転生する?しない?
「ここは…」
見覚えのある感覚、かつて感じた記憶が日高清の中によみがえる
「ああ、転生した時に来た所か」
自分がかつて事故で死亡し異世界へ転生したことを思い出した
「あり?でも俺別に事故死したわけじゃないよね?」
そう、日高清は別に事故死したわけではない今回はちゃんと天寿を全うし最後まで笑って生きたはずだもし十分生きたし悔いは作らなかった。そもそも「転生システム」自体がまだ生きたいと願う人々への一時的な救済処置で悔いの残ってない人間は本来ここには来ないかつて神様と話した内容はそうだったはず
「…自分でも気づかない未練があったってことかな?」
「お答えしましょう」
「どうぁ!?」
彼女ないし彼は転生の神様。中性的な体格、顔つき服装をしていていつも神出鬼没で日高清を驚かせる生前何度か雑用を任された時もいきなり脳内に現れて心臓が飛び出るかと思った
「いい加減慣れてくださいよ」
「じゃぁまずその神出鬼没止めてくれ」
「別に好きで神出鬼没しているわけではありませんそんなことよりあなたが何故再びここに居るのか聞かなくて良いのですか?」
「そうだ、おれはちゃんと天寿を全うして悔いは残さなかったはずだなのになんでまたここに居るんだ?」
「簡潔にいうとあなたの生前の行いのせいですねそれもいい意味での」
「行い?ただ困ってる人を助けただけだけど?」
「いや、魔物のスタンビートが起きたのに一人で全滅させたり仲間の奴隷少年を助けるために大元の悪徳奴隷大国を消し炭にしたり恋人救うために全人類を敵に回しかける行動をしたりその他etc.をただ人を助けただけとは普通言いません」
「俺は自分の欲望に忠実だっただけなんだがな」
実際、スタンビートは広範囲殲滅技を連発して何とかなったし奴隷大国云々は気が付いたら滅ぼしてただけだ。もちろんただの奴隷やまともなやつらは犠牲にしてないが。恋人の件も実際全人類を敵に回したわけではない飽く迄回しかけただけだ
「コホン、話を戻しましてあなたが生前行った善行のおかげで多くの人々が笑顔になりました」
「奴隷大国の人間には恨まれたんじゃないの?」
「相対的に見て笑顔になった人間が多かったのです我々は人間の身分は関係ありませんので。そこで、あなたは再び転生するチャンスを与えられました」
「いらん」
「でしょうね」
正直言って天寿を全うしたのに未練もないのに何故また人生をやり直さにゃならんのだ。前述の通り転生のシステム自体は「生きたい」と願う者たちのためのシステムそういう人たちの方に少しでも順番は回した方がいいはずなのに何故彼に優先権が回るのか?その疑問が来ることは分かっていたのであろう転生の神様は説明を始めた。
「知っての通り神様は地上の出来事には不干渉ですそれは地上の人々を信じ自らの意思で動くことを望むためです」
「ああ。」
「しかし、逆にいうと地上で起こった出来事をただ指をくわえて見ていることしかできません。かといって地上で行われることを見て見ぬふりするのは忍びありません。そこで、生前に善行の限りを尽くし、人としての精神も優れた都合のいいゲフンゲンぴったりなあなたに様々な世界の危機をある程度排除してほしいのです」
何か一瞬不穏な言葉が聞こえたのですが・・・
「気のせいです(キッパリ)」
あ、はい。
「それと、実は新神が一人出来たのですが、志望している役職の関係上中々研修が出来なくてあなたに同伴して研修させたいのです。死者たちへの対応をしているだけで半分パンクしている状況で彼女のような職業は中々研修できませんから」
神様が新神研修で人手が足りないとかシュールだな
「私たち神は力は持っても全知全能ではありません。その力を持つためにある程度の知能を持っていないとそもそも神認定されません。想像してみてください力を持った馬鹿がどうなるかをあなたなら何度も見たでしょう」
ああ、あれは毎回面倒だったな
「ですので、神様としての研修と人の正と負の感情を知ったうえで改めて神になるかを問うのですそのために地上で研修をするのですが、彼女の場合は難しくて・・・」
「誰なんだ?別に今の神が新神に教えればいいんじゃないのか?」
神という存在は基本的に知識の塊だ剣術の神なら剣の知識、酒の神なら酒の知識の集まった存在で普通に地上に降りて教えれば済む。そもそも非戦闘員のはずの酒神様まで古代エンシェントでないとはいえドラゴンを物理でKOしたのだわざわざ俺がする意味が分からない。
「その新神が破壊神志望だと言ってもですか?」
「・・・」
頭が痛い・・・たしかにそれはやすやすと研修できん。破壊神とは破壊と創造を司る神様で純粋な力でいうと全ての神々を纏める統合神様の次に強い存在。加えて破壊を司るから地上で研修しようものなら世界の一つや二つを壊すことを前提に考えなくてはならないその世界にも必死に生きてる命があるのに勝手に殺されてはあんまりだ。
「つまりは、その破壊神志望の新神の研修を俺に押し付けようと?」
「あなたはなんだかんだ言って真面目な人ですから」
「・・・」
「それに、こちらもそれなりに報酬を払うつもりですよ」
「どんなのだよ…」
「味わいたくはありませんか?故郷の味を」
「!?」
それは清にとって衝撃だった。かつて異世界に転生し何とか再現できた料理はあっても記憶の中の料理とは何かが違うものが大半。再現できないものがほとんどだった。
「どうします?」
結局のところ、人の本質は変わらない。変わるとしたらそれは外見だけだ・・・俺は・・・