パートナー
パージェに連れられてルインはパージェの職場に来た。そこには黒髪黒目の男性がソファに座っていた。恐らく彼が噂の日高清なのだろう。
「おう、転生神その子がさっき言ってた破壊神志望の新神か?」
「そうです。早速ですが、地上に降りてもらいます」
「は?おい、ちょっとま・・・」
「『転移』」
急に明るい光が出て視界が真っ白になった。
気が付くと清とルインは森にいた。
「・・・あの神様、相変わらず人の話を聞かねぇ」
こめかみを押さえながら清が呟いた。よく見ると額には青筋が浮かんでいた。
「はぁ、今更起きたことを文句言っても今は変わらないか。それで、新神ちゃん君の事教えてもらっても良いか?」
急な展開についていけていけてなくて黙っていたルインは急に話を振られて一瞬反応が遅れた
「ひ、人に名前を聞くならまず自分から名乗るのが二ホンの礼儀じゃないの?」
「ごもっとも、俺は日高清、一応役職はタンクだが「毒」を好きに操れてね。支援攻撃や近~中距離攻撃も出来る。もちろん、周りの生物へ一切の被害を出さずに攻撃したり逆に特定の生物へ特化した攻撃をしたりね。一応君の事は破壊神志望の新神とだけ聞いている。」
口調は多少荒いが自分に非があると思えばまず認めて正す。それが清の性格なためあっさりと自分の自己紹介をした。その後の沈黙で自分に話が振られてると理解したルインは自分の自己紹介を始めた。
「私は、新神のルインです。破壊神志望で中々仕事が来なくてあなたとの同行が初めての仕事です。名目は「地上の事をよく知るための研修」と言われました。能力は一応なんでもできます。神の力は危ないので使用できませんが加速とか罠解除とか射撃とか、もっとも、地上で力を使ったことがないので調整は難しいですが。」
「複数の力を使うことは出来るの?」
「可能ですが威力の調整と制御が難しく瞬間的な重複使用かせいぜい4~5が精々ですかね。」
十分すごいと思うのだが、とくに清は突っ込まなかった。
「ところで、どうしてあなたは耳が尖っているのです?さっきまで普通の人間の耳でしたよね?」
「は?耳?」
言われて清は初めて気づいた。自分の耳が尖っていることに。そしてポッケに何やら紙の束があることに。そこにはこう書いていた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
無事に転移出来たようだね。
悪いけど仕事がまだ残っていたから強制転移をさせてもらったよまぁ、二人とも了承してたしいいよね
(*^▽^*)
まず疑問に思うだろう体について説明するね。
清君だけど、世界を長い間調査する仕事の都合上長命種を選ばせてもらったよ。勿論外見は自分の意思で変化可能だけどステータスとかには転移時に選んだ長命種の方が表示されるから。なお、ルイン君はハーフエルフにしていて君と顔のつくりを近くしておいた。これで親子と言っても信じられるから。
( -`ω-)どや!
まぁ、調査と言っても世界同士の結界を調べるだけなんだけどね。調査に必要なアイテムは君たちのストレージに入れといたから。
長い間二人だけは辛いと思って一応人のいる剣と魔法の世界にしたから気楽に冒険を楽しみな
(@^^)/~~~<Good Luck
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あの転生神、殴りてぇ・・・せめて事前にいろいろ説明してほしかった。第一なんだよ親子って
「何かすいません。私の上司の我儘につき合わせちゃって。」
「別に構わん。慣れてる。そんなことよりも調査用のアイテムを起動しよう」
世界の結界、それは各世界単位である巨大な結界。これがあることで世界へ妙なものが紛れ込まないようにしている。そもそも各世界で出現した所謂「邪神」とかのやばいやつらが人の手に負えない場合。多くの世界で世界同士の隙間に送り込んで封印している。世界同士の隙間は何もない空間で時間の概念すらない。故に神でもないとこの空間に干渉は出来ないのだが、まれにこの中を意識はなくても移動し続ける奴がいる。そういう奴が世界に入ってこないようにしているのだ。しかし、そのフィルターも万能ではない。長いときの中で脆くなったりするとそこから神様の関係しない世界の崩壊が始まったり、封印された存在が復活して大暴れしたりする。破壊神はこれを修理するのも仕事の一つなのだ。俺はストレージを開き目的のアイテムを出す。因みにストレージに関しては事前に説明はされて練習もしたのでバッチリだ。
「これか。」
出したアイテムはきれいな宝石がちりばめられた笛だった。これを吹けと?
「それは世界の結界を調査するのに使う神器ですね。笛を吹いて世界中に発した神音が返ってくる具合で世界の結界の状態を調査します。一回吹けばストレージに入れても調査を続けてくれますね。」
「詳しいな。」
「仕事がない間暇でしたので」
自嘲気味にルインは遠くを見つめた。
「ま、まぁありがとう。」
彼女が出す重い空気に耐えられなかった清が笛を吹いたが音は出なかった
「?音が出ないぞ?」
「いえ、出ました。地上の生き物には聞こえない音ですので神音なんです。第一、地上の生き物にも聞こえたら迷惑以外何物でもありませんよ。」
それはごもっとも
「あ、言い忘れてましたが音の反射を使っていますが世界は広いので調査には長い時間がかかります」
「なるほど。とりあえず近くに町や村がないか調べるか。ここでじっとしている意味もないし。」
「ですね。」
そうして移動しようとした時、微かにだが確かに誰かの悲鳴が聞こえた。俺たちは顔を見合わせ互いにうなずいて悲鳴のした方向へ急いだ。