24話 勇者
勇者は膝からくずれおち、血を吐き、地面に倒れた。
「勇者は私をかばって。ああ、あああああ」
ライラが錯乱している。
黒ローブは剣を構えてライラに襲いかかろうとした。
ライラは錯乱して盾を拾えていない。
間に合え、ティンカを先に助けるべきだと思って、黒ローブから離れてしまっていた。
全力で走る。
マエがライラをかばって正面に立った。
風魔法を放つ。
肩を貫かれる。
上空にいたニックがギャーと、強く鳴いた。
黒ローブに襲いかかるが、手の甲で弾かれる。
ピィーとか細く鳴いて、地面に落ちた。
「マエ!!!!!!!!!! ニック!!!!!!!!!!」
ようやく追いついて剣の二刀流の黒ローブと対峙した。
剣が俺の首元まで迫っていた。
また、武器スキルか。
一瞬で剣を弾く。
俺なら素手で、弾ける。
「よくも勇者を」
低く笑う声が黒ローブから漏れる。
「笑わせる。ヒムごとき下等生物が、俺に勝てるとでも?」
笑い声には、明らかな憎悪が混ざっていた。
黒ローブが剣をまっすぐに構える。
剣をこちらにぶん投げてきた
首を傾けて回避、「【if-then】!!!!!」
格闘技コンボが炸裂した。
「まったく動きが見えなかった……。いったいなにをされたんだ……。こんなヒム人ごときに」
岩肌に敵がめりこんで、動かなくなった。
「ユーキ。早く勇者のもとへ来て」
ライラに抱かれた勇者に近づく。
勇者は大量の血を流していた。
ティンカがマエに助けられ、駆けつけた。
「ユウ……キの、言う・通りだった」
勇者は血を吐きつつも、続ける。
「しゃべるな! いま、回復する!」
「いい……んだ。もう……助からない、聞いてくれ」
勇者は俺の手をにぎった。弱々しく、冷たい。
「オレは弱く、臆病だ……。――すぐに死んで……誰かを……悲しませるしか……できない」
「だからこそ……オレが……勇者に……なろうと思った。ほかのだれかが、、、同じ……つらい思いをするのなら……オレが……」
ライラが嗚咽漏らし、泣いている。
マエは肩を押さえて黙って聞いている。
「ユ-キ、オレに代わってゆうし……。いや……。ライラとマエ……仲間を守ってくれない……か」
勇者の吐血が俺にかかった。
「……約束する、必ずマエとライラを守ろう、安心してくれ」
勇者は眉間の皺がとれ、安心したように、笑った。
勇者は最後の気力を振り絞って、ライラを仰ぎ見た。
もう、なにも、彼は話すことができないみたいだ。
勇者は、ライラに手をのばす。
ライラもその手をつかもうとした。
が、途中で手がだらん、とたれ、絶命した。
「あああ、勇者――――――――」
ライラの絶叫がこだました。
「マインドフルネス瞑想 LV4 利他の瞑想」
勇者に向かって、マインドフルネスをかけ続けた。
血も止まらないし、勇者はぴくり、とも動かない。
肩を叩かれる。Tシャツの肩が濡れた。ティンカだ。泣いている。
「あの状態では回復をかけ続けても助からなかった。マインドフルネスは回復はできるけど、死から復活させることはできない」
俺はいままで歩いてきた、アルゼン山脈の峰を見た。
もうすこし、あとすこしだけ。
俺が勇気を出すのがはやかったら……。
マエが肩を抑えながら杖を抱えて立ち上がった。
「ユーキ、大変申し訳ございま……すまねえが回復してくれねえか。ニックも」
俺は目元を拭ってマエとニックにマインドフルネス、利他の瞑想を唱えた。
「ありがとよー」
マエは頭を下げた。とんがりハットは相変わらずマエの頭にへばりついたままだ。
ニックが高く鳴いて、首をゆっくりとさげた。えっ? お辞儀もできるの? すげー。マエの真似したのかもしれないけど。
マエは倒れた黒ローブたちを広場の木が密集している場所に引きずって、集めはじめた。
なぜ、急にそんなことをはじめた?
気がつけば、黒ローブが1人、いなくなっている。
こちらが戦闘に集中している際にこそっと逃げたのだろうか。
死んでしまった勇者にライラが抱きつき、泣きじゃくっている。
マエはその後ろに立った。
相変わらず、とんがりハットにより、表情をうかがい知ることはできない。
杖をかかげ、なにか魔力を発動させている。
心が、かさかさするような、強い魔法だ。
その魔法を、勇者とライラに向けて放とうとしていた。




