( ̄* ̄ )‹ショッパイ…アジモココロモ
「ドスン」
「グエ!?」
牛鬼との激闘を繰り広げた翌々日、俺はルインと桜に布団ダイブされダイナミックに起こされた。
「おはよう、お父さん」
「お、おはようございます、キヨシさん・・・」
見るとルインは悪戯が成功したような顔をし、桜の頬は僅かに赤くなっている。
十中八九ルインが提唱者だろう。桜は巻き込まれたのか。
「おはようルイン、桜。早速だがルインには説教タイムだ」
「朝食の後じゃダメ?」
ルインの発言を無視し、1時間ほど説教する。
桜にはその間刀状態になってもらい、空腹を紛らわさせた。すまん桜、もう少しで終わるから。
さらに一時間後、俺は朝食をとるために宿の食堂へ向かう。
部屋の窓から太陽の高さを見た所、もう10時だろう。
これは朝食ではなくブランチというべきだろうか
「あ、お父さん、朝食にこれ使って。」
そう言って、ルインは亜空間から肉塊を取り出す。
何だこれ?豚肉か?
「これ猪肉。朝食に食べたいわ。」
この肉を!?だいぶ臭いがきついんだが・・・・
「昼食じゃダメか?この肉、だいぶ臭いが強くて、濃い味付けじゃないと臭みが消えそうにない。」
「イヤ!!昨日からこれ使った料理食べたくて我慢してたんだもん。」
「昼まで待て。」
「町を大火事にするわよ。」
笑顔で怖いことを脅迫してくる。
「そんなことしてみろ。俺は桜を連れて逃げるぞ。」
「あら?お父さんにそんなこと出来るの?少ないとはいえ、この町には既にある程度関わった人たちがいるでしょ?お父さんに彼らを見捨てられる?」
完全に悪役のセリフだ。
確かに基本的に知り合いを放っておけない清に対し、ルインはかなり淡泊だ。例え知り合いが危機に陥っていてもよほど親しくない限り積極的に他人を助けようとしないだろう。
今では彼女が助けようと思えるのは清や桜、贔屓目に見てもスプリウム帝国にいるアインだけだ。これが人と神の感覚の差異だろうか、ルイン個人の感覚かは分からない。どちらにせよ、現在清にこの状況を打破する手段はない。
「・・・分かった・・・」
結局、清の性格の弱点を的確に突いたルインが勝利し、清は臭いの強い猪肉を料理する羽目になった。
「というか、今更だがお前、前に俺が特産料理を食べようと誘ったら呆れてなかったか?」
「それはお父さんのテンションと麺類に対する情熱に呆れてただけ。」
俺からしたらどっちも同じに感じるんだが・・・
面倒な思考よりも先にエネルギーを摂取することを優先した清はそれ以上考えるのをやめ、猪肉の方に集中し始めた。
(・・・この量は、さすがにルインだけじゃ食えないな・・・)
猪1頭分の肉塊はかなりの量がある。ルインのZone(空間)は空間を操るだけで時間は操れないため、この量を1度で食う必要がある。と清は判断した。実際のところ、清のストレージやEternal(永遠)を併用したZone(空間)を使えば普通に1年以上もつが、この時の清は寝惚けてたのと、1日何も食べていなかったのもあいまって冷静な思考は出来ず、ひたすらどうやって全て消費するか、どう料理するかを考えていたため思いつかず、結局食後に思いついてルインに揶揄われるのだが・・・
この時の清はこの先、自分に降りかかる小さな災いに気づいていなかった。
(とりあえずまずは臭みをどうにかしよう。)
そう言って清は全ての猪肉をストックしておいた牛乳に付けて臭いを消し始める。ルインのEternal(永遠)の力を使って一瞬で作業が完了する。清はこの時もEternal(永遠)を使用した保管法に気づかなかった。
その後、さらに臭いを紛らわすため小さく切り分けて塩胡椒を振って醤油とルインのHeat(火)を使用し強火で焼く。
アルミホイルなどはないため、とりあえず表と裏面を強火で焼いていく。
所謂ステーキだ。十分な料理道具も何もない為、完璧とは言えないがそれでも出来る限りのことはした。
「あれ?お父さんも食べるの?」
「ああ、お前だけじゃ食いきれないだろ。」
「?」
ルインはEternal(永遠)とZone(空間)を併用した保存法に気づいているため少し訝しんだが、とりあえずは目の前のステーキを平らげることを優先したため何も言わなかった。
「「「いただきます。」」」
一応1日ぶりの食事の清と己の欲望を満たすために清と桜を巻き込んだルイン、そして実体化した桜が雪猪のステーキを食べる。
「「しょっぱ!!」」
桜と清の声が重なる。やはり臭いの強い雪猪を食べるために濃い味付けにしたが、だいぶ濃かったようだ。清は何とか食べらるが、桜は一口以降完全に動きが停まっている。
「桜、すまんが下でまともな食事を取ってきてくれ。それは俺が食べる」
見かねた清が手を差し伸べる。基本的に清の作ったものは何も言わず食べる桜だが、今回ばかりは食べるのを止めた。
結果、清が朝から濃い料理を二人分食べることになるが、清は食えればなんでもいいと胃袋に流し込む。
ルインは待望の猪肉料理をパクパクと口に入れて満面の笑みだ。
清はよく朝からそんな濃いものが食えると逆に感心していた。
「はぁ、まだ沢山あるのに・・・」
ルインが持ってきた肉塊の量を思い出し、朝からげんなりする清。しかし、
「何言ってるの?ストレージとかに保存すれば長く持つんだからわざわざ今全部食べる必要はないわよ。」
「・・・」
ルインに指摘され目が点になる清。
考えてみればストレージに料理を放り込んで再度作り直すという手段もあった。
1日なにも食べてないからとはいえ、自分の軽率さに清は肩をがっくりと落とし、1週間ほどルインにそのネタで揶揄われ、桜からは憐れみの視線を向けられた。
なお、清が処理した猪肉は清のストレージへ収納され、旅先で求められる際(主にルインに)に使用して言った所2カ月程で全て使用できたらしい。




