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What's Happened?

「お~、結構賑やかなんだな。」

現在、清はフラブリー宗教国の中心にある建物の窓から付近の商業区的な場所を見下ろして足を運んでいた。

別にこれといって襲撃用のアイテムを探している訳ではなく、純粋に観光目的だ。

この後この国で騒動を起こすことは決定事項としても、それまでは予定がほぼないので、ここら辺の美味い料理の作り方や味を調べたり足りない食材を入手したりしたいのだ。

肉類は旅の途中で襲撃してくる魔物を倒せばいいが、野菜や香辛料、調味料は中々手に入るものではないのでこういう機会はなるべく逃したくない。

俺は、近くを通るメイドに商業区への向かい方や注意事項を教わり、時間もあるのでゆったりとした足取りで向かった。



「ん?」


俺が商業区へ向かおうと訓練場の方を通り過ぎようとしていると、どこからか笑い声が微かに聞こえてきた。

ただの笑い声ならば、気にも留めなかっただろう。

しかし、その笑い声には何故か気分の悪いものが混じっていた。

言葉で表現することは難しいが、笑い声の中にどこか下卑た感情を感じたのだ。

胸騒ぎがして訓練場の裏へ向かう。

訓練場の裏では一人の騎士が複数人の騎士に対し暴行を加えられていた。

俺の予想どうりイジメだったようだ。


「おいお前ら!何をしている!!」


俺はなるべく高圧的な態度をとる。

この手の輩の中には自分より立場の高い人には従順になる人が多いと聞くので、一時的にでも場の主導権を握った方が良いだろう。


「不味い、見つかった!」


俺が大声を上げた途端、一人を暴行していた騎士たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

本来ならば捕まえて尋問(説得)をしたかったが、とりあえず今は暴行された騎士を助けることが最善だろう。


「おい、しっかりしろ。大丈夫か?」

「は、はい・・・た、助けてくれて、ありがとうございゴ、カハッ!」


俺が騎士へ駆け寄ると騎士は礼を言ったが、途中で吐血し始めた。

やはり相当酷く殴られたのだろう。

緊急事態だったので、治癒毒で回復力を高めて楽な姿勢にして落ち着かせる。

完治に数分かかったが、何とか会話が可能な状況まで治せた。


「あ、ありがとうございます。」


騎士は声が若干高く、女性かと一瞬思ったが服装を見た所、体格が小さいもののこの国の男性騎士が着用する服を着ていたため、恐らく男だろう。


「気にするな。それよりも、大丈夫なのか?」

「あ、はい・・・すいません・・・すいません・・・」


少年は先ほどの体験を思い出したのか、両手で二の腕を抑え、スイマセンと謝りながら震え始めた。

集団で襲い掛かられることはかなりの恐怖だ。

俺みたいに戦う(すべ)を持っている人間からすれば反撃すればいいだろうにという思考がよぎったが、それが簡単に出来ないからこうなっているんだろうと思い直した。

実の所、俺は前世も前々世も虐められた記憶というものはない。

前々世は現代二ホンだったため、ひょっとするとあったのかもしれないが、そもそも当時の俺は半分親の言いなりで勉学一本だったためそもそも友達はおろか知り合いがそもそも少なかった。

クラスで孤立していたと言われればしていただろうが、一つの事に熱中すると他が見えなくなる悪癖がこの時は役に立ったのか、周りが何をしようと流されずに自分がしたいことをしていた(寂しさを紛らわすために自分の世界に閉じこもったともいえるが・・・)。

前世も思い当たることと言えば幼馴染の父親にめっちゃ厳しくしごかれた位だが、彼は彼なりに俺の事を気にかけてくれたし、そもそも死ぬ程度の一撃は放ってこなかったし俺自身が嫌という訳ではなかったので虐められたという認識がない。

虐めは簡単に被害者加害者の関係で終わらない複雑なものだと前々世のネットで見たことがあるので、脳筋の俺の対処が果たして適切か分からないためにうかつに手を出しずらい。

最善の方法としては、聖子に相談してこの国の上層部へ掛け合い、先ほどいじめを行っていた奴らをクビにすることは出来るだろうが、その後にまた第三者が彼を虐めないとは限らない。かといって、何もしないで放置するのは目覚めが悪い・・・はてさてどうしたものか・・・

俺が、恐怖で未だに震えている少年騎士に対し今後どうするべきか頭の中でうんうん唸っていると、ふと少年の容姿に視線が引き付けられた。

勿論、彼に惚れてBL的展開になる訳じゃない。

少年騎士の顔立ちはよく見ると、どことなくモンゴロイド系の顔立ちだ。

ここは無理矢理地球の地図に当てはめると台湾に近い場所だが、モンゴロイド系の顔立ちの人間はあまりいない。

全く存在しない訳ではないが、それでも割合としては二桁にも満たないだろう。

加えて、黒髪だ。

色鮮やかな色彩の髪が多いこの世界で黒髪の人は少なくはないが、先のモンゴロイド系の顔立ちということもあってついつい考えてしまう。

俺はカマをかける目的もあって少年の耳元へ顔を近づける。


「Can you speak English?」


俺の突然の行動に少年は一瞬警戒の色を示したが、俺の話した英語を聞いた途端、その顔は驚愕へと変化した。


「Answer my question. Can you speak English?」

「Y,Yes, I can speak English b,but I'm not speak well・・・」

「なら問題ないな。上手く話せるようにすればいいだけだ。」


予想通り二ホン人だった。


「あ、あの・・・あなたは一体・・・」

「俺か?俺はキヨシ・ヒダカ二ホン語的発音をすれば、日高清だ。転生者でね、聖子とはお互いに殴り合ってその後に共闘した仲だ。」


大分情報が端折られているが、嘘ではない。途中に銃撃されたことを入れれば花丸がもらえただろうか?


「そういうお前は誰だ?その顔立ちを見る限り、聖子の転移に巻き込まれた人間か?」


頭の中の馬鹿な思考を振り払って目の前の少年に話しかける。

勇者召喚の際に近くにいた一般人が巻き込まれるというのは聞いたことがあるが、もし彼が巻き込まれた存在なら、なぜこんなとこで騎士の真似事をしているのか疑問になる。


「あ、ぼ、僕はマティアス・呂太です。ご想像の通り聖子先輩が召喚された時に巻き込まれました。」


聖子の事を「先輩」と呼ぶ辺り後輩なのだろう。若干身長が低いが、鑑定スキルで見た所、年齢は17歳とあるので高校生か。称号にも「異世界から迷いし者」が存在したためほぼ間違いないだろう。しかし、おかしい・・・


「マティアス?在ニチ外国人なのか?」

「いえ、母がドイツ系の人で、ハーフなんです。」

「へ~、それにしてはニホン人の血が濃かったみたいだな。」

「はい、そのせいで色々根も葉もない噂があがって、その上僕がオタクなので、色々と虐められました。両親にも迷惑をかけて・・・」

「待て待て、ここでその身の上話をしないでくれ。余計空気が重くなりそうだ。」

「す、すいません。」

「それで、話を戻すが一体何があったんだ?」

「あ、はい。先ほども言ったように僕は先輩の召還に巻き込まれただけで、戦う力も無くて・・・せめて先輩のお手伝いが出来る位まで強くなろうと頑張ったんですが、それが気に喰わない方々がいるらしく、あのざまです・・・笑っちゃいますよね・・・強くなりたいと言っておきながら、いざ攻撃されると反撃する勇気もないんですから・・・」

「・・・」

「・・・・・・」


お互い何も言わない無言の空間が形成される。

物凄く空気が重くなっちゃったよ・・・気まずい・・・


「いくつか質問していいか?」

「へ?は、はい。」

「お前、自分のスキルや称号、ステータスって知っているの?」

「いえ。教会で測ってくれるのはスキルしか分からなくて、何度か調べたんですが、自分のスキルが一切変化していなくて最近は諦めています。」


この世界のスキルを見る技術は前世よりも低いようだ。

前世では多少値が張ったが、スキルのレベルや称号を調べることは可能だった。

それに対し、この世界は宗教の中枢という情報が一番集まりそうな場所なのに知れるのはスキルの名前だけ。

しかし、ここで疑問が生じる。「勇者」というのは職業であり、称号だ。

少なくとも、前世では称号に「勇者」が存在するものが勇者と認定されていた。

それが無ければいくら「俺が勇者だ!!」と声高に叫んだところで相手にもされなかった。


「称号が分からないのに、聖子が勇者だなんて、どうしてわかったんだ?」

「それは、一度召喚された僕と先輩を一人一人騎士たちが模擬戦をしたんです。その時に、鈍臭かった僕に対して先輩は比べ物にならない動きで攻撃を捌いていたので、勇者と判断されたんです。最も、僕も先輩も剣術なんてやってなかったので、本職の人たちには敵いませんでしたけどね。」


結局は武力ですかさいですか。


「ん?もう一つ質問だ。スキルの名前しか分からないなら、どうやって聖子はあの髪と目の色が変わる能力を操っているんだ?」

「それは、転移した日の晩に夢枕でスキルの内容と使い方を教わったんです。僕もスキルを頂いたのですが・・・」

「ちょっと待て、勇者でないはずのお前がなんでスキルを手に入れてんだ?」

「さぁ?神官様は先輩が転移時にスキルを手に入れた影響と言われました。今まで巻き込まれた人は何人もいたけど、僕みたいにスキルを手に入れるのは珍しい事じゃないみたいで、そういう人たちはこの世界の人たちよりもステータスは高いけど勇者や魔王と比べるとかなり低いみたいなんです。与えられるスキルも便利といえば便利ですけど、戦闘だと使えない能力が多かったり、使えてもかなりピーキーだったりするらしいです。」

「ピーキー?」

「はい。例えば、水が無いと使えなかったり、高い物理耐性を持っているけれど、魔法耐性が壊滅的だったりするらしいです。」

「スキルを手に入れたって言ってたけど、お前もピーキーだったのか?」

「はい。僕の能力は武器を召還する能力だったらしいんですけど、武器を召還した途端に魔力枯渇で倒れてしまって、結局戦闘では使えないと判断されたんです。結局、非戦闘員として扱われたんですけど、少しでも先輩の役に立ちたいと思って、この国の騎士たちと戦闘訓練をしていたんですけど、騎士の中には家柄を重視する人たちもいてそういう人たちにはいきなり現れた僕の事が気に喰わない人もいるらしく、さっきみたいにたまに虐められるんです。」


家柄ねぇ、そんなもので敵を殺せるならば楽じゃないだろうに。文官ならばともかく、こういう戦闘をする武官ではほぼ無意味だ。

結局は実績よ実績。

親の実力は親の実力、幾ら親や祖先が偉く、素晴らしくても今が愚者なら何の意味もない。


「ちょっと失礼。少し君のステータス見てもいいかい?」

「へ?別にいいですけど?」


鑑定スキルは相手のステータスも見ると同時に相手の称号も見る。

この称号には自分の私生活や性格など様々なプライバシーが反映するため、相手のステータスを鑑定スキルで調べるのには予め相手から了承を得ることが必要というマナーがあるらしい。

先ほどダンタリオンから礼儀作法について教えられている時に初めて知った事実だ。

了承を得たことで、俺は、マティアス少年のステータスを詳細に調べてみた。

彼のステータスは俺やルイン、勇者パーティと比べたら低い数値だが、この世界の人たちの中ではかなり高い部類だろう。しかし、何故か防御力(VIT)が異常に低く、恐らくそれが先ほど吐血するまで殴られていた理由だと思われる。

スキルは、戦闘系スキルが剣術Ⅳ、短剣Ⅲ、連続攻撃Ⅲ、それ以外だと算術スキルのレベルがⅤ、固定技能(ユニークスキル)であろう「浪漫(ロマン)」なるスキル、そしてどういう訳か「ヲタクスキル」なるものを発見した。


「何だこりゃ?」

「え?どうしました?」


思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

ヲタクって、スキルだったんだ・・・

まあ、確かに興味のある分野に対して群を抜いた知識を持つのは並大抵の努力じゃ無理だしな


「いやすまん、初めて見るスキルがあったもんでつい奇声を上げてしまった。」

「ああ、ひょっとして『ヲタクスキル』ですか?それ先輩にも言われましたよ。」


そう言って、マティアス少年は苦笑した。

まさか、自分の趣味がスキルになるとは思わなかったのだろう。


「一応聞くが、この『ヲタクスキル』は趣味に一途って解釈で良いんだよな?」

「え、ええ・・・多分・・・」


とりあえず今はそんな物と考えることにした。

清は、これ以上は深く考えると何かが詰みそうな予感がしたのでこの話は一端脇に逸らすことにしたらしい。


「なるほどな。話を戻すが、お前の固定技能(ユニークスキル)の『浪漫(ロマン)』なるスキル、本当に武器召喚だけなのか?名前からしてかなり強そうなんだが。」

「へ?僕の固定技能(ユニークスキル)って『浪漫(ロマン)』って言うんですか?」

「知らなかったのか?」

「はい。スキルの書かれた紙は、この世界の言語で書かれていまして、僕達には全く読めなかったんです。先輩はダンジョンを攻略する際に『翻訳スキル』っていうのを手に入れたらしくて、何とか読むことは出来たのですけど、それでもまだ字を書くのは難しいらしいです。当初は、神官様にスキルの書かれた紙を読んでもらって中身を知りました。」


そうだっけ?リーフレスト連邦国では既に宿にチェックインした状態だったからよく覚えていない。

俺の場合は転生時に共通の言語と文字の情報を無理やり頭に叩き込まれたから普通に読み書きができる(それ以外の時はルインに調べてもらっている)。


「とにかく、お前のこのスキルは『浪漫(ロマン)』という名前らしい。響きからしてご都合主義を引き起こすスキルな感じもするが、お前は夢枕ではそういう風に解説されてないんだよな?」

「ええ。もっとも、情報が断片的に流れて来るだけで『魔力を使用した武器の召還・身体強化』位しか、教えてもらえなかったんですけどね。」

「そうか・・・知り合いに固定技能(ユニークスキル)の事に詳しい専門家がいる。ソイツに少し聞いてみるよ。返事に数日かかるかもしれないが、多分何か返事があると思う。」


勿論、調べるのは俺の娘(ルイン)だけどな。


「え?いえ、いいですよ。何もそこまでしていただかなくても・・・」

「気にするな。俺がやりたくて勝手にやっているんだ。それに、俺の予想だが決して外れスキルではないと思う。根拠はない完全な勘だがな。すまないが、時間的にそろそろ用事を消化しないといけないから、一端分かれさせてもらう。」

「あ、すいません。」

「ま~たさっきの奴らに虐められそうにでもなったらこれに魔力を流せ。その直後に走って逃げろ。」


そう言って、俺はストレージの中から一つの腕輪を出す。

これは、この世界に来てまだあまり時間がたってなかった時にルインが力を制御する練習で作ってたアイテムだ。

魔力を大量に消費する代わりに空間を歪めて障壁を展開するらしい。

彼の場合、防御力(VIT)は低いが俊敏性(AGI)持久力(SP)はこの世界の人たちの比ではないので、十分逃げられるだろう

彼の魔力も一般人と比べて大分高いので、一度この腕輪を発動させた程度では気絶まではいかないはずだ。


「あの、」

「ん?どうした?」

「どうして、そこまでしてくれるのです?僕は同じ日本人だとしても、今日初めて会った人ですよ。」


マティアスの瞳に警戒と疑問の色が浮かぶ。

たしかに、虐められた直後にポッと強い人が現れてしかもその人が元二ホン人で協力的だなんて、都合が良すぎるわな。

俺だって最初は警戒するだろう。

俺は、彼の質問に対し、ただ端的に答えた。


「特に意味はないさ。」

「え?」


俺の答えが以外だったのか、マティアス少年は訝しむ様な顔をした。


「特に意味はない。しいて言えば親切心と同郷故のよしみだな。感覚的にいうと重い荷物を運ぶのに苦労している見ず知らずのご老人を助ける感覚に近い。」


正確にいうと聖子と同じ世界出身という時点で俺の地元(前々世)とはパラレルワールドなんだけど、そこは些細な違いだろう。


「何も事情を知らされずにいきなり転移させられたなんて、混乱して当然の状況だ。俺は、今までにそういう人間を何人も見てきた。そういう人間ほどやけに生き急いで結局早死にしちまう。例え初対面で接点が少なくても数少ない同郷なんだ。助けたいと思うさ。最も、単なる自己満足と言われればそれまでなんだけどな。」

「そうか、あなたは人間じゃなくてエルフでしたね。僕たちの何倍も生きているでした。」


現在の俺の外見は人族でいうと30代後半だ。

エルフは20歳までは人族と同じように成長するが、20歳を超えると急に成長と老化が停止し、かなり長い年月を生きる(ハーフエルフや他の妖精族、魔人族も似たような感じだ)。

最も、俺の場合この世界に転生させられた時にこの肉体を与えられたので少し違うが、前世でそういう人たちを見てきたのは事実なので嘘ではない。


「まぁな。それと少年、『人間』ではなく『人族』って呼んだ方が良いぞ。『人間』だと、人類全般か人族単体のことか分からないからな。」

「あ、はい。すいませんでした。」

「別にいいさ。今後気をつけてくれれば。悪いが、俺はそろそろ行くよ。返事、楽しみにしておけ。」

「はい。ありがとうございました。」


出会いとしては約30分間の出会いだったが、ここで聖子の同郷と出会えたのはかなり大きい。

根拠のない直感だが、彼を鍛えることで下手をすれば俺より強い化物が生まれるだろう。

そうなれば、勇者パーティの戦力が大幅に上がって俺の出番が幾分か消えて、本来の目的も遂行しやすくなる。

俺は頭の中で彼をどう鍛えるか考え、軽く口角を釣り上げながら、商業区の方へ足を運ばせた。


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