表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/27

10話 女の子とキャンプできるってだけでファイヤーするよね? えっしない? うそ……でしょ?

3話の微修正を行いました。※この話(10話)ではありません。

わかりにくくてすみません。3話の前書きに詳細を記載してあります。


 うっすら霧は出ていたが、月夜により、かすかにその姿をとらえることができた。

 

 近づいてくる足音の正体は、兎だった。近くの茂みで様子をうかがっている。モンスターの影響か、足が異様に早く進化している。

 

 

 夜食にするため走る準備をしていると、マエが立ち上がり、ニックを宙に放った。

 

 ニックは翼をはためかせ、低空で飛んだ。気配に気がつき、逃げ出す兎を後ろからするどい爪でとらえた。

 

 ニックが、何度も高く、鳴いた。

 

 ライラが素早く近づき、腰のナイフで一刺しし、そのままさばいてくれた。

 

 俺とティンカはニックの背中を触ると、もう一度、高く鳴いた。


「よくやった。よーしー」

 マエはニックの口元にまたなにかをあげていた。



 夜食に豪華な兎の肉が加わった喜びも収まり、静けさを取りもどした。

 勇者はじっと火を見つめ、しゃべらない。マエはティンカとなにかをひそひそと話していた。


「あなたはすごい筋肉ですが、この山で道案内をして生計を立てているのですか」

 鎧を来たまま体育座りをしているライラから話しかけられた。

 

 あれ、いまの会話で筋肉と道案内、関連性がないのでは?

「ライラ。やめておけ。何度言わせるんだ。そいつと話をするな」

「あー。そういうつもりではなくて、その……。情報交換をしようかと……」

 

「勝手にしろっ!」

  勇者は吐き捨てて、背中を向け毛布にくるまった。


 いかんな。思った以上に敵視されている。俺が親の敵に似ているとか? それとも皆がいう、巨人族とやらに恨みをもっているのだろうか。

 俺、巨人ちゃうからね。

 ちょっとだけ、おっぱいとかが人よりも大きいだけだからねっっ。

 でも、男の子だから、巨乳属性も、ないの。

 生きてて、ごめんね……。



  遅くなってしまったがライラの質問に答えないとな。

「ああ……。道案内は今回が初めてなんです――」

  俺の話をさえぎり、ライラは手を振った。

「いいですよ。敬意を払う言葉など不要です。そんな大した人間ではないし」


「ありがとう。道案内はやったことがない。ずっと自給自足でティンカとこの山に住んでる」

「あんなに詳しいのに?」

 ライラは酒場での登頂会議のことをいっているのだろう。

 

 

 

 


 昨日。酒場の机にお手製の地図を広げ、アルゼン山脈登頂ルートを説明した。


「いちばん早くつきたいなら、中央ルートです。一日半で忘れずの森までいけます。ただ、敵が多い。ハンターウルフの縄張りでもあります。ただし、ゴブリンとハンターウルフは犬猿の仲なので、ゴブリンは出ません」

 

 質問はなさそうだ。説明を続ける。

「次は左側の迂回ルート。こっちは約二日間かかります。足場が悪く、この時期は雨も降りやすい。絶壁を進まないといけない場所があるうえに、ゴブリンとハンターウルフが縄張り争いをしていて、巻き込まれるとやっかいです。

 最後が右側を迂回するルートです。三日間かかりますが、モンスターが少ないルートです」

 

 勇者が地図全体を指さした。

 勇者の指は痩せていて、指先に土がこびりつき、擦り傷だらけだった。多くの死線を乗り越えてきたのだろうか。

 

「敵はその二種類だけか?」

「そうです。いまのところは……」


 勇者は怪訝そうに聞いた。

「いまのところ?」

「いまは発見できていませんが、今後出てくる可能性もあるということです」


「……モンスターと遭遇したときの手立ては? 戦う以外にあるか?」

「考えてあります」

 

 いくつかの案を、みんなに話した。



「これは全部アンタだけで調べたのか」

「いえいえ」

 ティンカに両手を向けた。ティンカは誇らしげに腰に手を当てた。

 

「こちらのティンカにも手伝って頂きました」

「ふむ。個人的に聞きたいのだが、こんなに細かく調べるコツは?」

「自らの臆病さ、と、そうですね……観察と仮説と検証の繰り返しです」

  

 勇者はあごに手を当てた。精悍な顔は黒く焼けており、いかにも戦闘力が高そうだった。

 

「観察と仮説と検証の繰り返し……とはあまり聞かない言葉だ。端的にいうと、どういうことだ」

「科学的に調べたってことです」

 

 

 勇者はアルゼン山脈にヒム人をさらった何者かが、一足先に忘れずの森方向へ向かったという情報を得ていた。

 急ぐため、最短の中央ルートを選択した。






 野営地の奥から遠吠えが聞こえる。

 ハンターウルフだろう。できれば遭遇したくない。

 

 

 ティンカとマエは仲良くなったようで、ティンカの木彫りの人形を一緒に見ている。友達ができてよかったな。

 

 俺は相変わらず、【世界中でひとりぼっち選手権】の優勝候補筆頭、でございますがね。

 

 

 俺はライラに気になっていることを聞いてみた。

 

 

 「どうして君は、勇者と共に、さらわれたヒム人の事件と関わろうと思ったんだ」

 

 

 

 勇者の背中がピクッと動いたのを見逃さなかった。火がパチっとはね、影が生きているように動く。

 それまで、穏やかな表情をしていたライラが突如、顔をゆがませた。

 

 

「――両親が2ヶ月前から行方不明で。私はこの事件に巻き込まれたと思っている。両親だけじゃなく、もっと多くの人が行方不明になっている。放ってはおけない」



 野営地の近くから虫が鳴く声がし、獣たちがうごめく音が聞こえる。



「あれ? そういえば、マエはどうして勇者に同行したんだっけ?」


 ライラが舌を出して、マエに聞いた。

 マエはティンカと話し込んでいた。とんがりハットのつばをこちらに向ける。ニックはマエの肩に乗っかっている。


「お忘れになるんじゃございませんこと……よ……じゃねーよ! 大きく育ったボケたナスですこと!!! あっしだって大事な人がいなくなって、その人を探しているのですわ……いるんだよー!」

 

 

 おー。ボケナスという言葉があるということは、このセカイには茄子があるのだ。食べたいなー。茄子の味噌漬け。



 そういえば、アルゼン村でも行方不明なのか、どこかに移り住んだのかわからない人が数人いた。

 ある日、急にいなくなって、家には服や家財が残されていた。

 そんな事件があることを知る前は、失踪したのかと思っていたが。


 ティンカがその事件に関わっているから、今回勇者と同行したということであっているのか?


 ティンカも色々と事情があるって言っていたけど、こうも秘密主義だとなにもわからないから困ったものだ。


「なにか手がかりはないのか? 事件について」


「わからないわ。私の両親はある日突然、いなくなった。一緒に暮らしているあいだは特に悩みとかはなく、普段と同じように暮らしていた。

ふたりして急に失踪するのはおかしい。今回ようやく事件の糸口をつかんだ。早く助けてあげたい……」


 炎は不吉に餌となる木々を炭へと変化させていく。


「サオトメは、ずっとアルゼン山脈を見てきたんだよね。不審な動きってなかった?」


 ライラに俺のことはユーキと呼んでくれと言ってから、考えてみた。

 そういえば、最近よく獣人族を見かける。前からいたが、最近は特に。

 見た目が狼男、犬男みたいなやつで怖くて近寄ることはしなかったが。


 しかし、獣人族はアルゼン村に行商に来るし、村人とも仲良くやっている。


「獣人族を最近よく見るな。ただ、前から山を歩きまわっていた。特にすごく怪しいというわけでは、ないな」

「獣人族、か。私のいた村にも行商や、冒険者として滞在したことがあるわ。強くて気の良い種族よね。獣人族が今回の誘拐に関わっているのか、はなんともわからないわ」


 ティンカにこのセカイの種族のことはすでに聞いたが、間違いがないか、ライラにも聞いておこう。


「この世界には、竜人族 獣人族 マジュール人 ヒム人(人間)がいるんだよな?」


「そう。獣人族とマジュール人は、すごく友好的な種族ね。私も何度か酒場で意気投合したことがある。竜人族はあったことがないわ。竜になることができる珍しい種族よ。世界に数十人程度しかいないとか」


 ライラが、弱ってきた火元に枝を投げた。


「ヒム人誘拐の犯人はまったく見当もつかないわ。一体だれが、私の両親を……」


 すっ、と影が伸びた。ゾッ、として顔を上げると、勇者が俺をにらみつけていた。手には燃やすための枝を持って。

「しゃべるな、って何回目だ。ケンカ売っているのか。この枝を口に突っ込んで、二度とその口をひらけないようにしてやろうか」

 

 ひぃぃぃぃぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ。

 俺は口を両手で押さえると、首を何度もふった。

 

 俺をにらみつけていた勇者はティンカを追い払って、マエとなにかを話している。

 

 ティンカ、しょんぼりしてる。こっちに手招きしたら肩に乗ってきた。

 マエと勇者からは、てき、味方、だれという言葉が聞こえてきたが、なにを話しているかはわからない。

 


 蚊の鳴くような声でひそひそと、ライラに聞いた。


「勇者は俺のこと、嫌ってるよね? なんか失礼なことした? 俺……常識ないから」

 常識もなにも、このセカイ来て1年ですからね! でも他に良い言い方が思いつかなかったんす。

 

 ライラは首をかしげた。

「……。ああ……。ごめんね。そんなつもりはないと思うわ。……あの人は、人見知りだから」

 

 いや。人見知りなんて言葉とは違うと思うぞい。俺、めちゃくちゃ嫌われているでしょうよ!


 ニックがマエの肩から激しく首をうごかしている。マエの指を噛んだ。


 遠くで雑草を踏む音が聞こえる。

 焚き火が爆ぜる音と同時に、暗闇の奥で小枝が割れる音がした。


 ――なにかが、くる。


 俺はライラの背中に隠れた。ライラがそこにはじめて、肥だめがあったことに気がついたような険しき表情をした。


 彼女は肥だめを見ていなかった。


 俺を、見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ