スプリウム帝国とフラブリー宗教国の事情
みなさん、お久しぶりです。
受験がひと段落したため、投稿を再開することにしました。
最近、二次創作にハマったため、投稿頻度が大きく落ちます。
清とシューヴェルトが間違われてしまうというトラブルが発生したパーティの裏で、一人の少女が着替えをしていた。
「とても、お美しくございます。」
「素敵ですね。」
「お綺麗です。」
着替えを手伝ってくれているメイドたちの声も少女の耳には入っていなかった。
少女の名前はアスナン。
スプリウム帝国の北方の町を治めるデストルトーレ子爵家の長女だ。
スプリウム帝国の北方は海が存在するが海岸線のほとんどが断崖絶壁なのでデストルトーレ子爵家の治める領地で町と言えば一つしかない。
その上に周囲は凶暴な魔物が跳梁跋扈する森が存在するため街道の治安はあまりよくはない。
アストリアンがこの地を治めるのも危険で誰もやりたがらなかった仕事を引き受けただけだ。
当初は領主とはいえ、地方だし、アストリアン自体が武勲で貢献した成り上がりものだったが、何度か発生した魔物の暴走で領主が率先して鎮静化に赴いた功績を称えられ、20年ほどであっというまに2階級ほど上の伯爵まで上り詰めた。
加えて、親馬鹿な点を除けばアストリアンは基本的に裏表のない人格なので王族からの信頼も厚かった。
中には成り上がりのデストルトーレ家を妬む者もいたが、デストルトーレ家が北の領地で起こった魔物の暴走で重要な砦となっているのも事実だし、真正面から喧嘩売って何をされるか分かったものではないので表立って暴言を吐く人はいない。
最悪、デストルトーレ家が失脚し後釜が上手く魔物の暴走を防げないと次に暴走した魔物に狙われるかもしれないのは自分達かもしれないのだ。
余談だが、デストルトーレ子爵家領地は別に鉱山が発展しているわけでも食料自給率が高い訳でもない。
基本的に生計は討伐した魔物の素材を売って稼いでいるのでデストルトーレ子爵家からすれば魔物の暴走単なるボーナス感覚だとかなんとか・・・
しかし、スプリウム帝国はここフラブリー宗教国からはほぼ地球の反対側の位置にある。
なぜ彼女がこんな所にいるかというと色々と端折ればどこにでもある政略結婚だ。
フラブリー宗教国の恩恵を少しでも受けたいが地理的に積極的に関われないスプリウム帝国が、ペルベーソ公爵がアスナンを口説いた際にこれ幸いと周りを盛り上げたのだ。
アスナンとて貴族に生まれた身。
自由な恋愛結婚など半分諦めていたが今回は相手が最悪だった。
ペルベーソ公爵のことを調べても少しもいい情報が手に入らない。
ここでペルベーソ公爵の悪行を赤裸々に語っても構わないが、その前にフラブリー宗教国の貴族制度について説明しなければならない。
そもそも、フラブリー宗教国は地球でいう台湾に位置する島だが島の大きさは実際の台湾の1/5程度しか存在しない。
普通「公爵」という地位が存在すれば他の地位・・・子爵や伯爵などいくらかの貴族が存在する。
勿論、フラブリー宗教国とて例外ではなく、貴族の数は男爵以下の地位の物を引いても軽く2万は存在する。
そんな小さな国で何故にそんな大量の貴族が存在するかというと、フラブリー宗教国は試験によって貴族の地位を与える世界でも珍しい国なのだ。
この制度には優秀な人材であれば種族を問わず優遇するというフラブリー教の理念が反映されているのだが・・・優秀な人材=人格者とは限らない。
貴族位を与えられた人物は世界各地に赴き、地方のフラブリー教の教会で働いて、フラブリー教の教えを広めながらその街の問題を解決する。
収入は派遣先の地元の人々からの寄付金からだが、その国や派遣先の領主に許可を取れば徴税をしても構わないのだ。
徴税というよりは領主から活動費を寄付してもらうことなので真の意味では徴税ではないのだが、フラブリー宗教国では日本の神道の影響で「神様へ願いを叶えてもらうにはお賽銭を払う必要がある」と経典に書かれている。
その様子があたかも徴税のように見えることから昔のフラブリー宗教国教皇が冗談で「徴税」といったところそれが定着してしまった。
しかし、そんなフラブリー宗教国内で起こったことを一般の信者が知るはずもなく、自分の都合のいいように言いふらして派遣先の住民に対し半ば脅しのように迫って金品を強奪する輩もいる。
大抵は派遣先の本来の領主や国王、フラブリー宗教国に見つかり、処刑されるなりなんなりあるのだが、中には巧妙に証拠を隠し、一向に尻尾を掴ませない輩も存在する。
そして、ペルベーソ公爵は後者であった。
ペルベーソ公爵の派遣先はデストルトーレ家の治める領地ではないが、度々金銭問題を発生させ、あと一歩のところまで追い詰めてはトカゲの尻尾切りといういたちごっこらしい。
さらに、金にがめついだけでなく、女癖も最悪だった。
派遣先の女性相手に節操無しに手を出しては、被害者女性にお金を渡すわ、脅すわでまともな噂が無かった。
かつて、スプリウム帝国のボム王子が成人する際のパーティに何故か入国していたが、その時に目を付けられてしまったらしい。
スプリウム帝国やフラブリー宗教国とて、手を焼いている厄介ごとではあるが、いかんせん証拠がないので、表立って婚約に反対できず、国益を考えれば悪くない婚姻なのでアスナンは自分が国の為に犠牲にされていることは自覚しているし、それ自体は不満ではない。
しかし、アスナンとてまだ16歳の少女だ。
自由な恋愛結婚に対し憧れが無かったといえば嘘になるし実際、思いをよせる人もいた。
結局、その人には振られてしまったが、今もなおその人の事を思ってはいる。
矛盾した感情だとは分かっているが、自制できるものでもない。
(いえ、憤っても詮無きことね・・・)
そもそも、私はキヨシさんに対し、この国の中で騒動を起こさないように予め言っといた。
清さんが私たちに嘘をついている可能性もあるが、キヨシさんは腹芸の上手い人ではないので彼が騒動を起こして迷惑をかける可能性もないだろう。
それに、超人的な力を持つとはいえ、キヨシさんもただの一人の人だ。
何人もの国の重鎮が集まるパーティはただでさえ警備が厳しくなる。
たとえルインちゃんとお父様が手伝ってくれたとしても始めて来たこの国にツテがあるとは思えないので仲間はたったの2人だ。数の暴力を用いた圧倒的質量で一瞬で制圧されてしまう。
突拍子もない事を何度も引き起こしてきた人物だが、現実の見えない人ではないので彼がペルベーソ公爵が開催している披露宴で騒動を引き起こす可能性は低いだろう。
「アスナン様、そろそろお時間でございます。」
アスナンが思考にふけっている間にドアがノックされ、メイド長が現れる。
既に休憩時間は終わり、夜会は始まっている。
ドレスの構造上段差が動きにくいためアスナンはメイドたちに引きつられて会場に向かった。
アスナンは知らない・・・
清がアストリアンとした雇用契約の中にアスナンの奪取及びペルベーソ公爵の始末が含まれていることを・・・
スプリウム帝国の大決闘大会で今代の勇者及び、その仲間にコネがあることを・・・
その仲間にいるマッドバイオロジストが(半分脅迫されたとはいえ)清に協力していることを・・・
そして、「天災親子」はたかが一国の軍隊などそこらの有象無象の集合体に過ぎないことを・・・
清が暴れるまで、残り1時間未満・・・




