22話 タイトルを、回収しろ!!!!!!!!!!
戦いはすでに坂の下の広場に移っていた。
俺に気がついた、二人の黒ローブが、忘れずの森のなかへヒム人を強引に連れていった。えっ? 俺を見て逃げたの?
いまは頭数が減ってくれて、感謝しかない。
残り6人だ。
勇者たちは片手剣をもった黒ローブ1人に遊ばれている。
助けにいかないと。
「勇者様、助太刀致します!!!!!!!!!!」
ライラがぱっと顔を輝かせた。
ニックが高く、鳴く。
「ダメだ! 早く逃げろ」
勇者は剣を振り回しながら答えた。
「俺は、勇気ステータスが1ですが、これだけは得意なんですよー。
せーの。
だが、断るっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
敵は完全に勇者たちを舐めきっているのか、他の黒ローブは遠くから見ているだけだ。談笑している奴らもいる。だが、俺を見た黒ローブ達は態度を急変させた。
あのデカイエビはなんだ。図体がでかいぞ、とざわつきはじめた。
たしかに。こんなデカイヒム人は俺も会ったことないな。あと、エビリュック。いいだろう。いつも俺に背負われていて、5割増しの大きさになっているぜ
あ。戦闘前に、エビリュックおかなきゃね。よいしょっと。
勇者と戦う黒ローブに向かって走った。
神経をとぎすませる。
着地すると同時に、地面を踏み抜く。
水たまりになっている大地が、爆発したかのような飛沫をあげる。
一瞬で、黒ローブの懐まで入ってしまった。
その間、1秒もない。結構距離があると思ったんだけどな。自分でも驚き。
急接近されて、驚く黒ローブはあわてて剣を振った。
「なんだ、こいつ。クソ雑魚ヒム人の動きじゃねー」
さきほどまでやる気なさそうに勇者と遊んでいた黒ローブが悲鳴を上げた。おかしい。剣が止まって見えるというか、スローモーションみたいに動きが遅い。
遅いとはいえ、怖いものは怖い。手で払った。
手の甲から拳型のオーラが具現化し、黒ローブを派手に吹っ飛ばした。そのまま動かなくなった。
これは、格闘技スキルみたいな奴だな。多分。
「ユーキ。あのさ……」
「言わなくて大丈夫」
ティンカは、この格闘技スキルの説明をしようとしてくれていたのだろう、いまは戦闘中なのでそちらに集中したい。
【やりましたねー。格闘技スキルが解放されました。「LV1 拳突」ですー。どんどん使って格闘技スキルを極めましょう】
やはり,スキル解放か。
「驚愕致し……おどれえた。ユーキ、すっごく強いんだなー」
「ユーキ、すごいわ……。でもどうして戦えるの?」
「ユーキ、あのね……」
マエ、ライラ、ティンカの声に答えている暇はない。
悠長に構えていた他の黒ローブが動き出したからだ。
盾、槍、剣二刀流、弓、小刀二刀流とそれぞれ獲物を取り出す。
残り5体。
戦闘中は客観認知を使って戦っていこう。
「【客観認知】!!!!」
LV99 早乙女 勇気
HP:76552/99999
MP:99121/99999
力:9999/9999
素早さ:7612/9999
防御力:9999/9999
魔力:9999/9999
魔力耐性:9999/9999
集中力:3567/9999
勇気:1/9999
GRIT:40/100
ストレス:90/100
スキル
「拳突LV1」
ユニークアビリティ
「ティンカの加護」
「エビデンス魔法」
「マインドセット 経験値5倍」
「世界1便利な持ち運び倉庫【ユーキ・クラウド倉庫】」
「勇気の萌芽」
「久しぶりに見たけど、ちょっと中身変わっている! というか、俺、今7万6千近くしかHPないんだけど、もう死ぬ? 俺まもなく、死ぬの?」
「いや、あと7万もあれば死なないって。ほんとにも~。常にステータスに目を配っておいてね。心配すべきは勇者たちだよ。あと、そうじゃなくてね――」
ティンカのセリフを遮った。
「そうだ、勇者たちは隠れて――」
叫ぶ途中で、敵盾士にシールドアタックを仕掛けられる。
「これも避けるか。ばけものみたいな筋肉しやがって。全員でやるぞ」
余裕で回避するも、回避先に槍が伸びる。
こいつら、コンビネーションがすごい。
しかし。
相手は真剣に殺しにかかってきているが、動きがスローなのでどうしても型の練習のように感じてしまうぜ。
槍の柄をつかんで、殴る……、と拳がつぶれるんだっけ?
「てのひらの皺と顔の皺をあわせて、掌底!!!!!!!!!! 南無―」
槍ローブが吹っ飛ぶ。
浅い。
空中で身を翻した。おー。曲芸師みたい。
黒ローブ全員が俺の動きを見て、驚いていた。それぞれの獲物を握りしめ、力を込めていた。
そこに剣の二刀流が攻めてくるか――と思ったが、勇者たちに向かって俺の横を突っ切っていった。
させないよ。
「拳突!!!!!!!」
拳のオーラを二刀流めがけて飛ばす、が回避。
二刀流は、盾を構えたライラに突進していった。
「ぐっっっ……」
ライラが攻撃を受けきれず、後方に下がる。
マエが風の魔法を放つが、二刀流黒ローブは簡単に回避。
勇者が斬りかかるも剣で弾かれてしまった。
剣がくるくる、と宙を舞う。
勇者を助けに走り、二刀流黒ローブの前に立つ。
「みんな、隠れていてくれ」
「わかった」
勇者たちは先ほどの高台に避難する。
「ユーキ。さっきからいったいなにを――」
「全員でかかれ!!」
ティンカが叫ぶ声を黒ローブがかき消す。弓が上空から雨のように降ってきた。
ちっ。弓の上級スキル? 雨がやんだと思ったら今度は弓か。
バク転して回避する。
バク転して、着地したところに槍をついてきた。
そのまま、槍の上に乗る。
槍を蹴り抜いて鉄でできた本体を真っ二つにした。
「こ、こいつなんなんだ。俺の自慢の名工につくらせた槍を……。簡単に……」
はやく、勇者たちを助けないと。
先に邪魔な弓兵から倒すか。
弓が数本、飛んでくる。
身をかがめて、回避――したと思ったら、弓矢が俺に向かって下がってきた。
リモコン仕様、自由自在でござーい、かよっ。
瞬時に弓矢をつかみ、振りかぶって。
投げましたぁぁぁぁーーーーーーー。
これには驚いたと見えて、回避後、弓を構えるのに手間取った。
俺の全速力に盾士たちはおいつけない。
弓兵にようやく、潜り込み、 足払いした。
敵は空中をくるくる、と回った。
「おてての皺と、顔の皺を合わせて」
「掌底ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
大地が割れ、砂と小石が宙を舞う。爆弾が爆発したようになった。
弓兵は動かない。気を失ったようだ。
「なんて筋肉と動きだ。気持ち悪いぜ。いったいどれだけ鍛えたらあんなバッキバキの姿になるんだよ……」
黒ローブが賞賛か皮肉かわからないため息を漏らす。
後ろにいた盾士が突っ込んでくる。
拳を作って――。
殴るフリをして、跳び蹴りをかましますよ!
――と思ったら、わわ。小刀二刀流が突っ込んできて、はじめて、切られそうになる。
盾士がシールドアタック。肘でいなすも、その死角から、小刀二刀流が走り込んできた。さらにその死角に二刀流までやってきて……。
「や、やられる!!!!!!!」
目の前に、ナイフが。
そのまえに、羽が。
ティンカだ。
なにやっているんだ。ティンカ。俺の前に立つな。
白竜戦後の悪夢がよみがえる。
「やめろ、ティンカ、やめ……」
ティンカが、死ぬ。
いやだ、いやだ。
ナイフはすでに色気は壊死したゴアテックスの服を貫こうと……。
「わっっっっっっっしょい、せ~」
ばちこん、ってすっごい高めーの音が響きわたる。
ティンカが小刀二刀流の頬をぶったたいて、気絶させた。なんか口元から出てきた。泡吹いてやがる。
ティンカが高速で俺に振り返る。
「ティンカ、無事だったか……おまえ、つよ――はべし!!!!!!!!!!!!!!!!!」
手のひらが残像して見える。景色が回って、ぐるんぐるんに回されて、地上にたたきつけられる。
ティンカに、ひっぱたかれた!
「ぶたれた!!!!!! いったあ!!!!!親にもぶたれたこと――以下略。なにすんだ」
はっとして、俺は【客観認知】を唱える。
LV99 早乙女 勇気
HP:3/99999
「ひぃぃぃぃぃぃー。おいおい。3ってなんだよ! 俺のHP 7万6千はどこ行った。敵に一撃も喰らっていない。まさか、ティンカのひっぱたきで全部もっていったのかよ……」
「ユーキ!」
「はい!」
「ねぇ、エビデンス魔法は?」
「はっ! そうだった! 1年ぶりで忘れていたぜ」
「なにをちまちまと掌底したり、格闘技だけで戦っているの。私たちの本筋はそこじゃあ、ないんだから」
「ok、さっさとタイトルを回収しないとな」
天に向かって、ティンカが話す。
「お待たせしました、ようやくエビデンス魔法が解禁されます。どうぞお楽しみに」
「ティンカ、おまえ、だれとしゃべっているんだ?」
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