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(ノ_・。)ヾ(・ω・*)ナデナデ

少女に引きずられ、清が連れてこられた場所は何故か先ほどまで清達がいたフラブリー宗教国の中枢であるフラブリー教本部だ。

道中に中を巡回している騎士たちに止められなかったのかと思ったが、思いだせば今朝がたルインが似たような状況を作り出したばかりだ。

流石に何度も見て半ば日常化したのだろう。


「だから、俺は冒険者のキヨシ・ヒダカだって。お前の探し人じゃない。」

「どうせまた嘘でしょ。シューヴェルトさんはいつもそうやってサボるんだから。」


18世紀の有名な音楽家の名前が出てきたが、俺は断じて水銀中毒で亡くなったあの音楽家ではない。

恐らく、彼女の探しているシューヴェルトなる人物はサボり癖でもあるのだろう。

しかし、それで俺と間違われるのは完全にとばっちりだ。


「第一、毎日あなたの顏を何度も見ている私があなたの顏を見間違う訳ないじゃないですか。」


現在進行形で誤認していますが何か?


「ほら、楽器持って。時間がないんですからさっさと行く」

「オイ、だから、人違いだって!!」


何度抵抗しても弁明しても少女は聞く耳を持たなかった。

さすがに、少女を殴る訳にはいかないので、清はあれよあれよという間にドナドナされていった。




場所は変わって、フラブリー教本部のある廊下に一人の男性(エルフ)がいた。

周囲の警備騎士は不審な行動をとる彼に訝しげな表情を向けたが、本部内にいるということは、入場を許可された人物であるため、特に何もしなかった。

というか、関わりたくなかった。

「フフフ、何とか逃げ切りましたね。」

私の名はシューヴェルト、天才音楽家だ。

そこにいる君、自分で天才とかいう奴などたかが知れてると思うだろう。

しかし、私には天才と名乗るだけの技術(・・)が存在する。

しかし、私は音楽を奏でることよりも何よりも自由を愛する男なのだよ。

先ほどまで、私は商業区の辺りをある追手から命からがら逃げていた。

ある瞬間を境に追手の気配が消えたのでこっそりとこの国の中枢へ戻ってきたのです。

周囲に先ほどの追手が潜んでいないかを植木の中から確認し、目にも止まらぬ速さで柱を伝い、植木を伝い、自身があてがわれた部屋へ移動した。

そこへ、その男性に話しかける人物たちがいた。


「あれ?こんなところで何してるのおじさん?」


今代の勇者の津美崎(つみざき)聖子(しょうこ)である。


「のわぁ!?」


突然声を掛けられて男は大声を出した。

馬鹿な!?完璧に気配を消したはず。まさか、アイツの刺客か!?

周囲の視線を一気に集めてしまったため、今まで気配を立っていたのが水泡に帰してしまった!!


「うるっさいわねぇ。耳が痛いじゃない。」


男に話しかける人物はもう一人いた。

勇者パーティのタンクであるハルキであった。


「だ、誰だね、君たちは?」


とりあえず、話しかける。

今ここでアイツに見つかって全てが無になるのだけは御免だ。

目立ってしまったため、すぐにアイツは来るだろう。


「誰って、あんた大丈夫?頭の中まで毒物が回り始めでもしたの?」


言い方はぞんざいだが、これでもハルキはハルキなりに清を気にかけての言葉である。

はたから見れば喧嘩を売っている様にしか見えないが心配はしている。


「毒?一体なんのことだね?」


しかし、現在聖子とハルキが話しかけているのは清ではないため認識に齟齬が生じている。


「というか、時間大丈夫?そろそろパーティ始まるよ?」

「ヤバ、時間ないんだからさっさと大広間に向かうわよ!!」

「そうだね。ほらほらおじさん早く!!」


そういって、ハルキと聖子はシューヴェルトの背中を押して建物の大広間へ向かい始めた。


「お、おい君!止めたまえ!!」


必死に抵抗をしようとしたシューヴェルトだったが、そもそも『音楽家』という職業はステータスが低い。

四捨五入してもハルキたちにとっては赤子の手を捻る様なものであった。

ここまで弱いと普通違和感を感じるだろうが、なんだかんだ言って清が自分たちに優しいことを知っているためてっきり手加減されていると思ったとか。




聖子とハルキがシューヴェルトをドナドナして大広間へ移動した時、既に他の勇者パーティ及び清から預けられた桜とオヒューカスを帯刀したルインが待っていた。

ルインの身長は10歳前後の身長なのに対し、桜は比較的長い日本刀っぽい外見なので、鞘の先が地面についてしまっている。

歩くたびに引きずる結果となっているので周囲からの視線がどこか生温かかったが気にしてはいないようだった。


「みんな~、おじさん連れてきたよ~」

「遅かったですね。一体、どこにいたんですか?」


ガイアが素朴な疑問を口にする。

聖子達は別に清達の事を探していた訳ではないが、忘れ物を取りに行ったハルキと聖子が偶然シューヴェルトを発見したのだ。


「いや~それがね。中庭近くの柱や植木に隠れてコソコソと何かやってたんだよ。」

「・・・キヨシ、ついに何かしでかしたか?」


ナタリーがシューヴェルトへ質問する。

言い方からして清が何かやらかすのは別に驚くべきことではないと言っているようだ。

普段ならばここで清が突っ込みを入れるところだが、シューヴェルトは押し黙っている。


(一体何なんですか!?こんな目立つ場所にいたらアイツに見つかってしまう!!直ぐにでも逃げ出さなくては!!しかし一体、どうすれば・・・・)


半分頭がパニックになって応答が出来ない状況らしい。

普段と違う態度に聖子達が違和感を感じた所、ルインから一言発せられた。


「あなた、誰?」


ようやく人違いだと気付いてくれる人物がいたとシューヴェルトは肩の力が抜けた。


「え?ルインちゃん?誰ってどういうことですか?」


セイリがルインの呟きを聞き取り、ルイン質問した。


「顔は似ているけど、お父さんじゃないわ。」

「え?マジ?」

「マジよ。」


ルインとハルキがその様な会話をしていると、唐突に周囲が騒がしくになった。


「皆さん!この度は今代の勇者、ショウコ・ツミザキ様とその仲間による悪魔討伐の祝杯及び、その戦闘においての(シルバー)証冒険者、キヨシ・ヒダカへの謝礼を込めた披露宴にお集まりくださり誠にありがとうございました。」


どうやら、パーティに招かれるべき人物を一人間違えたまま司会の男性が招待された貴族や他国の王族へ今回のパーティの趣旨を説明し始めたらしい。


「それでは、私は人違いでしたので失礼いたします。」

「待ちなさい。」


ササっと逃げようとするシューヴェルトの肩を掴んでガイアが動きを封じた。


「あなたがどこの誰だろうと関係ないわ悪いけど、もう少し一緒にいてもらうわよ。」

「何故です?一緒にいる理由もございませんが?」

「あのね、今行われているパーティにはいろんな国の貴族や王族がいるの。それなのに、あなたが一人で会場を抜け出せば、警備をしている兵士に捕まって下手をすれば殺されるわよ。悪いことは言わないから、もう少し我慢しなさい。」

「事情は私が説明致しますので、どうかここは耐えてください。」


ハルキがシューヴェルトを説得した所、自身の戦闘能力が皆無なことを思い出したのか、青い顔をしてシューヴェルトが頷いた。セイリが状況の説明をすることを申し出たが、今は司会が話している真っ最中なのでもう少し時間が掛かるだろう。


「顔がこんなに似ているのに人違いとかあるんだ」

「よく聞けば声が違うわ。最も、服装はともかく顔立ちがすごい似ているとは思ったけど。」


青くなって口を開かなくなったシューヴェルトをよそにルイン達は口々に感想を言い始めた。

清は基本的に作務衣を着ているが、今回は立場の高い人物に会うということで、事前にルインに調べさせ、スフラブリー宗教国の正装で来ていた。

裏を返せば、他の人たちも似たような服を着ているということであり、シューヴェルトは顔立ちが同じ+同じような服ということで聖子とハルキに間違われたのだ。


「今からでもおじさん探しに行く?」

「でもどこにいるのよ?」

「商業区の喫茶店で話を聞いた時はここに連れ戻されたって聞いたからてっきりいると思ったんだけどね。」

「ん?何で伝聞系なの?ルインちゃんが連れてきたんじゃないの?」

「私じゃないわ。私がその喫茶店に着いた時は既に女の子に引きずられてここに向かっていったらしいわ。話は店員に聞いたの。」

「何でその時に探さなかったのですか?」

「面倒くさかったのが半分ともう半分は普段できないことをしたかったからね。」


ガイアの質問にしれっと探す気が無かったことを答えたルインへ冷めた視線が周囲から向けられたが、当のルインは全力で無視した。


「待ってください、それってキヨシ様は大丈夫なのですか?」


セイリが清の身の安全を心配し始めたが、そもそもどうやって大悪魔と正面から殴り合って死なない耐久度を持つ男を害そうというのだろうか?


「お父さんの事だから手足を固定されて監禁されても固定している物を溶かして監禁部屋を破壊して一暴れするだろうから否応でも目立つのよ。ここ数時間でエルフが暴れてるなんて情報は知らないから多分大丈夫だと思うわ。」

「・・・知らずにキヨシを攫ったらとんでもない被害出そう。」

「お父さんを攫った所でメリットも無いと思うけどね。あ、因みに私は問答無用でクレーターを作るタイプね。」

「それタイプって言うのか?というか、ルインちゃんもキヨシの娘だな・・・」

「あの皆さん?そんな話よりもキヨシさんを探した方が良いんじゃないでしょうか?」

「必要ないわよ。」


仲間達が一切清の心配をしていないことに疑問を感じたダンタリオンが清の捜索を提案した。

捜索範囲はフラブリー教本部の建物内であることはほぼ確定しているので警備中の騎士たちに頼めば多少なりとも人手を割いてくれるだろう。

しかし、ルインはその提案を突っぱねた。


「お父さんがこの建物内にいることは既に確定しているわ。というか、貴方とそこのお父さんモドキ以外は全員近くにお父さんがいることを気付いているわよ。」

「・・・そうなのですか?ショウコ様?」

「え?あ~・・・うん、そうだね。ダンタリオンは接近戦が得意じゃないからおじさんの気配を感じなかったんじゃないかな?」

「・・・やはり私も接近戦の対処を考えた方が良いのでしょうか・・・」

「安心して下さいダンタリオン。私も分かりませんから。」


落ち込み始めたダンタリオンを前にセイリが慰める。


「そうだよ。第一、僕たちもダンタリオンの魔法にはお世話になっているしね。」


その後、聖子を筆頭に他の勇者パーティのメンバーも次々にダンタリオンを慰め始め、いつの間にか清のことを忘れてしまっていた。


「それでは、今回のパーティのスペシャルゲストにご登場頂きましょう!!」


司会の男性がかつてないほどの大声で話をし始めた。


「低迷し始めた音楽界に流星の如く現れた驚異の新人!!彼の手にかかれば操れない楽器は存在しない!!」


周囲の視線を一気に向けられた状況で男性は臆することもなく熱い紹介を始める。


「複数の楽器を操り、奏でる演奏はまるで幾つもの食材を漬け込んだ濃厚なスープの様!ご覧ください!!彼こそが空を彩る虹の光!!!『騒霊の支配者(レインボーレイン)』でございます!!!!」


一向にテンションを下げず招待した音楽家のことを熱弁していることから、恐らく彼もファンなのだろう。

しかし、彼が指し示した場所にいた人物を見た途端、聖子達の思考が一瞬停止した。

司会の男が示した場所にいたのは・・・・






虹などと言う鮮やかな表現は似合わない紫一色の男・・・そう、清がいた・・・



「鮮やかは鮮やかでも危険な配色なんでしょうね・・・」


ルインがぽつりと呟いた言葉は周囲の騒めきにかき消され、聞こえた者はいなかった。


最近忙しくなってきましたので、これ以降投稿ペースがまた下がります。

パーティの始まる時間帯を昼から夕方に変更致しました。

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