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兄さんは私の嫁  作者: 揚羽常時
兄さんは私の嫁
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魔術の理論


「えと……ここでマジックトリガー……そう呼ばれる観念が存在します……」

「?」

「ってなりますよね……」


 玉露をコクリ。見事な山桜を見ながら。贅沢な話だ。


「えと……銃に於けるトリガー……コレを引くと……銃弾が飛び出しますよね……?」

「だぁな。マジックトリガーは魔術に於けるトリガーか」

「はい……」


 コックリ。頷かれる。


「では……トリガーを引くことが……銃弾の発射の因果でしょうか……?」

「正確を期すならハンマーで雷管を叩くのが実質的な原因では? もうちょっと述べると火薬の炸裂」


 アリスも素早く読み取った。この辺の柔軟性は、たしかに愛妹の美点だ。あとおっぱいの柔らかさも。


「ですから……その前後即因果の誤謬を指して……現代魔術では……マジックトリガー……と呼ぶわけです……」

「前後即因果ね」


 知っているのか雷電。いや俺も知ってるが。


「えと……で……」


 手の平を上に向ける綾花。


「――我ここに願い奉る。灼火――」


 さっきと同じ魔術を発露した。


「えと……因果関係の少ないトリガーを引いて……熱力学無視の現象を再現する……これが魔術と呼ばれる御業です……」

「誰でも使えるの?」

「その気になれば……」


 またしてもコクリ。


「でもマジックトリガーの論理から察するに呪文じゃなくても良いわけでしょ?」

「えと……場合によって……儀式の如何は問いません……。マジックトリガーは……あくまで副次的な物……。であれば……トランスに導ける条件付け……ということです……」

「なるほど」


 ジトッと湯飲みの玉露に映ったラブリーな顔を覗き見るアリスでした。


「分かったのかよ。いやまぁ確かに分かりやすい授業ではあったが。とするとトランスセットさえどうにか出来れば魔術は発動するのか?」

「えと……はい……。イメージ通りに……世界を彩色するのが……魔術ですので……」


 世界の彩色と来たか。


「私も魔術を使いたいです!」


 ピッと挙手。アリスとしては面白半分だろう。もう半分は俺への理解で良いのか? 俺の治癒も魔法なら……確かに彼女が欲するのは自然と言えた。いや……でもなぁ……聞く限りでは脳味噌ぶっ壊す術理が必要なんだが。その辺を聡いアリスが分かっていないはずもなかろうに、それでも魔術師になることを彼女は望んだ。


「えと……その……」


 あわあわと綾花。


「本気で言ってます……?」

「ガチもガチ。兄さんだけズルいって思ってた処です」


 ほほう?


「場合によっては……人格が破綻するんですけど……」

「最初から破綻しているようなモノですし」


 呪詛関連でな。心身に作用する呪詛だ。その気になればアリスの自我なぞ食いつぶしてしまうだろう。そこに於いて屈強な意思を持つアリスは呪詛持ちでありながら、鬼に落ちない逸れ物だった。いや~、さすがにお兄ちゃんもドン引きです。


「てなわけで綾花。教えてください」

「えと……教える……というほど複雑な手法は……要らないんですけど……」

「?」


 首を傾げるアリス。


「まずパワーイメージを決めましょう」

力ある想像(パワーイメージ)?」

「えと……魔術を発露する場合の指針です……。四大元素や五行相剋……十二星座にルーン魔術……神性の具現や神話の再現……。オリジナルで魔術を使っても良いですけど……一般的に神秘思想に寄った方が……効率は良いですね……」


 なるほどね。


「綾花のパワーイメージは何なんだ?」


 俺が尋ねた。火鬼……なら将棋か? だが灼火は炎を生みだしたよな?


「拙の場合は……業界では一現ひとうつつ……そう呼ばれています……」

「一現?」

「属性を一点に集中させることで……あらゆる神性を取り込む……パワーイメージです……」


 つまり何だってばよ?


「えーと?」

「火の属性……。火の神性……。火の一現……。であればカグツチやスルト……アグニにプロメテウス……クトゥグアに朱雀……ありとあらゆる火炎の神話を再現します……」

「そゆのもアリなのね」


 うんうんとアリスは頷いた。納得したのか怪しいところだが、理解はしているだろう。其処は俺も疑問視していない。いや、別に疑ってどうこうでもないのではあるにしても。


「とりあえず……呪文を……マジックトリガーにしましょう……」

「さっさーい」


 其処に否やはないらしい。


「えと……魔術を扱うにあたって……まず必要な儀式は……二つあります……」

「二つ?」

「魔力の入力と……魔力の演算です……」

「入力と演算。つまり魔術を出力アウトプットするために入力と演算が必要ってこと? コンピュータの話ではなく? 変数処理とか必要な感じ?」

「さほど高度な技術は……必要としません……。単純に……力の調達と運用とでも……思っていただければ……えと……」


 あわあわと綾花。人と話すことに慣れていなさそうだ。なのにさっきから喋りっぱなしである。悪いことをしている気分になるのはなんだかなぁ……。


「拙の場合は……魔力の入力に『我ここに願い奉る』という呪文を採用し……そこから望む現象を演算の呪文とします……えと……例えば……」


 しばし悩んで、


「――我ここに願い奉る――」


 魔力の入力。


「――火鬼――」


 そして魔力の演算。出力。火炎を纏った鬼が現われた。


「火鬼っ」


 アリスも知っているらしい。周囲を燃やし尽くす将棋の駒だ。


「こんな感じで……魔術を使います……」

「なるほど……」

「一応手っ取り早いのでエア仮説を採用しているんですけど……ケイ仮説でも……問題はありません」


 なんじゃらほい?


「エア仮説? ケイ仮説?」

「魔力の入力に必要な……魔力とはなんぞやの……思考を指します……」


 はふ、と綾花。


「喋りすぎて……喉が渇きました……。お茶のお代わり……」

「綾花様。畏れながら、そろそろお昼を取られては」


 式神の使用人がそう勧める。


「そんな時間ですか……。では三人分を……。御当主様は……いないんでしたよね……?」

「え。そう伺っております」

「何だ? 飯奢ってくれんの?」

「石焼き麻婆豆腐の……お返しです……」


 そう言って綾花は穏やかに笑った。ソレだけ見ると美少女だよなぁ。


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