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14話 雨×ラブコメの覇道×ゴブリンの洞窟

 腕にぽつ、ぽつ、っと雨水が降ってきた。

 空を見上げると、黒い雲で覆われていた。

 

 

 やがて、本降りになった。

 雨のすこし甘やかな香りがする。

 

 雨に、濡れる? =服が透ける=エッチな展開=むっふふのふー?

 

 だめだ……。いけないぞ。いくら思春期全開の俺とはいえ、雨で仕方なく服が透けている女の子たちの姿を見るのは礼儀知らずだ、見てはいけないぞ、見てはダメだ絶対に見てはダメだ。

 

 くっ……。あらがい難し己が欲求の先に――

 

 ――テ、ティンカ!!!!!!

 

 羽から水がしたたる。ライラと別れた悲しみゆえか、アンニュイな表情がさらに雨により、強調されて、色っぽい。

 金髪の毛先から、泣きぼくろで雨がつたり、それが、ちいさな妖精にはけしからん……規模の凹凸の胸に落ちて。その先はこの大雨だから、当然、透けている――。


「ゴアテックスだよ~」

 ティンカは胸を張った。当然です。科学です。強いです。透けません。絶対に、ね。


「なに見てるの~。ユーキもゴアテックスのパーカーとか着てくればよかったね」


「いいんだ。俺は、雨は好きだった。科学も好きだった。でも、時に高度に発達した文明そのものに足を取られる我々人類。いったい俺たちはなんの為に科学を作ったのだろうと思案するよ。人のほんのすこしの悦びさえ奪いかねない科学というものは我々にとって、敵か、味方か、それ以外、か」


「あ~。はいはい、なるほどね~」

 ティンカがじと~と見つめてくる。にやにや、と。


「ヒロインはいっぱいいるんだし、雨もしたたるっていうしね~。ほら、見てみて」


おっ! ティンカ、わかってんじゃーんと指さすほうを見ると、髪から水がしたたり、それが頬を伝って、すっ、と肩に落ちる。肩には――。


 フルプレート! 金属! 透けない! 色気なし! あと、大事な情報ね。勇者じゃーん!


「なかなかでしょ~」

「たしかに目減りしたよ……。俺の幸せ。幸せは~歩いてこ~ない。だからー奪いかえすんだね~。返せ!!!」

「まぁ、冗談はさておいて、本命のご登場だよ~」


 いつも影のような人だった。けっして、その人の顔をだれも見たことがない。ハットからしたたる雨は、いつもその美しい造作を隠す為のアクセサリーさ。


 ハットから落ちる雨が胸にひたひたと落ちる。胸がいつもよりも過剰に膨らんでるように見える。そして、この大雨。フルプレートを着ていないその人は、大胆な透け透け現象が……。

 


 って、どうせ透けてないんでしょ? もうパターン読めているんだからっっ。イジワル! ちょっとほんのちょっとのラッキースケベぐらい経験させてくれたっていいじゃないバカ!!!!!




 ばかな? 透けてる? だと……?




 目をいつもの3.27倍凝らして見ると、マエの緑のローブがこんもりと膨らみ、その部分から赤いなにかがうすーく透けてた。



「ほほ~。これは、これは。たまらぬのう。じゅるり」

 ティンカが歓喜の声を漏らす。


 えっ、これはなに? ……下着かなにかって奴? マジで見て良い物なのこれは? だって……しょうがないんだ。雨が降ってるもの。


「ユーキ。一緒に道案内してよかったでしょう? ほら、鼻血拭いて、目に焼き付けておくんだよ~。一緒に拝もう。ありがたや~。それ、ありがたや~」


 俺、転移して、いちばんよかったって思ってます。


うほうほしながらガン見していると、マエの赤いなにかが上下して、すっごい動くのね。マエってこんなにグラマラスでしたっけ? さすが、大魔法使いです。おっきいです。


「ユーキ。あっしのここ……気になるのか?」

 マエは恥ずかしそうに、自分の胸を何度か見て、おずおずと俺を見つめた。また、胸が動いた。マエのオパーイは、もしや魔法で制御可能なのか。と……いうことは。あんーなこと。こーんなこと。いろーんなことが……。


「ご、ごめん……。俺、どうしても……」

「謝罪いただく必要は……みずくせぇなぁー。ユーキだって興味あるだろ? 気にならせるあっしも申し訳ない気持ちでいっぱいだ。これからも道案内してもらうんだ。ほら、見せてやるよー」


「ありがとうございます。ありがとうございます」

 ティンカと俺は19年連れ添った悪友同士、まったく同じセリフを吐いて、マエをあがめた。




 マエは服のボタンを、上からすこしずつ、はずしていった。




 マエの巨大すぎる胸が弾けるように上下する。





 俺はごくり、とつばを飲み込む。





 ティンカがマエの目の前まで飛び、特等席というか、これから顕微鏡で微生物をみましょうかねーといった至近距離に近づいた。





 欲望に忠実な方ね。私、嫌いじゃないわ。

 





 マエのはだけた無防備な胸から、赤い、情熱的な物体が表に……。あーらー。飛び出てきた。







 鼻から出る、鮮血に意識を奪われないように、鼻を押さえながら、目に溶接処置を施し、一生の宝にすべく、息を止めた。








 マエの胸から、赤い、ニックのあたまが出てきて、俺とティンカを見て、高く、鳴いた。







 俺と、ティンカも高く、泣いた。







「ふっざけんじゃねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」








「俺らが見たいのは、それじゃねーんだよ!!!!!!!!!!!!!!」





 マエに詰め寄るも、ニックが首をかしげ、マエも首をかしげたので、かわいいのでしかたなく許した。ニックかよ。だからオパーイがとてつもなく膨らみをもって、強調していたのね。



 くそくそくそくそくそ、くそぉ。今日の屈辱、絶対に忘れねぇ。



 ティンカが水たまりの地面につばを吐いていた。おいおい、お行儀の悪い妖精さんだぜ。気持ちは356%わかりみがすぎるー。

 

 よく見ると、マエのからだは胸の部分しか濡れておらず、ハットの下は微妙に魔力で覆われている。ティンカと同じぐらいの色気ないゴアテックスの防水力であった。


「なんでオパー……胸の部分だけ濡れているんだ」

 怒りや悲しみ、いろんな気持ちを押し殺して、紳士に聞いた。それまではけっして紳士ではなかったけれど。


「ああ。ずぶ濡れニックを胸に格納したら濡れたんだよー。内側からの防水って大変困難……難しくてねー」


 マエの口元がへらへらしているから、腹立ったけど、エッチ理論(エッチな気持ちになった方が負け)だと俺が悪いので、抑えた。




 と――。俺はもうひとりのヒロインを目で探した。

 ここにはいない、ライラのこと。

 えくぼがかわいらしく、この殺伐としたセカイでなく、学校とかで隣の席になりたかったよ。

 そして、雨の日に一緒に相合い傘で帰ってさ。その時、服がちょっと濡れてて……。



 あ……。ライラも……勇者と一緒だった。

 フル・プレートだった。

 透けない、ヒロインじゃん。



 みんな、透けない。俺だけだよ。びちょびちょなの。



「ふざけんなよ。俺だけが透けるセカイって誰得なんだよ。筋肉マッスル水透け裸体(男)に需要ある?」


「私はその乳首が透けてきて、乳毛も透けるか見てみたいなぁ~」


「ティンカ、きっさまー。その色気なしテックスが完全防水か試してやるー。ふはは。濡れろ、服溶けろー。ふはははは……やっぱり透けないのか……」


 ティンカと水たまりで水をかけあった。なにこれ。楽しい。女の子と、きゃっはうふふーできるだけで幸せだったよ……俺の人生。

 


 やっぱり透けませんでした。ティンカの防御力っていかほどー?

 

 

 

 勇者とマエは装備しているマントを肩から外し、雨具代わりにした。

 それでも、この強い雨では濡れてしまう。

 

「ユーキ。マインドフルネスにはこんな効果もある。試しにマントにかけて見てくれない?」

 

「マインドフルネス瞑想 LV3 デタッチメント!」

 ティンカの言うまま、魔法をかける

 

「マインドフルネス瞑想で、〈いまここに集中〉することにより、悩み、苦しみの反芻を切り離せるよ。

 それを応用して、マントに魔力を送り、からだを雨に濡れないようにできるよ。次回までにこれの応用をもっと考えておいてね~」

 

「ほー。これはすごい。エビデンス魔法、はじめて役立つと思ったぜ」


「だいたいの物語は外れスキルだと思ったものに、意外な使い道が見つかって、最強に至る、でしょう? エビデンス魔法も似たようなもので、外れスキルに見せかけた最強支援魔法なんだから!」

 

 

 勇者・マエ・俺では効果に差が出てくる。

 勇者はすぐにマントから水が漏れるようになったし、マエは魔力が高いことも関係しているのか、俺に匹敵する防水効果を発揮した。


「あっしはこんな魔法,はじめて拝見致し……見たぜー」

 マエのような大魔法使いにほめられるのは光栄だ。勇者はなにも言わず、俺の魔法を眺めるだけだった。

 

 

 夕方前には、さらに雨脚が強くなって、雨が煙るようになってきた。風も強く、マントが飛ばされそうになる。

 

 しかし、悪天候は味方でもある。こんな時にハンターウルフは狩りをしない。

 

 遠くで雷が鳴った。

 

 空も辺りも真っ暗で、どこを歩いているのかわかりにくくなった。

 

 雨水を水筒に入れて補給する。

 

 

 ライラは無事に帰れているだろうか。

 勇者は心なしか、ホッとしているように見える。ライラと一緒に行きたくなかったというのは本当のようだ。

 

 

 ぬかるみに足を取られるようになってきた。

 

 

 

「勇者様。天候が悪すぎます。この近くに洞窟があります。1泊して、明日の到着を目指しましょう」

 先を急いでいる為俺の進言が気に入らないようだった。

 足場が悪くなって危険にさらされるのは、俺も一緒なんだが……。

 

 急いでいるのはわかりますが、これ以上の道案内はできませんと強く言うと、渋々了承してくれた。

 

 

 

 崖のなかにできている自然の洞窟で、横幅はあるものの、奥行が10メートル程度しかない。

 奥は行き止まりだ。

 

 元々ゴブリンが使っていた洞窟のようだった。

 

 洞窟の入り口はすでに豪雨によって、水たまりができている。

「ここで一晩過ごす。明日の朝、雨が降っていても出発する」

 

 勇者の言葉に、俺たちはうなずいた。

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