漫才「鳩と鳩による漫才」
二匹:はいどうも、よろしくお願いします。
白鳩:白鳩と!
黒鳩:黒鳩で!
二匹:伝書バトブラザーズというわけで、よろしくお願いします。
白鳩:ちょっと黒鳩くん。
黒鳩:なんだい白鳩くん。
白鳩:今日は折り入って頼み事があるんだけども。
黒鳩:折り入ってとはまた神妙な。
白鳩:あっ、ちゃんと謝礼品も持ってきたんだけども。
黒鳩:わぁっ、モノで釣ろうとしている。
白鳩:そういう意味じゃないんだ。
とりあえず受け取って欲しいんだ。
黒鳩:うん、受け取ることは受け取るよ、当たり前だよ。
もらえるモノは病原体以外は全部もらう、それが僕だからさ。
白鳩:……じゃあ渡さないほうがいいか。
黒鳩:病原体なのっ?
白鳩:冗談、冗談。
はい、どうぞ。
黒鳩:何だろうなぁ……ハトサブレかぁ。
白鳩:どうだい、共食い気分を味わえるとはまさにこのこと。
黒鳩:そうでもないよ、これはどう見ても結果サブレにしか見えないから全く味わえないよ。
そもそも味わいたくないよ。
白鳩:じゃあいらないのかい?
黒鳩:いやだから共食い気分を味わいたくないだけで、これはこれでおいしく頂くよ。
白鳩:いただっく……というわけだね、ダックなだけに。
黒鳩:いや僕ら鳩だから。
それはそうと、お願いとはなんだい。
白鳩:実はね、僕、一度でいいから電車に乗ってみたいんだ。
黒鳩:なるほど、じゃあ人間に飼われるといいよ。
白鳩:えっ?
黒鳩:だから人間に飼われればペットとして乗れるんじゃないかな。
さぁて、帰って、ハトサブレでも食べようっと。
白鳩:ちょっ、ちょっと!
黒鳩:なんだい、僕はもう口の中がヨダレ一色なんだ。
白鳩:待ってよ! ここからコントの流れじゃないか!
黒鳩:いやもう家に帰ってハトサブレでビールを一杯の流れだよ。
白鳩:ビールとかどうでもいいよ!
とにかくコントに入るから!
黒鳩:嫌だよ、面倒だよ。
白鳩:そのためのハトサブレじゃないか!
黒鳩:えっ? コントにハトサブレを使うの?
白鳩:そういうことじゃないよ!
黒鳩:あぁ、コントのくだりはサクサク簡単に終わらせようということか。
白鳩:全然違うよ!
黒鳩:粋だねぇ。
白鳩:話を聞いてってば!
そのハトサブレを受け取るということは、僕の言うことを聞いてくれるということじゃないかなぁ!
黒鳩:……いや、億単位の金は用意出来ないよ?
白鳩:用意しなくていいよ!
電車に乗るコントパートをして欲しいだけだから!
黒鳩:じゃあ億単位の金を用意するよ。
白鳩:何でそっちのほうが楽なんだ!
黒鳩:だって僕ら伝書バトじゃない、伝書活動で稼げば楽勝だよ。
白鳩:そんな伝書バトって儲からないよ! 収入は豆で受け取るし!
黒鳩:とにかくコントパートとか無理だよ、無理。
白鳩:簡単だよ!
僕が電車に乗ろうとする! それ黒鳩くんが難癖つけて止める! これでコントパートの完成だよ!
黒鳩:いや待ってよ。
白鳩:どこが不満なんだい。
黒鳩:何で乗ろうとするのに、僕が止めるんだい。
乗るコントをしたければ、そのまま乗っていればいいじゃないか。
白鳩:それじゃ笑いが生まれないじゃないか!
黒鳩:いや、仮にやるとしても乗りたいという気持ちを尊重したい。
白鳩:むしろ僕は笑いが生まれるほうを尊重して欲しいよ!
黒鳩:いやでも乗りたいんでしょ? もう分かったよ。
じゃあ乗ってよ、やるやる、だから乗ってってば。
白鳩:……まさかこれはフリで、僕が乗ったらちゃんと難癖つけてくれるのでは……!
黒鳩:早く乗りなさいってば。
白鳩:さぁてと、電車に乗ってみようっと、鳩なのに、鳩なのに。
黒鳩:……入りましたね、ではドア締まりまーす。
白鳩:鳩なのに、鳩なのに、乗っちゃったけども、乗っちゃったけどもぉ?
黒鳩:えぇー、ご乗車有り難う御座います。
白鳩:鳩なのに、鳩、鳩……。
黒鳩:……えっと、快適な旅的なヤツを、何かこう、お届けする的な、その、うん、そういう感じです。
白鳩:笑いが生まれるポイントがおかしいよ!
黒鳩:えっ? ちゃんと笑いのほうも尊重したじゃないか。
白鳩:違うよ! 車掌が口下手とかそういうボケいらないよ!
鳩が電車に乗り込んじゃっているところを処理してよ!
黒鳩:えぇー、面倒だなぁ、そろそろ家に帰っていいかい?
白鳩:もう勝手にしてよ!
黒鳩:じゃあ、さようならー、バサバサーっ。
白鳩:ほ、本当にいなくなっちゃうのかよ! もういいよ!