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フラブリー宗教国へ

ドドドド!!

朝から騒々しい音が廊下からする。

俺は、まだ暖かいベットで寝たい誘惑に耐え、万一の可能性を考えて一緒に寝ていたオヒューカスを奥に押しやる。

「ドスン」「おじさん!大変だよ!!」

謝ってオヒューカスをベットと壁の溝に落としてしまったが、上手いタイミングでドアが開け放たれたため、オヒューカスが落ちる音はかき消された。

開け放たれたドアの外には肩で息をしている聖子とナタリーの姿があった。

「おう、おはよう聖子。朝はもっと静かに迎えたいものだがね・・・」

オヒューカスの存在を覚らせないために、努めていつも通りの対応をする。

ちらっと見た所、オヒューカスは不可視の障壁の中に囚われていたため、ルインが結界を張ったのだろう。少し苦しそうだが、我慢してくれ。

「うん、実は昨日ね・・・」

聖子の話を要約するとこうだ。

昨日、帰還したときに、現場の人たちと打ち上げがあったらしい。

その時にお酒を配られたらしいが、ナタリーがとても弱く、あっさり酔って秘密にしなければいけない清の活躍をベラベラと喋ってしまったらしい。

慌てて仲間が止めようとしたものの、ナタリーは勇者パーティの中でもトップクラスの物理攻撃力を持つ故に、そんな彼女の荒行をとめられるメンバーはいなかった(一応擁護すると、ナタリーは物理攻撃特化のステータスで、毒物への体性が低かったことが原因だ)。

結果として、あっというまに秘密にすべきことがバレてしまった。

幸いにして、酔いつぶれるのも早かったため、ダンタリオンや桜の秘密を言うことはなかったらしいが、それでも言ってはならないことを言ったことに変わりはない。

とりあえず、ナタリーは後で鉄拳制裁ということは理解した。

「・・・・」

「・・・・」

しばらく、誰も喋らない無言空間が続いた。

話の合間に他の勇者パーティも来たため、部屋が大分きつくなっている。

「ナタリー、」

俺が口を動かすたびに、ナタリーの肩がビクッとはねる。

悪いことをしたという自覚はあるようだ。

「お前、今後一生休肝日な。」

まるで、奈落の底に突き落とされたような絶望の顔をした。

「それで?大変ってなんでだ?別に特に問題があるようには思えんが?」

「うん、実はね、祠を調査しているメンバーにフラブリー宗教国の人もいて、おじさんへの褒美をしなくちゃってことで国に連絡用のマジックアイテムで伝えちゃったみたい・・・私は本人が目立つのを嫌がっているからやめてあげてって言ったんだけど、調査隊にはいろんな国々の人もいてね、下手をすれば勇者を助けてくれた恩人になんもお礼をしなかった薄情な国ってことでメンツが潰れるって意見を聞いてくれなかったんだ。」

確かに、そうなると、フラブリー教の信用はがた下がりだろう。

勇者召喚の能力を持つのはフラブリー教しかいないため、全く信用が下がることはないだろうが、聖子が魔王を討伐すれば、100年以上勇者召喚は行われないため、その間面倒なことになるのだろう。

「結果として、昨日の時点でおじさんをフラブリー宗教国へ連れていってお礼をすることとは決定しちゃったんだ。ついでに、フラブリー宗教国本国でも大悪魔討伐の祝杯を挙げるって。おじさんを連れてくるように言われてるんだ。多分僕にもおじさんにも拒否権は無いに等しい。」

祝杯云々に関しては特に変ではない。

人は目の前の大きな仕事が終わると、遊びたくなるものだ。

今回はついでに俺へのお礼+それを名目にしたお披露目をするつもりなんだろう。

勿論、断ることも出来なくはないが、それをすることは実質的にできない。

最近ほぼ忘れているが、俺はスプリウム帝国の士爵という立場にある準貴族だ。つまり、対外的には一応スプリウム帝国に仕えているという扱いになる。

最下級とはいえ、国に仕えている人間が他国からの呼び寄せを拒否すれば、その国を舐めてると見られ、国際問題になりかねん。

フラブリー宗教国自体ははそんな風にはみないとしても、他の国々の中には上げ足を取るのが大好きな輩もいるため、そんなことをすれば間接的にスプリウム帝国にも迷惑をかけかねん。

それ位政治面での立場というものは絶対なのだ。

「分かった分かった。気は進まんが、身から出た錆だ。口約束だけで終わらせたり、秘密をベラベラ喋った俺自身も悪い。一体いつ出発なんだ?」

「ありがとうおじさん。出発は教の午後。本当は今日の昼間に出発する予定だったんだけど、急に言われても準備できないでしょってことで午後に先のばされたんだ。」

「一つ質問していいか?昨日ギルドでフラブリー宗教国の場所を確認したんだが、大分離れてないか?あんな遠い場所へ徒歩で向かうのか?」

フラブリー宗教国のは地球でいう所の台湾のような位置に存在するのに対し、リーフレスト連邦国はアフリカ大陸の真ん中あたりに存在する国だ。

徒歩で向かうとなると、数カ月は要する。そんだけ経てば打ち上げする時期では既にないだろう。

「あれ?言ってなかった?私たちは飛行船っていう魔力で空中に浮かぶ乗り物でフラブリー宗教国からリーフレスト連邦国へ一直線に数日で着いたんだよ。」

そんな事実初耳ですが?

聞けば、上空を飛行している魔物に発見されにくいように魔物除けの結界も張っており、移動中はかなり快適な高性能飛行船らしい。

「分かったよ。それまでに準備しておく。それよりも、そろそろ着替えたりしたいんだが・・・」

俺達は聖子達が来てから、ずっと就寝着のままだ。

オヒューカスなんて、ずっと結界の中に閉じ込められている。

そろそろ解放しないと面倒だ。

「あ、もう出るよ。騒がしくてごめんね。」

そう言って、聖子は外に出る。

タイミングを合わせてルインが音が漏れないようにした後にオヒューカスを閉ざしていた結界を解除した。

「ちょっとマスター!いきなりベットから落とさないでくださいよ!!」

「悪い悪い。聖子に気づかれる訳にはいかなかったんだ。」

「それはそうでしょうが!!」

大分ご立腹だ。ここはさっさと話題を変えた方が良いだろう。

「それよりも、早く出発の準備をしたい。お前の事は一応武器としての小太刀として扱いたいから、変化してくれ。」

未だに何か言いたそうだったが、直ぐにオヒューカスは小太刀の状態に戻った。

刀身の峰には蛇の鱗の様な濃い緑色の模様が付いている意外は別に新しくも古くもない普通の小太刀だ。

武器の目利きに鋭い人以外、この武器の性能には気付かないだろう。

「ルイン、桜、準備してくれ。さっさと朝食を食った方が良い。」

俺はルインと桜を急かして宿を引き払う準備を進める。

もっとも、桜に関しては自身の衣服を自由に変化できるため、特に問題は無いだろう。

ルインは亜空間に自身の衣服を収納しているため、俺たちの荷物は決して多くはない。

準備を終えた俺達は早速朝食をとるため、宿の食堂へと向かった。



時刻は既に朝の9時を過ぎたあたり。

さすがにこの時間に朝食を摂っている人はすでにあまり居なかった。

聖子達は起床後直ぐに俺たちの宿に来たらしく、食堂で朝食を食べていた。

この宿の朝食は全体的に洋食風でロールパンの様なものにスクランブルエッグとベーコンにサラダ、それと、柑橘類の様なデザートだった。リーフレスト連邦国国内に魔物は存在しないため、全て普通の食材だろう。

柑橘類はレモンの様な外見をしていたが、味と臭いは蜜柑の様な味わいだ。

スクランブルエッグもベーコンも少し薄い程度の味付けで、朝食にあまり濃いものを食べたくはない俺としてはありがたい。

パンは若干硬かったので、マーガリンが欲しかったが、全体的に朝食としてはぴったりだった。

聖子達が既にとっている席が丁度3人分空いていたため、そこに座ることにした。

俺以外が全員女性なため、周りの男性客から嫉妬や怨嗟の視線を向けられたが、うっとおしかったので周りに威圧スキルを働かせて黙らせた。

「あ、言い忘れておりました。」

朝食を食べている間、セイリが俺たちへの注意事項を言った。

曰く、フラブリー宗教国では桜に刀の状態になってほしいとのことだ。

銀髪紅眼(アルビノ)は過去の歴史的に見ても、人類に牙を向く可能性が高いので、フラブリー宗教国国内では肩身が狭い思いをする可能性があるため万一のために彼女の存在は伏せておいてほしいとのことだった。

勿論、銀髪紅眼(アルビノ)全てが人類に牙を向く訳ではないし、そんなことを考えているのは一部の宗教家だけだ。それでも、フラブリー宗教国も過去に国内で銀髪紅眼(アルビノ)が暴れた結果多大な犠牲者が出てしまったため、それ以来銀髪紅眼(アルビノ)は入国禁止という扱いになっているようだ。

俺は一瞬フラブリー宗教国へ向かう事を拒否しようかと真剣に考えたが、セイリと聖子自身が非常に申し訳なさそうな態度をとることから、宗教の中枢ゆえに曲げられない事実なのだろうと察し、桜自身も少し悲しい顔をしたが先手を打って拒否しないように言われたので、フラブリー宗教国へ向かう事にした。

日常生活をおくる分には問題ないが、宗教面で見れば大半の宗教が銀髪紅眼(アルビノ)を敵視している為、今後桜を狙う輩に注意した方が良いだろう。

ちなみに、オヒューカスは人型よりも小太刀の状態の方が感覚的にしっくり来るということなので、終始小太刀の状態で静観していた。

食事中にダンタリオンがじっと見ていたが、何も言わないように指示を出したため、突っ込むことはないだろう。



朝食を終えた俺は、日本人的感覚が働き、招かれている立場だが何か持っていった方が良いかと思い、ルインに頼んで幾つかの宝石を改造したり、安く買ったお酒を熟成してもらった。

宝石に関しては法律違反な気もするが、それ以外で俺が渡せるものは無いし、余り物を送るのも失礼だろうと思ったからだ。

お酒は地元(前々世)で見たお酒の名前を適当に付ければバレないだろう。

バレなきゃ犯罪じゃない。うん。

少し慌ただしく出発の準備を整えたが、俺達は聖子達と共にフラブリー宗教国へ向かった。



設定集の方においてフラブリー宗教国とリーフレスト連邦国の地理情報を書いていなかったので、編集いたしました。


次話を投稿する前にオヒューカスの解説を設定集の方に入れるため、少し投稿が遅れます。

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