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オバサンが異世界で竜と無双  作者: 八意慧音
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モノづくり

「タルタロスのシステムにはこう言うのなかったのにな」


ゲームの中で園芸、採掘、漁師に分類されるギャザラークラスはあったものの耕地等を新たに作成するスキルはない。限られたデータ容量の中でこれ以上何やらやられたら困るのも解る。

運営の想定外の事をやり始めるユーザーはどこにでも居るのだし。あの発想はどこから来るんだろ。


ガリガリと木の枝で畑にする線を引く。中に入り、手のひらを地面に置いて耕耘をイメージして魔力を地面に流すと、ボコッボコっと地面がゆっくりと隆起し土が柔らかくなっていくのが目に見えてわかる。

石がある場合は作業ペースがゆっくりで石を砕きながら土壌を撹拌させていく。

元々の魔力量こそ少ないが、時間経過とともに回復をするのはゲームと同じ仕様で休みを少し入れるだけで作業が出来るのだ。

作業に夢中になり過ぎても寝なくてもご飯を食べなくても…水さえ飲まずとも平気。と言う仕様は町に着いても変化しない。行くとこまで極まった廃人スペックになった自分の体。

怪我をしてHPが減った時ご飯を食べるとHPが回復する。回復魔法でもHPは回復する。睡眠も必要ないとなれば実にやりたい放題である。

が、宿屋の女将マチルダに散々怒られ最低でも5時間の睡眠と2食は食べるようにしている。


この世界の魔法はイメージしたものをそのまま発露するらしい。魔法を覚える為に魔術書も販売しているが、極々稀に勝手に魔法を開発する人間が居ると言う。

言葉にする事でイメージを具体化させる事で大きな力を発揮する、言霊が宿るとはまさにこの事だ。

公式ファンブックも読んだがそんな設定はなかったし、ゲームに似た世界と考えたらいいのかもしれない。


厨二病全開の詠唱をしなくていいんだ、本当に良かった。40手前のオバサンが円環のーとか言い出したらもう……自分の中で立ち直れない。


魔法使いに代表される杖は魔機と呼ばれ術式を杖に付与し、付与した魔法を自動変換してくれる触媒だ。


生物からのエネルギー変換以外の魔法エネルギー源は魂石とクリスタルの2つ。

魂石は言葉の通り、生物の魂を魂石に蓄える事で小さな魔力を増幅させ大きな力出す事が出来る。

魂縛と言う付与魔法が掛かった武器で生物の命を奪った際に充填され、魂を使いきれたら効力が消える。獣の魂より人や巨人族、吸血鬼の方が大きい魂を持ち充填させられるらしい。

らしい。と言うのはまだ仕留めた事がないから。

魔機を付呪台に乗せて、自分が修得していない付呪の場合その魔機が壊れ代わりに付呪が自分のものになる。

残念ながら付呪台は貴重なシロモノで近隣ではヴァナ・ディールにしか置いてないと、出向で警備に当たっている兵士が教えてくれた。


クリスタルは自然現象を結晶化され封じられている。例えば大きい河川に行けば、湧き水が出てくるクリスタルが掘れる。雪山に行けば吹雪を起こせる、火山に行けば延々と熱を与え続けるクリスタルがあるという訳だ。

この2つの特徴は非常に解りやすく、魂石は他者を傷付ける攻撃魔法。クリスタルは生活を豊かにする「家電」に分類される生活用品に適している。

魂石でもクリスタルを使った機具と同じ効果は出せるが、出力が段違いの為わざわざ非効率にする必要も無い。

ポーションを作る傍ら魔法を練習し、ふと思いついたクリスタルを使用した生活用品を作ってみたら何故か成功してしまった。

元々作れる品物決まっているのだが、今は運営が指定した物以外作れる。

経験値稼ぎにもなるし、一石二鳥。

試作品として、井戸水の汲み上げポンプやキッチンやら冷蔵庫をマチルダに使って貰ったら絶句された。

保存方法は雪の中、塩漬け、高級品のコショウ。とかそんな環境に冷蔵庫が現れたらそりゃあ革命だろう。

中学で習う極々基礎的な回路図位しか理解してないが、今までの生活で使用してた家電を思い出しながら作っていたら作れてしまった。

詳細を求められても説明に困る。


閑話休題。

畑に人間や動物の糞尿を発酵させて堆肥にしたものを散布して、混ぜ合わせて畑作りは完成。

本来は動物ごとに分けて作るらしいが、私が作ったのは動物性堆肥と腐葉土などの植物性堆肥のざっくりとした2種類。

堆肥作りは最初町の人には白い目を向けられる作業だったが、堆肥を使った栽培が思いの外大当たりで収穫量が大幅に増えたらしい。

酪農家の人に頼んで、乾燥室を作りその中に動物の糞を入れてもらう。発酵した堆肥は麻布に詰め、倉庫の中に保管するだけ。

町の中で資源が循環して食料として還元されるので不満は出なかった。強欲な人は我先に利益を求めるもんだけど、この町の人達は実に必要以上の欲がない。自然の恵みを享受するには何事も節度が必要。金儲けの為だけに森を切りひらけば動物が住めなくなる。連鎖的に普段山から降りてこない熊が出て来て大惨事になる。過去やらかした先達の教えが今も息づく良い土地だ。


「ジェンド、お昼ー」


マチルダが宿屋の窓から顔を出し昼ご飯ができたと呼んでくれる。

マチルダはこの町アデレードの顔役で、若いながら町を維持している。昨年の収穫量を元に新しく税が決められるヴァナ・ディールでは、現金がなければ食料の他毛皮や麻、綿などの製糸産業に関わる素材、鉱石等も取引に応じてくれると言う。

周りを森に囲まれたアデレードは林業を主とし、鹿やうさぎ、イノシシを狩る狩人。小麦や野菜を育てる農家に鶏や牛を育てる酪農家、後は宿屋と酒場、よろずやに鍛冶師が居るコミュニティだ。

この町では薬師を生業としてる人は居らず、私がここに来た事でどの家庭でも薬が置かれるようになった。それを知ったヴァナ・ディールの首長が緊急時に備え薬剤の納品を税金代わりにして欲しい。と連絡が来たらしい。


「アンタがここに来てから面白い事が増えて飽きないよ」

「まぁ…首が落ちる直前でドラゴンに救われただなんて夢物語ってか狂ったかタチの悪いホラ吹きにしか見えんわな」


ドラゴンは伝説の生物で、狼少年よろしくドラゴンが出たと吹聴する人間はどこにでも一定数存在するらしい。

私の話が事実と認めてくれた背景には、この町でも数人目撃者がおりあの場に居たロイドも来たからしい。

彼らは組織立て直しのため早々に去っていったとの事だ。

クリスタルを使った製品が村人の生活様式を変えたのも理由の一つなんだろう。100年以上先の技術だし。

焼きたてのマルゲリータを食べながらマチルダを見上げる。


「アンタ、帝国やら義勇軍とかに狙われる前に冒険者ギルド登録しときな。今のままじゃ強硬手段取られた時に私達が何も出来ないしね」


私は自分が自分である証明がない。

現実世界でいえば、戸籍や住民票にあたるもの。不法入国者と言えばわかりやすい。

そんな私に有用性を感じれば、国の権限で勝手に私の戸籍を作ってコイツはうちの国の者だから。と身柄を拘束されるらしい。

冒険者ギルド登録を先にすれば言い訳出来る材料が出来ると言うわけだ。身分証明としては充分だし。


「商業ギルド登録もしといた方がイイけど、アンタの技術は独占しちまいたくなるもんだし頭が痛いね」

1度も楽をしてしまえば元の生活に戻れないのは世界が違えど共通らしい。

「他の鉱石とか欲しいし、冒険者ギルド登録して他の都市回ってみるのもイイかもね」

触れた技術は自分のモノとして習得出来るのなら行くっきゃない。私のせいで多分ゆうちゃんもこっちに飛ばされてるだろうし。

……何でマチルダは呆気に取られた顔をしてるんだろう。

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