再会 エスター視点
前話のエスター視点です。
さくら殿が常に大切にふところにかかえていたアーティファクトの“おいなりさま”を大きな石の上に設置した。何かの儀式なのだろう、さくらが背筋をのばし、頭をさげたり、手をたたいたり…その瞬間まぶしい光につつまれ、ゆっくりと光が収まると、見たこともない建物が現れていた。
エスターの住む世界では、石造りやレンガ作りの建築物が主流だった。目の前の建築物は木でつくられているようだ。その建物の前には、優しい笑みを浮かべた獣人が立っていた。
さくら殿と獣人の目があったのだろう。獣人が優しい声で
「さくら、あいたかったぞえ!」
と言った瞬間、さくら殿は獣人にかけより、出会ってからエスターには見せたことが無い感情を爆発させた姿で飛びついて、抱きしめ、号泣していた。
生き別れの母親に再開したかのように感じた。
しかし、獣人の隙の無い所作、あふれる母性に包まれつつ、武術のみちの達人が発する圧倒的な気のようなものを感じ警戒をしていた。それは、一騎当千の武力称号を持っているエスターだからこそ感じることのできた…本能からくる警戒心だったのだろう。
(この獣人…ただ者では無い…)
百戦錬磨の戦士のようであり、妖艶な魔物のようでもあると感じ、動けないでいたエスターの緊張を解き放ったのは、まだぐすんと泣いているさくらの頭をなでている獣人のひとことだった。
「さくらや、今まで陰でこっそり見守ってたから、大体の事情はしっておるぞえ。それでも、その子をわらわに紹介して欲しいぞえ」
優しい中にも殺気もふくまれた獣人の視線がエスターに向けられた。
さくら殿は、鼻をすすり、真っ赤になった目から涙をぬぐい、
「一緒にこの地に赴任してくれたエスターさん」
「こっちは、私の母親代わりって話をしていたタマさん」
と紹介をしてくれた。
殺気を含んでいる視線を向けられているため、返答次第では、この獣人に先制攻撃されるのではと警戒しながらゆっくりとさくら殿とタマさんと紹介された二人に歩み寄る。
(これから共に戦うさくら殿が無防備に抱き着く相手である、これから共に戦う者に対して、私がおびえてどうするのだ。)
勇気を出して全身の警戒する力を抜き、自分が今できる自然体で。
「私の名はエスター。元軍人だったが、今は一般市民として、さくら殿の補佐を命じられ、この地に同行して赴任した。タマさん殿、これからよろしくおねがいしたい」
エスターから握手を求めるように手を差し出した。
そのときのタマさんの目からは殺気は一切消えており、母性の優しさのみになっていた。
「わらわは、タマぞえ。エスターも清い心を持っているようぞえ」
(この獣人に、私は認めてもらえたようだ。)
と思いほっとするエスターであった。
(「今まで陰でこっそり見守ってたから、大体の事情はしっている」と言っていた…この獣人の気配は一度も気が付かなかったのはなぜだ?)
その後、さくら殿とタマさん殿の会話を聞いていると、さくら殿もタマさん殿が獣人だと今気が付いているようだった。タマさん殿は、獣人ではなく妖精と自称しているが、人間の姿に近いが、聖獣なのではないのだろうか?
その後、さくら殿から、年配のおばーちゃん殿、小人のくーちゃん殿とさーちゃん殿を紹介してもらった。さくら殿の世界ではもののけと呼ばれている存在らしい。こちらの世界では妖精に近い存在である紹介された。さくら殿のアーティファクトは、聖獣や妖精を召還できるものなのだろうか?さくら殿は、”おいなりさま”を使って聖獣や妖精を召還して戦うスタイルなのか?
極端に低いLvは、私達をだましていたのではないか?
タマさん殿一人ですら、ゼス王国の軍だけで抑え込むことができるのだろうか…
ゼス王国にとっては、さくら殿は召還するには危険な人物だったのでは?
この場所にいるメンバーだけで、この世の最大戦力になるのでは?
エスターはタス村の絶望的な状況で、突然現れた圧倒的戦力に混乱していた。
しかし…独特な民族衣装をまとっているくーちゃん殿とくーちゃん殿の背中に隠れるようにちょこんと顔をのぞかせているさーちゃん殿の可愛さに心を奪われていた。
(あの小人の妖精と仲良くするには、どうしたらいいのだ…)
エスターは可愛いものが大好きであった。
そしてモフモフ好きでもある。今は恐ろしくてまだ出来ないが、タマさん殿のモフモフしたしっぽを触りたい…顔をうずめてみたいとタマさん殿の尻尾を、気が付かれないようにチラチラ見ていた。
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