学校一の美少女が俺だった件
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俺、花咲海は恋をしている。
今は高二だが、ずっと片思いをしていた。
誰に恋をしているかって?
それは、
『放課後、教室で待ってて』
それだけ書かれた手紙を波打椎羅に渡された。
そう、俺は波内さんに恋をしている。
それが偶然にも手紙を渡された。
俺は今まで、波打さんに一ミリも声をかけることができなかった。
なぜなら、
「おい、隠キャ!」
俺は周りからは隠キャと呼ばれている。
別にいじめられているわけでもないし、呼び方なんて好きに読んでくれていい。
が、こんな奴がもちろん声をかけれるわけがない。
波打椎羅は艶のあるストレートヘアにぱっちりとした目、容姿、スタイルにも恵まれている美少女だ。
そんな子を周りの男子は放っておくわけがなく、告白されるも全て振っているらしい。
そんな人に俺は向こうから話があると言われたのだ。
放課後になり、教室では二人きりとなった。
教室の外では、ほぼクラス全員の男子が野次馬のように見ている。
どこか風の噂でも嗅ぎつけてきたのか。
しかし、今はそんなことはどうでもいい。
長年、片思いしてきた人が今、俺の目の前にいるのだから。
「……手紙読んでくれた?」
「う、うん」
「……何で呼んだか分かる?」
「まぁ、大体は」
「ずっと前から好きでした! 私と付き合ってください!」
「は、はっ、はい!」
分かっていたことでも、いざ言われると緊張する。
「ぷっ、あははははは!」
波打さんは突然笑い出した。
「ど、どうしたの?」
「ごめん、ごめん。まさか、本気にするなんて思ってなかったからさ」
教室の外からは陽キャたちが入ってきた。
「夢が見れてよかったな、隠キャ! 告られたときの反応、モゾモゾしてて見苦しかったぞー」
陽キャたちが笑いながら言った。
「……嘘、だよね?」
俺は波打椎羅の顔を見た。
笑っていた。
「はぁ? 誰がお前なんかに告るんだよ」
そう言われショックだった。
初めての失恋だった。
俺はあれから、下を向きフラフラとした歩き方で落ち込みながら帰った。
「あぶなーい!」
突然、女の子とぶつかった。
「痛っ」
「ごめんなさい!」
そう言われ、手を繋がれた。
「あの、何でしょう?」
「早く逃げて!」
状況が理解できなかった。
そのまま引っ張られ、一緒に逃げた。
かなりの距離を走った。
「ふー、ここまでこれば大丈夫」
人の少ない場所に来た。
それにしても、あれだけ走ったのに彼女は汗をあまりかいていなかった。
俺は大量にかいた。
「どう言うつもりですか?」
「ごめん、ごめん」
彼女が俺に振り向いたとき、なぜだか見覚えのある顔だった。
この顔は確か、
「もしかして、みぃちゃん!?」
識名美井菜。愛称はみぃちゃん。
国民的アイドルであり、誰しもが憧れる美しいルックスにモデルのようなスタイルで圧倒的人気を誇るアイドルである。
どうしてそんなお方がこんなところに?
「私のこと知ってるの?」
「知ってるも何も、超有名じゃないですか!」
「だったら、私の正体も知ってる?」
「正体?」
俺はそこまでアイドルを熱狂的に見ているわけではない。
だから彼女の正体も、もちろん知らなかった。
「私、男なの」
「え、え!?」
「驚くよね」
そりゃ、こんな可愛いルックスで男ですと言われたら、驚かないわけがない。
「ファンにそのことがバレちゃって、追いかけられてたの」
「……そうだったんですか」
「だからね!」
識名美井菜は俺の両手を優しく握りながらこっちを見た。
「一緒に逃げてほしいの!」
「そんなこと言われましても……」
「あなたなら安心できるの!」
「……そんなの分かりませんよ?」
「人目見て分かったわ!」
「はぁ」
彼女は目をキラキラさせていたが、国民的アイドルがこんなにも無防備でいいものなのかと思った。
よりによって、どうして俺みたいな一般人にそんな頼みをするのか分からなかった。
それでも、このまま放っておくのも無理があるので助けることにした。
「仕方ないですね」
「本当に!? 嬉しい!」
識名美井菜は満面の笑みを見せた。
とりあえずは俺の家に避難することにした。
幸い、親はいなかったのでアイドルを連れてきても特に何も言われなかった。
「お邪魔します」
「どうぞ」
俺と彼女は家に入り、とりあえずは椅子に座ることにした。
それから、ホットミルクを飲みながら話をした。
「どうしてアイドルになろうとしたの?」
あまりにデリカシーのない質問だと言った後に気がついた。
「言いたくなかったらいいよ」
訂正した。
「私ね、昔テレビで見てアイドルに憧れたんだ」
理由は意外にもありきたりなものだった。
彼女は話し続けた。
「それでもね、男だから一度諦めたの。でも、諦め切れなかった。だから、女の子だと偽ってアイドルになったんだ。ファンには申し訳ないことをしたな」
切なそうに言った。
「だけど、バレたからには逃げなきゃ。いつ襲われるか分からない」
「襲われる?」
「ファンの中には私のことを狙ってる人がいるの」
「まじかよ」
と思った。
一夜を過ごし、あっという間に朝がきた。
気分転換に二人で外を出ることにした。
こんな早朝だ。襲われることなんてないだろう。
「んー、気持ちいー!」
彼女は背伸びをする。
「そうだね」
俺の後ろに人の気配がする。
ただの通行人なのか、識名美井菜のファンなのかは知らない。
嫌な予感がした。
俺が勘付いたと同時に識名美井菜に襲いかかる。
それでも、襲いかかった人はスキだらけであった。
俺はタイミングを見計らい、顔面に蹴りを入れる。
「がはっー!」
当たりどころは完璧だった。
「な、何!?」
そこで初めて彼女は気づく。
「もうすぐで襲われるところだったんだよ」
「助けてくれたってこと?」
「まぁ、そうなるかもな」
彼女は何回も俺にありがとうと伝えた。
顔が近かった。
「あれ? よく見ると、可愛いね!」
「俺が?」
「うん!」
「目がぱっちりしてて、女の子みたい! アイドルになればいいのに」
「襲われるからやだ」
「男の子だもんね」
彼女はあははと笑った。
「それにしても強いんだね!」
「昔、格闘技やってたからな」
「す、凄い」
人を殴る、蹴るなんてアイドルには無縁なことだ。
次はいつ襲われるかも分からないので、仕方なく家に戻ることにした。
今日は休日だったので、室内で共に過ごした。
日にちが過ぎ、学校が始まった。
識名美井菜はいつの間にか消えていた。
「さよならぐらい言えよ」
と呟いた。
学校に着いても普段とは変わらない。
「おはよう!」
どうして識名美井菜がいるんだよ。
せめて変装しろよ。
どうやら最近この学校に転校してきたらしい。
隠キャな俺は情報網がないため、全く知らなかった。
「お、おは……」
「おい、隠キャがどうして、みぃちゃんと話してんだー?」
おはようと言う途中に陽キャたちに絡まれた。
「私たちカップルなの!」
「は?」
識名美井菜は俺の腕を組む。
「ぷっ、ぎゃはははははは!」
陽たちは笑った。
「オメーみたいなのがみぃちゃんの彼氏? 国民的アイドルだぞ?」
「本気だからね!」
識名美井菜は拗ねるように頬を膨らませた。
可愛かった。
これは夢に違いない。
そう思い、自分の頬をつねった。
痛かった。
さっきまで笑っていた陽キャたちの笑顔はもう消えていた。
真顔だった。
「同棲もしてるんだよ!」
識名美井菜はさらに追撃をかます。
もうやめてあげればいいのに。
陽キャたちは何も話せなくなってしまった。
が、一人の陽キャが勇気を出したのか俺に言う。
「お前みたいな隠キャ男に彼女なんてできるわけねーだろ!」
はぁ、なんだかもう隠すのは疲れた。
話してしまおう。
「言い忘れてたけど俺、女だから」
「……まじかよ」
陽キャたちと識名美井菜はもちろん唖然としていた。
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