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7話 新しいヒロインを登場させろ!

 敵は早く、目で追っても残像しか見えない。構えてから、拳を突き出すも、当たらない。

 

「ティンカ、逃げろ!!!」


 後ろからすごい速度で飛んできたなにかは、逃げるティンカと距離を詰めていく。


 俺は足に力を込め、跳躍した。

 顔にすごい風圧がかかる。

 おおー。すげー。いまだに驚くんだけど、俺が全力で飛ぶと、村に生えている木のてっぺんとか余裕で超えることができる。

 

 おー。村の人たちが見ている。子どもが手を振っているぜ。

 

 そのまま、敵に向かって飛び、手刀でたたき落とす!

 が、かすりもせず、ティンカに向かっていく。

落ちる。地響きが起こる。震度2ぐらいにはなってしまったかな。



「ユーキ、もう無理、これ以上早くは飛べないよ」

 

 

 やばい。ティンカに追いつかれる!!!!




「ニック、やめろ! もどってこい」


 高い、女の子の叫びが響いた。

 ニックと呼ばれた鷹はティンカから離れ、先ほど勇者から紹介を受けたマエという女魔法使いの腕に止まった。



 ニックが高い声で鳴く。燃えるような赤いからだだ。こっちの世界(セラン、というらしい)の生態系だと、この色の方が擬態できるだろうか。


 マエは皮をなめしたとんがりハットを深くかぶっていて顔が見えない。木で彫られた杖ときれいな緑色のローブを着ている。

 鷹匠がつけている爪防止の小手をしていなかった。痛くないのだろうか。


「あんた様たち、ニックが大変失礼致しました……じゃ、なかった。迷惑かけてすまなかったな。いつもはすごく大人しい子なんだけど。どうもあなた様……アンタのことが気になっているみたいでよー」


 空からおそるおそる、降りてきたティンカに向かって、ニックはそわそわし、何度も鳴いた。


 マエはティンカにたぶんアナタと友達になりたいの、一緒に飛んでくれる? と、上空にニックを放った。きれいな赤い羽根を広げ、ティンカと共に木々や家の間をすっ、と横切る。

 二人とも同じぐらいの大きさで、ニックは仲間かと思ったのだろうか。


 分身のように互いに動きを合わせ、飛ぶ。


「すごいよ~。ユーキ。この子、すごく風に愛されている。風の行き先というか、未来がわかるみたい」


 ティンカとニックはもう友達になったみたいで、ニックは止まり木となったマエの指をつついて、ティンカの近くに寄るように合図した。


 か……かわいい。猛禽類ってなんでこんなにかわいいんだろう。クリクリとした目、高い声、すごく人なつっこいんだよなぁ。


 マエにニックを触ってもよいか、聞き、腕を出してみた。

 高鳴る心臓の鼓動を、耳がよさげなニックに気取られないように、努めて冷静なふりをした。


 ニックは首をかしげ、高く、鳴いた。


 うほほほほほー。腕に。ほら見て! 腕に。ニックが、乗って、きゃわ。なにこれ! きゃわわー。

 ちょっとなでてみようかなぁ。

 あー。頭けっこうやわらかい。背中、うそっ。こんな感じ? あ、ティンカも触る? 見てみてー、ここ、すっごく気持ちいい。


 と、調子にのってべたべた触っていたら、ニックが高く鳴いて、俺の指を何度か甘噛みした。


 いやだ、といっているように感じて、やめた。


 ニックはマエの腕にもどっていった。


「ニック、すごいかわいいですね。気品もあって、かっこいいし、猛禽の沼にはいりそうです。この子は獲物を狩るために飼っているのですか?」

 コミュ障あるあるだけど、初対面はどんなに自分より年下に見えても、敬語で話すよね。あ、俺、ユーキっす。


「違います……あっ違うんだー。こいつはペットだなー。由緒ある血統の……いいとこの出の坊ちゃん鳥さ。こいつはなかなか人には懐かねぇんだけど、そちらの精霊? には懐いたみたいで、珍しい」


 マエがニックの口元になにかやっていた。餌だろうか。よく見えなかったが。


 ん? ちょっと、ちょっと。スルーしてたけどさ。マエさんのセリフ、なんか変じゃない? 俺もまだ連載開始直後でキャラが定まってないが、マエさん、しゃべり方というか、キャラがすごくブレブレのような気がする。



とんがりハットに顔が隠れていて年齢はわからないが、声が高く語尾が伸びるのがかわいい。15歳前後ではないかと推測する。

 

つまり、多感で、甘酸っぱく、中学生特有の精神拡張(厨二病的萌芽)にかかりやすいお年頃だ。

 

キャラ変の過渡期を迎えているのかもしれない。話し方がぶれているよね、などとは死んでも触れないでおこう。


「わたくし……あっしさぁ、しゃべり方、ぶれっぶれですわよ……だよね?」

「――――どわわー。自分からカミングアウトしたー」


「あっしは、厳格な家庭にお姫様みたいに育てられて、いつも礼儀正しくしろって教わってきたんだけれども。

 最近どうも、そういうのがむず痒くて、豪快と言うか、おっぺけぺーと言うか、そういう女の子として見られたいんだけど。なかなか上手くいかないのですわ……。いかねーんだよなー」

 

 

 俺は自らの胸に手を当て、中学二年生ぐらいの精神拡張(厨二病妄想癖)にかかっていた頃のことを思い出した。

 

 いやいや、その前に、おっぺけぺーとは言わないよね。今日この頃。ツッコミ回収しとかないとね。

 


 女の子の厨二病とは話したことがないが、女の子ともほとんどしゃべったことないけど。

 自らがお姫様で、王子様が迎えに来るとか言った、そういった妄想をしているのだろうか。

 ということは、マエさんのお姫様として育ったというのもただの設定ということ?

 

 

 「わかるよ……。俺も。君のようなそういう……。多感な時期があって。なんと言うか……。うん……

 ――強く、生きろ!!!!」

 

 力の限り、彼女の肩を叩いた。

 

 大丈夫、きっといつか、霧が晴れて、思っていたような世界じゃなくっても、きっと生きていける。いまのこの思いは、純粋ないま、そのものであって、決して黒歴史なんかじゃ、ない。

 

 決して。

 

 これは、ほんのすこーしまえに厨二を卒業した、俺からの激励の意味だった。

 

 あっ! しまった、と強く叩きすぎてしまってから気がつく。俺、マッチョでしたやん。

 

 

 肩の叩いた部分に魔力のすさまじい抵抗を感じたが、勢いあまってそのまま、打ち抜いた。

 

 ニックがあわてて、飛び去り、俺をつついてきた。

 そうだよね。俺が悪いよ。マジごめん。

 

 マエさんが陥没した地面に埋まり、そうとう下まで行ってしまい、見えなくなった。

 

 

 「おい! うちの大切な魔法使いになにをやっているんですか?」

 後ろから声をかけられた。

 

 

 冷や汗がでた。

 

 

 なぜなら、アナタの大切な魔法使い様が、地中に埋まっていたからだ。


 深い、深い、穴の底からは、なんの音もしなかった……。ただ、そこには深淵が横たわっていた。

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