( ゜д゜)・・・(つд⊂)ゴシゴシ(;゜д゜)・・・ (・_・ )―――C(_□_:)))ズリズリ
今回から書き方を少し変更いたしました。
俺達は隣国とフラブリー宗教国を繋ぐ橋の真上に転移し、周囲の人々を驚かせてしまった。
入国する際に一手間あったが、アスナン達がペルベーソ公爵に呼ばれた客人と分かると、ボディチェックもせずにあっさっりと入国が出来た。
俺の仕事は名目上アスナン達を送り届けるまでであり、それ以上アスナン達に関われば面倒なことになりかねないので、一度アスナン達から離れることにした。
披露宴の時にでも会えるだろうから、その時にでも詳しく話し合うか。
「キヨシさん!」
馬車を降りる際にアスナンに呼び止められる。
「絶対に、馬鹿な真似はしないでくださいね!!」
必死な顔で俺への忠告をしてきた。
アストリアンにはあらかじめペルベーソ公爵を消すことまでが依頼と明言したので、これ以上アストリアンへ打ち合わせをする必要も無い。
ここは、一度公然の前で何もしないと言った方が動きやすいかもしれん。
「安心しろ!何度も言うが、俺はお前の意志を尊重する!!」
本当はアスナンの意志に関わらずペルベーソ公爵を消すのだが、そこは今ここで言うべきことでもないだろう。
俺がそういうと、アスナンはどこか不安そうな顔をしていたが、それ以上言及はしなかったので納得したと判断していいだろう。
俺は、アスナン達と分かれた後に俺はルインと合流すべく、島の中心にある教会の本部へと向かう。
直接ルインに回収されるという手もあるが、ルインが光を屈折させる能力を使っている間、ルインは周囲に人が居ても見えないらしいのだ。
ルインが第三者といる時に勝手に俺を急に出現させる訳にもいかないし、下手をすれば俺が町の往来で急に消えて騒ぎになりかねない。
そのため、ルイン経由で聖子に連絡を入れて中心の協会本部の門前で落ち合うことにしたのだ。
「止まれ!そこのエルフ!!この先は許可のあるもの以外は入れることはできん!何者だ!!」
俺が、教会本部の最初の門を通った途端、門番から誰何された。
こうなることは予想できたので、予定した通りの受け答えをする。
「ああすまない。実は中の人と待ち合わせをしていてね。中には入らんから、門の前で待たせてもらうよ。」
「待ち合わせ?どこの誰だ!」
「現勇者の聖子・津美崎だ。」
「現勇者だと?ふざけるのも大概にしろ!」
ま、普通はそういう反応をしますよね。
俺だって何も知らなかったら自称現勇者と待ち合わせの人なんて怪しいだけの人だ。
「信じる信じないも好きにすればいいさ。俺自身普通から見ておかしいことは重々承知している。だが、待ち合わせ場所をここに指定したのも事実なんでね、悪いが勝手に待たせてもらうよ。」
「ふざけるな!このまま居座るなら、配信の疑いありとみてしょっ引くぞ!!」
うぁお、「しょっ引く」なんて刑事ドラマ以外で初めて聞いた。
俺が少しでも何かしようものなら増援か何かを呼ばれそうだったので、とりあえず俺は何もしないで塀に寄り掛かる。
その態度が自分達を舐めてると判断されたのか、さらに門番たちが殺気立った。
今にも斬りかかりそうな兵士とどう対処しようか悩んでいる清。
まさに一触即発の雰囲気になったが、タイミングよく渡し舟が来た。
「お~い、おじさ~ん!」
剣呑な雰囲気の中、すごく場違いな間延びした声が周囲に響いた。
門番はその声に毒気を抜かれたように殺気を収め、声のした方を振り向いた。
「ゆ、勇者様!?」
「あ、門番さんお疲れ様です。」
門番は聖子に対し畏まり、剣に当てていた手を放し、気をつけの姿勢になった。
対する聖子はいつも通り柔らかな笑みを浮かべ、軽く敬礼のポーズをして、俺の方へ向かってくる。
へ~、戦闘以外だと、あんな顔も出来るんだ。
証拠に話しかけられた門番は若干顔が赤くなっていた。
奥の門番も話しかけられた門番を羨ましそうな嫉妬の視線で見つめていたため、密かに人気なのだろう。
「おじさん、おまたせ。みんな待ってるよ。」
聖子に手を引かれて教会本部の中に入っていった清に対し、さらに濃い嫉妬の視線が注がれたのは言うまでもない。
「やっときたわね、お父さん。」
聖子に連れられて部屋に入った途端ルインにそう言われた。腰に手をやって「私、怒ってます」とでも言っている感じだ。
そりゃそうか、遠方から俺達を見守ってくれた上に光を屈折させた補助や面倒くさいブーマの相手を押し付けたんだから怒って当然かもしれん。
「悪かったって。今度なにか買ってやっから。」
「それじゃ、お城サイズのショートケーキ作って」
「常識の範囲内でいってくれ。そんな大きさのケーキを作るための材料を集めるなんて不可能だ。というか、そんなに食えば太るぞ。」
「いいもん。脂肪を(物理的に)燃焼させるから。」
いやそもそも胃袋に入るのか?
「とにかく駄目だ。」
「ちっ、」
「舌打ちしない。」
「じゃ、ラーメン3杯作って。」
俺がルインの要望を却下していると、やけに実現可能な要望が来た。
「急にグレードが下がったな。それに何でラーメン?」
ラーメン3杯も十分食べすぎな気がするが、先ほどの城サイズのケーキと比べると十分再現可能だ。
味玉は大雌鶏の卵を使えば再現は可能だし、チャーシューも雪猪の肉を使えば出来る。麺を再現するにはルインの協力が必要だが、不可能ではないだろう。
「聖子から聞いて美味しそうだったからハルキに頼んだけど、作り方が複雑っていって匙を投げられた。私じゃ作れないから、消去法でお父さんになった。」
確かに、現時点でラーメンの麺を及び味付け卵のつゆを作るにはルインの協力が不可欠だ。
ルインのチートをばらせば騒ぎになるだろうから、知り合いとはいえハルキに話すのは論外として、そもそもルインの料理は壊滅的に不味い。
何度か練習してはいるものの、その都度失敗して俺が処理しているが、一向に腕前が上昇する傾向は無い。
それはルイン自身も自覚しているようで、練習の時以外では人前で料理しようとはしない。
「分かった。この披露宴が終わったら作ってやるよ。とりあえずは目の前の問題だな。」
現在、俺が抱えている問題ではまず最初にペルベーソ公爵の処分と万一フラブリー宗教国に勧誘された際の対外的な拒否の名目探しだ。
「聖子、少しダンタリオン借りていいか?」
「へ?いいけど、どうして?」
「俺は、こういう格式ばった場所は苦手でな。国の重鎮相手に勧誘された際の拒否する言い方を考えたんだが、言い方がそれでいいか判別が難しくてな。少し相談したい。
ついでに一つ話し合いたいことがあってな。」
ルインにはペルベーソ公爵の情報を聖子達からなるべく聞き出すように指示は出したが、その後にペルベーソ公爵をどうするかは言っていないのでなるべく事を起こすことを秘密にしたい。
ダンタリオンに声をかけたのは、今回騒動を起こすのにダンタリオンの協力が不可欠だからだ。
「話し合いたいこと?」
「ああ。こいつの実験体に関する質問だ。本当なら、飛行船の中で聞こうと思ったんだが、先にアスナン達を護衛する仕事が入ったからな。」
「アスナン?」
「ああ、言ってなかったか。俺がスプリウム帝国で世話になった人たちだ。その時に長距離通信用のアイテムを渡してな。3日前に連絡が来た時にそのアイテムから送られてくる電波を逆算したら真下ににいたから外に出て急いで向かったんだ。」
「それがあの時大声を出した理由ってそういうことなんだ。」
「ああ。話を聞けば、アスナン達もここに来る予定らしいから、ルインがこの国につくまで俺が護衛について送ることにしたんだ。」
「ん?ちょっと待って、あそこって、たしかまだオウスッド帝国周辺だったよね?そこからどうやって3日でこの国に着いたの?馬車を使ったとしても軽く1週間はかかると思うんだけど。」
ハルキが疑問に思ったことを率直に清に聞く。
ちなみに、一週間とは、休憩などを前提としない超ハードスケジュールの時だ。
「あの時、ルインが俺を外に放り出したときと同じ力を使ったんだ。少し負荷がかかるが、ルインは長距離転移が可能なんでね。」
「・・・ほんと、あんたの娘って何でもありね。」
ハルキが眉間に皺を作って呆れた。
この状態で、さらに星はおろか、世界を壊せる力持ってますとか言ったら、どう反応するだろうか?
「何でも出来る訳じゃないけどな。実際、料理の腕は壊滅的だし、気に入らないことがあるとすぐ町を消すよとか言うし、ほかにもゲフゥ!?」
清の言葉が途中で遮られた。
突然ルインが腹パンを食らわせて吹き飛ばしたのだ。
吹き飛ばされた清は壁にめり込んで化石みたいになった。
アスタロト戦でも何度か見た光景だが、その時とは威力が違う。
加えて、建築物の壁は祠の壁よりも耐久度が低いからか、その時よりも深くめり込んだ。
「お父さん、悪夢を見るのとさらに壁にめり込むの、どっちがいい?」
「ど、どちらも拒否する。」
「OK分かったわ。両方をご所望ね。」
「いやだから、」
「歯、食いしばりなさい。」「ドカ、」
「おいちょ、やめ・・・」「ガス、」
「・・・」「ボカ、」
とうとう、清は沈黙した。
ご丁寧に殴る際に桜とオヒューカスが間に入らないようにそれぞれの刀に結界を張って動きを封じた上で行っていた。
いきなりの光景に周りが唖然としていると、ルインが首をグリンと回し、聖子達を見回す。
聖子達の肩がビクッと跳ねた。
「・・・あなた達は何も見なかった。いいわね。」
笑顔で聖子達に語り掛けるルイン。
しかし、目がちっとも笑っていなかったため、ほぼ無意味だった。
不意打ちとはいえ、圧倒的防御力を持つ清を殴って沈黙させた化物に対し、聖子達は恐怖しコクコクと無言で首を縦に振るしかなかった。
「それじゃ、この話はこれでおしまい。さて、私とお父さんは話があるから、悪いけど部屋に向かうわね。ダンタリオン、付いて来て。」
「出来ればご遠慮したいのですが・・・」
「何か言った?」
「イエ、ナンデモゴザイマセン。」
強引に話を中断したルインはダンタリオンの意志を半分無視し、未だ壁にめり込んで沈黙したままの清の襟首を引っ掴んで、引きずりながらあてがわれた客室へと向かった。
道中、大の大人を引きずる幼女を見た大人たちが思わずルインを二度見したのは言うまでもない。