(メ `◇´)r鹵~<炎炎炎(;゜ロ゜)炎炎炎>(`◇´ メ)
「キヨシさん、先ほどお父様にも話したことですが、お話がございます。」
村の中心の市場の様な所で人参や大根、キャベツといったいくらかの新鮮な野菜を入手した俺達は、アスナンを休ませる目的もあって、近くの酒場へ移動した(もっとも、入手した野菜は全てがもどきだったため、地球の人参や大根などと同じように調理していいかは疑問だが…)。
今は真昼なため、中はさほど混んでおらず中にはマスターと数人の客がいた程度だ。
そこでアスナンは優雅にミルクを、俺は昼間から酒を飲むわけにもいかないので、村で育てているランドミンというオレンジに似た柑橘類の果実を用いたジュースを飲んだ(もっとも、飲んだところで毒操者が中和するから酔うことは無いが・・・飽く迄勤務中という体裁を整えるためだ。)。
「キヨシさん、フラブリー宗教国へ着いたとしても決してペルベーソ公爵を害そうなどと思わないで下さいね。愛した人が犯罪者として裁かれるなど、絶対に嫌ですから。」
俺の眼を真っすぐ見つめ、アスナンは「何もするな」と忠告してきた。
「それは、お前の反応によるな。お前は、そのペペロンチーノとの婚約を望んでいるのか?俺だってお前には幸せになってほしい。お前が『それでいい。幸せだ』と胸を張って言えるのか?」
「言えます。」
ノータイムで返事をされる。
俺は、彼女の瞳をたっぷり数十秒真剣に見つめ口を開く。
「分かったよ、あんたがそれを望むなら、俺はもう何もしない。フラブリー宗教国へ着いたらアストリアンに謝って殴られるさ。それよりも・・・」
俺は一端そこで話を中断する。
「そこのあんたら、俺たちに何か用かい?」
俺は先ほどから俺達、というかアスナンをギラギラした視線で見続けている入り口の男どもに声を掛ける。
声をかけられた奴らは一瞬肩を震わせたが、すぐに威勢をとりもどす。
この後に起こるであろう展開がある程度予想出来るので、一応準備をする。
「いんや、あんたに用はない。俺達が用があんのはそこの女だ。」
「そうか、だが俺達はこのあとすぐにここを立つ予定だ。アポのない奴らはお断りする。」
会話をした所、口臭が酒臭いので、酔っているのだろう。
昼間だから人通りが少ないとは言え、酒場なんかを休憩所にした俺の采配ミスだな。
「お前には聞いてねぇよ。どうだい、嬢ちゃん。俺達とイイコトしねぇかい?」
「へへへ、兄貴~こんな上玉兄貴だけ楽しむなんてずるいですよ~」
「そうそう、俺たちにも遊ばせてくれよ~」
下卑た笑みを浮かべ、背後にいるアスナンを値踏みするように見ている。
とりあえず、無言で威圧スキルを発動させる。
「「「っひぃ!?」」」
手加減したとはいえ、レベルの高い俺の威圧スキルを真正面から受けて失神しないとは、俺達に声をかけた男たちはそれなりに強者だったらしい。それでも、威圧スキルにビビってる時点で、俺にとってはそこら辺の冒険者と比べて50歩100歩だが。
「はぁ、何でこうテンプレ的展開になるのかね・・・悪いアスナン。休憩は終わりだ。さっさとアストリアンの元に戻るぞ。」
アスナンはテンプレなるものを知らなかったため、清の発言には首をかしげていたが、このままここにいても面倒なことになるだけなので、清の意見に従った。
「悪い、もっと周りに気を配るべきだった。」
宿へ向かう途中、俺はアスナンへ詫びた。
今なら、わざわざ酒場で休まずに宿へ戻って休むことも出来ただろうと自分を責めている。
「いえ、大丈夫です。それよりも、ルインちゃんはあとどれくらいでフラブリー宗教国へ到着するのでしょうか?」
アスナンは俺を気遣ったわけでもなく本当に問題ないといった顔だった。
「あ~・・・記憶が正しければあと3日って所だな。それまでになるべくフラブリー宗教国へ近づくつもりだ。宿へ着いてから直ぐに向かえば、恐らく1/3位は近づけるはずだ。」
「そうですか、それでは、早く出発した方が良いですね。先ほどの方たちが馬鹿な真似をしでかさない前に。」
「お、おう?」
あれ?アスナンってこんな毒舌言う人だったっけ?どことなく雰囲気が違うような・・・
どことなく違和感を感じたが、突っ込むと藪蛇になりそうだったので、とりあえず何も言わずに宿へそのまま直行し、宿を引き払って出発した。
「おいお前ら止まれ!!」
俺達が馬車で村を出ようとした時、急に前に人が現れて馬車の停止を命令した。
声に聞き覚えがあったので顔を見ると、先ほど酒場で俺が気絶させた一味の一人だった。
「へへっ、こっちはやられっぱなしって訳にはいかねぇんだよ!!」
「女を置いていきな!そうすれば、半殺しで許してやるよ!!」
「ま、最終的には俺たちなしじゃ生きていけなくなるだろうがな~」
相変わらずの下卑た笑みをと話し方をしながら、道を塞いでいた。
酒場ではもっとメンバーがいたはずなので、恐らく近くの茂みに隠れているか未だに気絶していて酒場に置いてきたのどちらかだろう。
ま、どちらにしろ律義に停まってやるいわれはない。
「あきら、減速をせずに突っ込め。」
『御意に。』
俺は、あきらへ指示を出し、馬車を止めるそぶりを一切せずに男どもの所へ突っ込んだ。
「は?おいおいおいちょっ、止まれ~!!」
「「うわ~~~!?」」
最初に俺たちに声を掛けたリーダー格がさらに停車を促すが、聞くつもりはない。
全員、ぎりぎりのところで馬車を避けたため、怪我はしていないから問題ないだろう。
「シュッ」「ん?」
俺が馬車を動かしていると、左の木々から矢が飛んできた。
しかし、空中で溶け、それ以降形を維持できずに空中でドロドロに溶けて地面に落ちた。
何度か同じように矢が飛んできたが、その全てが空中で溶かされた。
もう分っているだろうが、既に清は毒障壁を展開している。
今ここには居ないがルインが飛行船から能力を使ってアシストしてくれているはずなので、外部からは空中には何もないように見える。
「キヨシ様、流石に今のは・・・」
俺の隣でエマが頬を引きつらせて清の行動を窘めた。
「おいおい、俺はあいつらを助けたんだぞ。」
「助けた?」
どうやら、分かってないようだ。
「お前、今そこにいるお前の主人の性格がどんなのか知っているだろ?そんな奴の前でアスナンやアインを自身の性欲処理の手段なんかとみた男どもの未来がどうなるかは想像できるだろう。それに、あいつらはもともと俺らを襲うつもりだったんだ。多少怪我をした所で文句が言える立場じゃないさ。」
「な、なるほど・・・」
今回の突発的な犯行から、今後彼らが関わってくることは無いだろうが、道中で盗賊共が襲ってきたらと思うと、正直言って彼らに同情したくなる。
もっとも、飛び道具を封じる清の障壁、エマの妨害、連射性は無いが長い射程と高い精密性を持つ清の遠距離攻撃、やっと接近しても障壁で装備品は使えなくなるし、清が対処出来ればいいが、最悪鉄筋を振り回す老人に手加減なしに殴られるのだから、襲撃者からすればどう足掻いても絶望しかないのだが・・・
道中、2日間の旅路の間に約3回ほどの魔物からの襲撃と10回を超える盗賊の襲撃があった。
魔物の襲撃に関してはしかたないとして、盗賊からの襲撃が多すぎないかと思い、2日目の晩に定期連絡をしてきたルインに対して質問した所、盗賊同士の権力闘争が発生し、いくつものグループに分かれた結果らしい。
盗賊の間でも権力闘争なんてあったんだな・・・
「やあ、キヨシ君。」
3日目の早朝、アストリアンが他の人たちよりも一足早く起きて、清に挨拶をした。
因みに、清はここ2日間に2時間ちょっとしか睡眠していない。
「そろそろだね。フラブリー宗教国へ移動するのは。」
ルインの船の速度からして今日の昼間にはフラブリー宗教国へ到着するだろう。
「頼むよ、アスナンのことを。」
「任せろ。」
しれっと、一昨日アスナンとした約束を反故にする清。
実はあの状況でアスナンが何を言おうと、清はペルベーソ公爵を消すつもりだった。
あの約束は、このまま主張を変えなければ面倒臭くなると判断した清が適当に話を合わせただけだったのだ。
勿論、キヨシもペルベーソ公爵がラノベ主人公みたいに手を出した女性にちゃんと責任を取って幸せにするという人であればそのようなことはしない。
しかし、ここ数日間ルインからの情報提供ではフラブリー宗教自体も対処に困っているただの身中の虫なので、完全に清の行動は決まった。
汚物は消毒じゃ~ヒャッハ~!!
「おはようございます、キヨシさん、お父様。」
そうやって、アスナンに内緒で二人が口裏を合わせていると、事の当事者であるアスナンが起床した。
道中でアスナンに対していつも通りに対応して不審な動きは見せていないので、恐らく俺達の企みはバレてはいないだろう。
次第にエマもアインも起きたので、少し早いが朝食を取ることにした。
朝食には大根もどきと人参もどきを使った野菜スティックと、道中襲ってきた大雌鶏の卵を用いたスクランブルエッグと、道中で入手した硬いパンを食べることにした。
大根もどきと人参もどきは毒操者で成分を調べた所、栄養成分は普通の大根・人参と変わらないが、なぜか味がサツマイモみたいな甘い味だった。
この大雌鶏、何と出合い頭に野球ボールサイズの無精卵を飛び道具として放ってきたのだ。
まさか卵で攻撃するとは思わなかったので、一瞬対処に遅れたが、毒障壁のおかげで当たることなく障壁に触れて地面へ落ちた。
その後、何度か同じ攻撃をしてきたため、俺は障壁の一部を解除し、回収を試みた所、タイミングよく腕で掴んで回収に成功した。
一度食べてみたが、普通の卵よりもコクがあって栄養価も高かったので、何度か食事に使用している。
俺は、早く護衛の仕事に戻れるように、人数分の食事を作ったら野菜スティックとスクランブルエッグをパンに挟んで一気に口に入れてさっさと食事を終わらせた。
アスナン達は仲睦まじくお話をしながら食事を取っていたため、終わるのに時間が掛かったが、おおむね予定通りの出発となった。
そうやって、昨日と同じようにフラブリー宗教国へ向かっていると、突然目の前の空間が歪み始めた。
「き、キヨシ様、これは一体!?」
突然の事態に隣に座るエマが慌てるが、俺はこうなることを分かっていたため、特に慌てることは無かった。
「大丈夫だ。ルインがフラブリー宗教国へ到着したんだろう。これはルインが空間を繋げてくれた状態だよ。」
俺がそういうと、エマが目を見開いて歪んだ空間を凝視した。
対する俺はエマが取り乱したため停車させた馬車をその空間へ進める。
まるで、前方へ引っ張られるような感覚と共に、次の瞬間目の前が光って出口へと出た。
勇者召喚の術を持つ世界唯一の国、フラブリー宗教国。
当初の予定とはだいぶ違うが、清は、なんとか無事に到着できたことで安堵したと共に、これから起こす騒動に対して気を引き締めた。