの様に伝えなくていいんだね。)
「神主のさくらさんの強い要望により、これから初めての【神社ディフェンス】を行います。」
(えっ!私の強い要望?ナビさん、私何も言って無いよ!)
ナビさんは、さくらの事を無視して話を続ける。
「【さくら神社の経営】を行うには、神社ポイントが必要になります。境内の拡張、各種施設の建設や増設、これから行う【神社ディフェンス】の兵器購入“など”に使われます。」
(うんうん、これは私聞いてる)
「【神社ディフェンス】とは、繁殖目的に押し寄せるモンスターを退治するものです。先ず最初に、モンスターの繁殖目的にさせる生贄の象徴を選定します。色気がある人ほど効果があります。誘う衣装を着ると襲撃してくるモンスターの難易度がアップします。」
「わらわの役目ぞえ♪今日は試しに普段着のままでやってみるぞえ」
(適任だと思うけど、立候補してくれてよかったぁ。そうじゃなければ、私が立候補しなきゃだったもん…)
さくらはホッとした。
続けてナビさんは説明を続ける。
「他の人は、設置した兵器の操作。アバターの操作を行ってモンスターを退治します。モンスターが襲撃してくる場所は、一時的に結界を解除するタス村から神社の境内までの石階段になります。今の【さくら神社】のレベルで設置が出来る兵器は、【狛犬(水)】、【狛犬(弓)】です。アバターは、人形などを選んで下さい。戦闘で得た経験値によって、兵器やアバターのLVが上がります」
(タワーディフェンスそのままじゃん)
その後のナビさんの説明で…
兵器の操作は【神社アプリ】内の【使用兵器】から選び、スマホから遠隔操作が出来こと。
アバターを選択する場合は、人形に一時的に魂がリンクされ、自分の体の様に動かせること。
タマさんは神社境内の階段最上段で使い慣れた獲物の薙刀を持って待ち構えるとのこと。
となった。
石階段は100段あり、50段目には少し広いスペースになっている。
50段目の左右に【狛犬(水)】、【狛犬(弓)】を一つづつ設置した。
私は、【狛犬(水)】を操作し、【狛犬(弓)】をおばあちゃんが操作し、エスターさんは、今日手に入れたうさぎのぬいぐるみに憑依し、手にカッターを持たせた。
危なくなったら、解除した結界を元に戻すと、石階段には新しくモンスターは入って来れなくなり、石階段エリアに取り残されたモンスターは徐々に体力を奪われていくとのこと。
今日は初めてなので、モンスターが1匹でも50段目を越えたら、結界を戻す事にした。
タマさんが薙刀を持って、瓢箪に日本酒を入れ、境内の入り口に仁王立ちする。
スマホの【神社ディフェンス】の画面には、タマさんが映っていた。美味しそうに瓢箪から日本酒を飲み、のどから胸元に日本酒が垂れる姿が色っぽい。
居間に居る、おばあちゃんとエスターさんに向けて、さくらは
「始めるよ!」と言って開始ボタンを押した。
タス村から境内に続く石階段の結界が解除され、タマさんの男を惑わすフェロモンが流れ出ると。モンスターまっしぐらである。
緑色した小鬼のゴブリンが我先にと、階段を駆け上がってくる。
ほろ酔いでノリノリなタマさんは
「わらわに生気を吸い取られたい輩は、ここまで来るぞえ」と叫んで煽って居る。
早速、さくらは狛犬の口からローション弾を撃ちまくる。ローション弾には殺傷能力は無いが、ヌルヌル滑るので、足を滑らせたゴブリンが頭から落ちていき、打ちどころが悪いとそのまま天に召されて姿を消した。
おばあちゃんも射的を子供の頃から何千年?と遊んでいた経験があるので、ゴブリンの眉間を着々とヒットさせていく。
それでも数体は狛犬の攻撃を回避出来たゴブリンが50段目に到達した。
エスターさんの出番である。
可愛らしいうさぎが、カッターで的確に切っていく。最初は危なげなくゴブリンを倒していたが、返り血を浴び、カッターを滑らせてしまった。あとは、無罪にもゴブリンに踏まれていくうさきのぬいぐるみ…
エスターさんは、基礎体力で力押しするタイプの剣士なので、LV1のうさぎのぬいぐるみでは、頑張った方である。
さくらは結界を元に戻した。
おばあちゃんは、狛犬の向きを境内の方に向け、無防備なゴブリンの後頭部を面白い様に撃ち抜く。
エスターさんは悲しそうに、緑の返り血を浴びてしまったうさぎのぬいぐるみを抱きしめて謝っている。
うさぎの片耳は取れかけ、お尻の縫い目部分はほつれ、綿が飛び出ていた。
「エスターはもっと強くなりたいかえ?」
唯一活躍出来なかったと悔やむエスターは無言で頷く。転生した勇者との襲撃失敗以降、エスターは悔しい思いばかり続いていた。
「エスターは、無駄な動きが多く、武術の基礎がなってないぞえ。明日の朝から、さくらと一緒に修行するぞえ。」
「タマさん殿…よろしくお願いします。」とうっすらと目に涙を溜めたエスターはタマさんの提案を受けた。
(うそだぁ!私も修行するの!)
さくらは完全に巻き込まれ事故である。
初めての【神社ディフェンス】は、【さくら神社】の氏子の戦力確認と気の引き締めになった。
ゴブリンの返り血で汚れたうさぎのぬいぐるみをお風呂場で洗い、エスターさんが着替えて戻ってくるまでに、さくらは客間にお布団を敷いておいた。激動の1日で疲れているであろうエスターさんをお布団に案内した。エスターさんはお布団に入ると直ぐに寝息をかいていた。
(激動の1日だったもんね。エスターさん、ゆっくり休んでね)
さくらはエスターさんが起きない様に、ゆっくりと扉を閉めた。
エスターさんを寝かせた後、さくらはおばあちゃんと一緒に外に出て夜風に当たっていた。
馬小屋が追加されているが、見慣れた風景。追加された馬小屋の中では、馬も夢の世界のようである。
虫の音が聞こえ、天には無数の星が輝いていた。こうしていると、島にいた頃の様にさくらは感じていた。
「おばあちゃん、弓の腕前凄いんだね」
「射的は昔から得意じゃよ」
さくらはおばあちゃんのとなりに立ったまま、手をそっと握り
「今日から、またみんなとの生活が始まるね!」
と嬉しそうにさくらは言う。
「さくらは無理するんじゃないよ。おばあちゃんがそばにいるからね」
「うん!」
その2人の姿をツマミに、縁側に座ったタマさんと色黒の男性が日本酒を呑みながら見守っていた。
「お主と酒を交わすのは久しぶりぞえ」
「そういえばそうだな。さくらちゃんのおじいちゃんの葬儀以来だもんな」
「お主はこれからどうするぞえ?」
「色々やっちゃってるから、俺もさくらちゃんの前に姿見せるべきかな」
と言って照れたように笑っていた。
初めての作品「さくら神社の防衛戦争」を読んでいただき、ありがとうございます。
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