悪い噂の先輩
「初めまして、さっき冒険者登録した清だ。俺たちに冒険者のイロハを教えてくれ」
「同じくさっき冒険者登録した娘のルインですよろしくお願いします。」
見慣れない男と少女が話しかけてきた。この人たちは私がどういわれてるか知ってるのだろうか?私の視線に気づいたのだろう。娘と名のった子が口を開いた
「あなたについてはある程度効いてます。なんでも担当した後輩が全員1週間以内に行方不明になっているとか。」
「なら、どうして?」
「関係ないからです」
は?
「私たちにあなたがどういう噂されているかは関係ありません。私たちは自分の目で見た事実のみを信じますので噂なんか私たちは気にしませんしね。」
「でも、私があなた達を攫って奴隷として売るかもしれないのよ?第一、私が担当した後輩は何人も行方不明になってるし。」
「そん時はそん時だ。」
最初に名のった男が口を開いた。さっきの子が娘と言っていたのであの子の父親だろう。
「何か起きても対処すればいい。危険なんか何度も経験しているしな。」
「で、でも」
「俺は鉄の剣を頭突きでへし折ったことあるしな。それにこいつのスピードは見切れても普通避けられん。第一、自分から犯罪に関係してるやつはそのことを忠告しない。そんなことより冒険者のイロハを教えてくれ。」
男は有無を言わさない視線で強引に話を終わらせて最初の部分に戻ってきた。彼らはその身に降りかかるかもしれない災難をほとんど気にしてなかった。むしろ、男はともかく少女の表情を見る限り落ち込んでる私を心配している感覚すらあった。彼らのペースにのまれて教育を受け入れようとした時
「おいおい、お前らこいつに教えを乞う気か?止めとけ止めとけ。こいつに教わるとな碌なことがねぇぞ。」
近くにいた。細っこい男が彼らに忠告した。
「こいつの教えた冒険者がどうなったか知ってるか?全員一週間以内に行方不明になってるんだよ。お前も同じ目に逢いたくなかったら・・・」
「知ってる」
「は?」
「知っている。彼女の噂も全てな。だが悪いが俺たちは自分の目で見た事実にのみ信じるんだ。噂は噂だ。それ以上でもそれ以下でもない。誰かも知らない奴が体験した訳でもないのに断片的な情報だけで判断している。それだけさ。第一、彼女の教えた冒険者が1週間以内に行方不明になったとして、それに彼女が関係していた証拠はどこにもない。それだけだ。」
「だ、だが・・・」
「『疑わしきは罰せず』それが地元の法律方針だ。第一、鉄の剣を頭突きでへし折る俺と超加速で動くこいつを害せる存在なんてそうそういない。いても人さらいなんてちんけなことをするメリットがない。普通に騎士として雇われれば食っていける。」
「っち、こちとら親切心で忠告してやってんのによ。」
そう言って細っこい男はお酒を売っているカウンターへ向かった。
「貴方の忠告はちゃんと聞いてます。単純にすでに知っていてその内容を脅威とは考えなかっただけですのでお気になさらず。」
追撃とばかりに娘さんが事実を男に突き付けた。
「で、話を戻すが俺たちに冒険者のイロハを教えてください。先生!!」
せ、先生!?何だか、嬉しい・・・最近ネガティブな方向に思考が向きかけていたから・・・
「わ、分かったわ。それじゃあ、まず薬草の採取依頼からしましょう。」
声が興奮で上ずらないようにものすごく気を使った。