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兄さんは私の嫁  作者: 揚羽常時
兄さんは私の嫁
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魔術研究会


 放課後のこと。俺は死袴綾花しばかまあやかに声を掛けるために席を立った。その綾花と言えば、そそくさと教室を抜け出していた。誰も気にしない。人避けのおまじないを掛けているとは本当らしいな。そうでもなければアリスと同等程度には人気者だろう。別段其処は良いんだが。


「観柱さん。一緒に帰らない?」

「クレープ屋さんが新しく出来たって」

「うちらと付き合わない? 普通にイケてるっしょ?」

「俺と一緒に甲子園目指そうぜ!」


 最後の言葉はジョークだと思いたい。


「野球には興味がない物で」


 サラリと受け流す愛妹でした。


「兄さん。お疲れ様です。帰りましょうか」


 妬み嫉みの視線がグッサグッサと刺さっているわけですが。時折恋慕も混じったり。俺もそこそこには顔の造りが良いらしい。客観的にそこは認めている。もっとも不幸を広げないためにアリスの傍に居るのがデフォルトなんだが。帰宅のために教室を出る。


 途中で図書室に寄った。普通に部活棟が見える。


「それにしても何だかな」

「? どうかされましたか兄さん?」

「綾花は部活に入っているのか?」

「そう聞きましたね」


 昼休みの食事の時に。


「兄さんは気になるんですか? 他の女子のことが」

「アリスほどでは無いにしてもな」

「いやん」


 やんやんと頬に手を添えブンブンと頭を振るアリス。超絶可愛いけど、胸元の脂肪までタユンタユンに揺れるのだから目の置きどころが眉の下。


「ちょっと探ってみるか」

「何をでしょう?」

「何をだろう?」


 それは俺にも分からない。普通に帰宅部の予定だったのだが、綾花の部活は興味を引いた。別段、綾花を狙っているわけではないも、有る側面では嘘になる。


「部活棟な……」


 そちらの棟に足を踏み入れる。しばらく階段を上がって、綾花の見える教室を逆算から割り出して、その部屋の前に立つ。


「アリス?」


 見ればアリスはいなかった。はぐれた……にしては、そこまで迷宮なはずも無し。そもそも俺の三歩後ろを付いてきていたのだ。見失う方が難しいはず。部屋のプレートを見る。


『魔術研究会』


 なるほど。魔術師にはピッタリの部活動だ。コンコンとノック。


「どうぞ……」


 声が掛けられた。綾花の声だ。


「失礼します」


 素朴な部屋模様の中にアルビノの美少女がいた。


「よ」

「まさか結界を破って入ってくるとは……本当に人間離れしていますね……ヨハネは……」

「いやぁ」

「褒めてません……」


 知ってる。で、結界を張っていると。本人と同じ人避けの物だろう。


「何ゆえ結界を?」

「他人は邪魔ですし。一人に為りたい空間も必要で」


 それは失礼をば。


「いえ……意図して結界を破れる能力者なら……幾らでも歓迎しますけど……」


 それは重畳。スマホが鳴った。アリスからだ。


「兄さん。今どこですか?」


 そんなメッセ。


「図書室で待ってろ。後で向かう」


 そんな返信。


「それで魔術研究会って魔術を研究するのか?」

「えと……、魔術の研究自体は……何処ででも出来ますし……」

「そんなものか?」

「奇門遁甲の陣……。その実験……一つの側面ではありますね……」

「奇門遁甲な……」


 知ってはいるも。


「それで要件は……?」

「単なる興味」

「アリスさんが……怒るのでは……? アレはアレで……嫉妬深そうでしたけど……」


 ザッツライト。


「普通に地雷ではあるな。フラグを踏んだらさようなら」

「で……拙が……害されると……」


 かもな。俺に異性が近付くことを、アリスは極端に畏怖し、過敏に反応する。


「お前なら返り討ちに出来るだろ?」

「そうは申しますけど……」


 炎を操る魔術師。その破滅性は既に見た。


「結局どういう理屈なんだ?」

「えと……ソレについては……また今度……」


 逸ってもしょうがないか。呪詛から免れるなら、一応重要視はすべきだろうがな。


「今度……我が家に招待しますよ……」

「結界を張ってあるのか?」

「ソレは無論」


 無論なのかよ。いやまぁ魔術師を自称するくらいだから当然ではありしも。実際に部室も奇門遁甲をかけているわけだし。


「今度の休みにでも……」

「じゃあメッセのIDを交換するか」


 そんな感じでそんなわけ。俺の電話帳に新しい名前が加わった。


「ところで人避けのおまじないはやめないか?」

「何故に……?」

「お前なら大人気間違いナシだぞ?」

「面倒ですから……。人とのしがらみなんて……」


 あ。拗らせてるなコイツ。


「魔術師としてか? 綾花としてか?」

「えと……後者ですね……」

「重症だな」

「自覚はありますよ……」


 それもどうだかな。たしかに俺も下心有りきで迫られると良く思えないのは十分に分かる。けれども友達くらい作ってもよくないか?


「シスコンに言われたくは……ないわけですけど……」

「うーむ。それは完全な論破だな」


 頭の下がる思いだ。いや使い方間違えているけども。ペコペコ頭が下がるの意。


「じゃあ次の日曜にでも予定を立てるか」

「えと……はい……」

「友達がいないならスマホで何してるんだ?」

「ソシャゲ」


 御納得。

 魔術師もソシャゲをするのな。それだけでも大発見だった。


 オンマカシリエイジリベイソワカ。


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