冒険者ギルド
護衛依頼を達成し冒険者ギルドで冒険者登録をしようとしていたのだが。
「だから、嘘を付かないでください!」
「いや、嘘はついてないって。」
「そんな見え見えのウソを嘘と言わず何というのですか!」
現在、ギルドの受付嬢と口論中だった。どうも俺がやたら軽装なのに職業をタンクと書いてしまったのが原因らしい。
「第一、盾も持ってないタンクがどこにいますか!」
「ここに居るよていうか盾の方が肉体より脆いから。」
「そういう見え透いた嘘を付かないでくださいと何度言えばわかるのですか!!」
どうもこの受付嬢、無謀な新人が嘘を付いてると思っているらしい。丸メガネにおさげというまさに生真面目キャラの格好をしている。
「さわがしいぞ。」
何やらガタイのいい男性が出てきた。
「どうした?」
「あ、先輩。こちらの新人さんが自分はタンクだと嘘を付くのです。しかも、盾を使わないタンクだとか。」
「盾を使わないタンク?」
「はい。」
何やら先輩と相談し始めた。こちらをチラチラと見ている。なお、ルインに関しては普通に中衛職と判断されたらしい。お?先輩と呼ばれたガタイのいい男が来た。
「ソフィアから聞いた。急だが今すぐお前の実技戦闘試験を行う。」
「?さっきまで口論してたのにいいのか?」
「かまわん。そもそも実力がなければ不合格にすればいいだけだ。」
それはごもっとも俺と男は裏にある試合場のような場所に来た。
「それじゃぁ行くぞ。」
「お手柔らかにお願いします。」
お互い木刀を持っている。ただし、男は大剣サイズの木刀なのに対し、俺の木刀は刀みたいな外見をしている。なんでも試験の際に受験者や試験官に合わせた武器を選びやすいようにらしい。なお、ルインは観戦席でどちらが勝つかの賭けで俺に入れてた。
「それでは、始め!!」
審判役の受付嬢の号令とともに男は大剣を力いっぱい俺にふるった。普通なら防御するか回避しないと大けがをするレベルだ。だが、俺はあえてその攻撃を防御せずに受けた。
「バキ」
木刀が折れたことに試験管や審判。観客までもが唖然とした。俺はその隙を見逃さず。手加減をした横一線を試験官の鳩尾に叩き込んだ。試験官は3回くらいバウンドして壁に試験官型の化石が出来た。
あの後、試験官の男はルインに治療され、全快したあとに俺に攻撃したいといった。単純な興味らしく、金貨1枚払うなら受けるといったが躊躇なく男は払った。攻撃とは魔法や矢を俺に打ち込むというものだ。対して俺は、魔法は正面から受け止め、矢は回避するか剣で叩き落した。回避と叩き落すのは純粋な自分の技術と説明できたが、防御力に関しては自分の周りに魔力で作った殻を作って防いでる。と嘘を付いたが納得されたらしい。なんでも無属性魔法に魔力鎧という技があるためそれと同じ系統と思われたとか。
「おめでとうございます。清様とルイン様は晴れて冒険者として登録されました。それと、先ほどは失礼しました。」
「別に気にしないで。むしろあなたみたいな反応が普通ですよ。」
娘よ、血は繋がってないとはいえせめてもう少し擁護してくれ。なお、俺は自分のプロフィールに毒を使った技を多用することは書いている。
「それよりもギルドのルールとかはあるのか?あるならなるべく破らないように知っておきたいんだが。」
俺は自分の中の落ち込んだ感情を隠し受付嬢に質問した。
「ええ、ございます。もっとも、そこまで多くはございませんが。まず一つはギルドはランク制です。低いくらいから順に木証、青銅証、銅証、銀証、金証、白金証、銀鉄鋼証、金剛殻証と分かれていてランクが高いほど多くの種類を受けられます。なお、プラチナ証以上は受ける依頼の大半が指名依頼になります。指名依頼自体はランク制限をかけてませんので指名されれば木証でも任意で受けられます。」
・・・自分のランクは高くても銀証までにしよう。貴族とか金持ちとはいい思い出はあまりない。
「続いて、依頼に関しては自分のランク以下の依頼は好きに受けられますが、失敗した場合違約金を支払っていただきます。こちらは冒険者登録された方々に無料配布している薬草と魔物に関する情報が書かれた手帳です。どこのギルドにも頼めば必ず無料でいただけますが。そのギルドのある場所の近隣の魔物や植物が書かれているため。山にあるギルドに海の魔物の情報が書かれることはありません。」
依頼は慎重に受けよう。自分の身の丈に合った依頼で十分だ。
「それと、ギルドは基本的に冒険者同士のいざこざには不干渉です。以上ですね。」
「助かるありがとう。」
「いえいえ、むしろあなたみたいに真面目に注意事項を聞かないせっかちな人が多くて。あ、一つ忘れてました。新人冒険者は必ず1週間ほど先輩の冒険者に教わるために一緒にいる必要があります。この先輩の冒険者はギルドが選んだ冒険者で素行に問題のある輩に教わることはありませんので。」
「分かった。それで?俺達の先生は誰だ?」
「ええっと。・・・申し訳ありません。彼女しかございませんね」
受付嬢の目線の先にはどこか暗い影を落とした女性の冒険者がいた。
「奇麗な人だねお父さん。」
「はい、そうですね・・・」
「何かあったのか?」
何だか受付嬢の反応が良くない。
「・・・実は彼女が教えた冒険者が全員1週間以内に行方不明になっているんです。」
・・・そいつは穏やかじゃないな。
「彼女が直接関係しているわけではないのですが、いわれのない中傷が多くて。」
「なるほど、まぁ、関係ないな」
「へ?」
「うん、何かあっても何とかなるしね。」
「え?あの人、いろいろと悪い噂流れているんですよ。それでもいいんですか?」
「いや、地元にはそういう感じのバケモンがわんさかいたからな。それに、本気で彼女が関係しているならあそこまで暗い空気は出さんよ。まぁ、それも演技の可能性もあるが、そん時は俺の人を見る目が無かっただけだ。」
受付嬢が「何言ってんだこいつ?」みたいな顔で俺たちを訝しんだ。だが、この考えは事実だ。俺のいた世界の日本は伝説ではなく本当に「鬼」や「百目」といった妖怪がわんさかいた。そういう奴らほど噂ほど危険な存在じゃ無かった。それ故、俺は基本噂は信じず、自分が体験した事実を優先的に信じる。第一、騙されても何とかなる力を俺は持っているから。決して彼女が美人だからではない。ないったらない。
「お父さん、彼女は問題ないよ。」
「分かるのか?」
「うん、Queen(知識)の能力は相手が善人か悪人か位は分かるから」
Queen(知識)チートすぎだろ・・・言語のところで気付きかけてたが融通が利きすぎる。あの後知ったことだが、個人名さえわかればその人の全てを知ることが出来て、種族名が分かれば弱点とかも全てわかる。まさに知識の中枢(Queen)だ。
「まぁ、という訳であの人の研修受けてみるよ。」
「・・・分かりました一応何かございましたらお知らせください。」
「まぁ、何かあっても何とかなるがな。」
ルインが使用した技解説
Queen(知識)
例え貴族になったとしてもこれを使えば貴族相応のふるまいが出来るし、国に入った際に使えばその国の文字と言語を一瞬でマスターできる。
言語とかも全て分かるようになり、個人名さえわかればその人の全てを知ることが出来て、種族名が分かれば弱点とかも全てわかる。固有名がなくとも善人悪人の判別はつく。まさに知識の中核(Queen)。融通が利きすぎてチート