(¬_¬)天才(?)音楽家シューヴェルト
この話を投稿後、大学受験の勉強のために最低でも2年ほど投稿を休止します。
中途半端に止まってしい大変申し訳ございません。
俺とシューヴェルトの演奏対決に決着がついた後に周囲からの視線が一気に俺に集まった。
その視線は全員同じ感じだった。
簡潔にいえば、「コイツ誰?」だろう。
例え腕のいい音楽家だとしても、関係のない部外者を王侯貴族の招待されるパーティに連れてきたとなれば管理体制に疑問が浮かぶ。
しかし、突っ込もうにも普通に招待されていた人物ならば自分の無知さを喧伝するようなものなため、プライドの高い貴族や大富豪は自分の首を絞めたくないと尻すごんで誰もしない。
はてさて、どうしたものか・・・
「お父さ~ん!!」
一瞬で拍手喝采から静寂になって気まずい状況でやけに娘の声が響いた。
片手を振ってタタタっと俺のとこまで接近し俺の腹部に飛びついた。
とりあえず、仲のいい親子を演じるために優しくルインの頭を撫でた。
「どこ行ってたの?」
「そこの音楽家と間違われてここまで引っ張られた。演奏が終わった時に挑発されてカッとなってのっちまった。反省している。」
やはり、レベルの低いスキルを急に上昇させると碌なことがないな。
「いや、すばらしい。普通急に訳分らない状況に陥ったら硬直して動けないものですが・・・」
俺がルインとじゃれ合っていると、シューヴェルトがゆっくり拍手をしながら近づいてきた。
彼の周囲にあった楽器はすでにどこかへ消えている。
「一応それなりの場数は踏んでいるんで多少の事では動揺しないんでね。
それでも、まさかサボり癖のある音楽家と間違われるとは思わなかったがな。」
「アハハハ、それに関しては謝罪致します。とりあえず、同郷のよしみで許して頂けませんかね?」
『・・・その言い方だと、『転生者』ってことを隠す気はないようだな。』
俺は最後の最後だけ二ホン語で話しかけた。
転生者は科学文明の発達した世界から送られることが多いので、その世界の武器を再現できれば強力な兵器とすることも出来る。
補足すると、この世界の武器は基本的に広範囲殲滅系統の上級魔法が戦争で使われるため普通に考えて科学技術が介入する意味はない。
しかし、そういう火力の高い魔法は大抵燃費が悪いし、大都市や兵隊が待機している場所は大なり小なり魔力結界が存在するため威力が削がれる。
加えて、魔法は魔術師の制御を離れると基本的に消滅する。
魔術師の制御できる範囲はどんなにがんばっても視認可能な範囲まで、普通の魔法使いならば100mが精々なので魔術師の魔力が尽きればあっという間にお陀仏になる。
そういう時に護身が出来る現代兵器(スタンガンや銃)は重宝されるらしい。
それに、剣術を実戦レベルまで人に覚えさせるのには時間が掛かるのに対し、銃は多少練習すればそれでも子供でも扱える。
そんな便利な兵器を国が放っておくわけがない。
転生者という情報と転生前の兵器の性能を知られれば下手をすれば世界中の国に狙われかねないため転生者は基本的に転生者であるということを秘匿する傾向がある。
「ええ、問題ありません。私のコレは、音楽を奏でるだけじゃありませんから。」
「その言い方だと、攻撃にも転用できるみたいな言い方だな。俺には鑑定スキルがあるんだ。見ていいか?」
「お好きにどうぞ。」
鑑定スキルで確認した所、彼のスキルは演奏、歌唱、早口、作詞、作曲といったザ・音楽家といったスキル内容だった。
そんな中、彼のスキルの中に騒霊なるスキルを見つけた。
名前から推測するに騒霊を操って楽器を自由自在に操るとか、騒霊と共に音楽を奏でるとかかな?
ステータスの内容も魔力はかなり多いが体力に攻撃力、俊敏性、防御力はほぼないに等しかった。
完全に非戦闘員だな。
一応、持久力と運はそれなりに高いが、一般人より多い程度だった。
称号の中には彼の二つ名の「騒霊の支配者」の他にも「サボり魔」だの「迷惑者」だのボロクソに罵られているから常習犯なのだろう。
普通に考えて、鑑定スキルで見られると称号も一緒に見られるため拒むものなのだが、彼の場合俺に見られて困るものが一切ない。
むしろ、俺が既に知っている情報だけだからわざわざ隠す必要も無いのだろう。
そもそも、ステータスを見た所で音楽家である彼と戦う状況など絶対と言っていいほど無いのでこの行為自体は彼にとって痛くもかゆくもなさそうだ。
しかし、俺には娘が存在する。
彼女の手にかかれば固定技能の内容を調べることなど訳ではないので後でマティアス少年の浪漫なるスキルと一緒に彼のスキルも調べてもらおう。
「コラ~~~!こんなとこにいた!!!」
とそこで、会場全体を震わせるかの様な少女の怒声が響いた。
俺を商業区で拉致した少女だ。
「シマッタ!?見つかった!!!」
そう言って、シューヴェルトは一瞬で回れ右をして会場の出口方向へ走って行った。
普通に考えれば俺を捕まえた人物をステータスの低いシューヴェルトが逃げられるはずがないのだが、何故か一向に少女が追い付けていない。
よく見ると、シューヴェルトは巧みに人の波を避けているのに対し、少女は正面から人の肉壁に突進しようとして弾かれていた。
あの子は、良くも悪くも真っすぐな人物なのだろうか?
とりあえず俺は、瞬動スキルを使用してシューヴェルトの進行方向へ先回りし、シューヴェルトが前を通り過ぎる辺りで足を突き出して転ばせる。
まるで漫画のようにゴロゴロ転がってったシューヴェルトは壁にぶつかった後に懲りずに更なる逃走を図ったが、立ち上がった直後に背後に接近し、体術スキルを使用して関節を固める。
動けなくなった所を右腕を無理やり背中に回して動きを封じた。
音楽家なので怪我はさせないよう注意したし、したとしても治癒毒で治すので問題ない。
そもそも、俺が間違われた根本的原因はこいつが勝手にとんずらした事なので、これ位は許されるだろう。
「イタタタタ!痛い痛い!!折れる折れる!!!」
シューヴェルトが何か叫んでいるが異論を認めるつもりは無いので無視した。
「つ~くぁ~むぁ~うぇ~とぁ~!!!」
後ろから少女もシューヴェルトに追いついた。
少女はシューヴェルトに触れた途端、何処から取り出したのか縄を使ってシューヴェルトを簀巻きにした。
「おいお前、こういう脱走が得意な奴には物理的に首輪をつける事をおススメするぞ。」
「昔、それを考えて『隷属の首輪』付けましたが、どういう仕組みかあっさり外して脱走しました。」
ちょっと待て、色々突っ込みどころが多すぎる。
隷属の首輪ってたしか、付けられた人物からは外せない仕組みだったはずだぞ。
それをあっさり外すとか本当にどういう絡繰りだ?
それに、隷属の首輪を人に使うことは国際的に禁止されているはずだ。
「一応言っておくが、お前のしたことは国際法違反だからな。」
「証拠はありません。ですので私は推定無罪です。」
こいつ・・・しれっと言いやがった・・・
隷属の首輪は本来人間に従いにくい知能の低い魔物、例えばグリフォンや亜竜系の魔物を人に従わせやすくするために使われる魔道具だ。
仕組みとしては主人と登録した人に歯向かったり主人の命令を無視すれば激痛が走るという別段複雑ではないため、材料さえそろえば誰でも作れるため量産も簡単だ。
予想した人もいるだろうが、勿論人間にも使えるが、それは道徳及び倫理的によろしくないとのことで一応、世界の全ての国では人間及び人型の知的生命体への使用は禁止されている。
余談だが、人型でない知的生命体、例えばユニコーンや亜ではない竜などは全体的に人では太刀打ちできない力を持つ。
そんなやつらに隷属の首輪を使うなど単なる自殺志願者でしかないので法律に書く以前に自身の保身のために誰もやらないらしい。
一応シューヴェルトの首の部分を見ても首輪のような跡は存在しないため彼女が人間に対して隷属の首輪を使ったという証拠は確かにない。
「使ったやつは処分したんだろうな?」
「海の底にポイしたので問題ないかと。」
その程度で壊れる魔道具などどこにも存在しない。
下手をすればサルベージされて第三者の手に渡りかねん。
「どこに捨てたんだ?」
最も、サルベージという行為をする位なら普通に隷属の首輪を一つ買った方が安いので気にする必要は無いだろうが、一応聞いてみた。
「ウィントゥル帝国の最北端より大分北にある海溝の上で」
それなら、問題ない、かな?
海溝の定義は府下さ6000m以上の深さがある場所だったはずだ。
水中での呼吸法はともかく極端な水圧に対する対策はルイン曰く魔法のみじゃ不可能らしい。
俺の主観だと、科学技術と併用すれば1万mなんて屁でもないだろうが、魔法単体だと精々数十mが限界に感じる。
「あ、そういえば・・・キヨシさん、先ほどは申し訳ございませんでした・・・
私、シューヴェルトの秘書兼弟子のアンナ・S・バラノフスカでございます。」
俺が魔法と科学を併用した潜水に関する限界を考えていた所、突然少女が先ほどまでの鬼の形相とはうって変わって花の様な笑顔を向けた。
弟子というより、どちらかというとお母さんの様な・・・ま、多くは語るまい。
「先ほど」とは、恐らく商業区での拉致に関することだろう。
「気にしないでくれ。まさかこんなに似てる人がいるとは俺も思わなかったしな。」
俺とシューヴェルトの顏は本当によく似ている。
俺のこの体や容姿は転生神様が勝手に作った肉体に無理やり俺の魂を押し込んだものとルインに聞いたので、シューヴェルトと似ているのは100%他人の空似なのだが、兄弟と言い張っても嘘とは思えない位俺とシューヴェルトの顏の造形は似ていた。
「後々に何かお礼を致しますので、よろしければ宿泊先を教えていただけませんでしょうか?」
「その前に、話の腰を折って悪いが。そいつ、拘束から逃げかけているぞ。」
「ギク!?」
いつの間にかシューヴェルトが簀巻きの状態から拘束を解き始めており、気付かれたアンナに鉄拳を振り下ろされていた。
うぉぉう・・・かなりいい音鳴ったぞ・・・
シューヴェルトは涙目を浮かべながら俺を睨んでいたが、よく見ると、口に何か銜えていた。
あれは・・・笛・・・か?
アンナがシューヴェルトに対し更なる鉄拳制裁を加えようとしている横で、俺は少し考えてみた。
「そういうことか・・・」
シューヴェルトは先ほど、能力が単なる演奏だけでなく、戦闘にも使えるようなことを言っていた。
そもそもが、「騒霊」という名の能力なので、サイコキネシス的な何かを使えるとすれば戦闘以外にも色々汎用性がある能力だろう。
音を発動のキーにしているのならば、人間に聞こえない音・・・超音波を使えば能力を発動できるのかもしれない。
最も、9割以上が俺の勝手な妄想なので、違う可能性あるが、あながち間違っては無いだろう。
後々ルインに聞けばいいしな。
「ふぅ、まったく・・・油断も隙も無いんですから・・・」
苦労してそうなアンナが少し可愛そうだったので先ほどの俺の予想を伝えてみた。
「そ、そんな能力・・・どう対処しろっていうんですか・・・」
「無難なのは一切目を離さないって事だな。それ以外だと・・・今の簀巻き状態に加えて猿轡でも咥えさせとけ。論外的解決法としては四肢と舌をもぎ取るという方法もあるぞ」
そもそも、楽器が吹けなければ音を発せられないので問題は無いはずだ。
・・・俺の予想が間違ってないという前提だが・・・
「分かりました。早速実践してみます。さ、いきますよ先生。おまちかねのお仕置きの時間です。」
「モガガ~!モガガガガガ~!!」
アンナは、シューヴェルトに猿轡を咥えさせながら大広間から退出した。
一瞬、この建物を警備している兵士に捕まらないかと思ったが、考えれば二人はフラブリー宗教国に呼ばれたため、警備中の兵士にも説明しやすいのだろう。
それを抜きにしても、アンナは俺を一瞬で無力化してここまで引きずってきたんだ。
多少荒事に巻き込まれても問題ないだろう。
「はぁ、疲れる奴らだった。」
「嵐の様な二人だったわね。」
「取り合えず、助かったよ。」
「ん、お礼はツケにしておく。あ、はいこれ。預けられた武器。」
「お、サンキュー」
俺達は小声で話し合いながら、聖子達のいる場所まで二人して歩いて行ってそのままパーティに参加した。
途中に参加していた軍人や貴族の子弟達から、アスタロト戦においての俺の戦い方を話すようせがまれたり、警護中の騎士たちに模擬戦を申し込まれたりと色々あったが、それ以外では別段トラブルもなくパーティはつつがなく進行し、一度休憩時間となった。
ペルベーソ公爵を始末する夜のパーティまで残り少しだ。




