( `・ω・´)っ<クニノオッカサンガナイテルゾ、クウカ?\蒲焼/
さて、タレが出来たから、次は石化蛇のかば焼きだ。
作り方は東方風がいいかな?西方風が良いかな?
「聖子、尋問中に話の腰を折って悪いが、お前って東方出身?西方出身?」
「え?おじさん何?急に。というか、東方西方って何?」
「・・・地元の東側に住んでるか?西側に住んでるか?」
「関東か関西どっちに住んでるかってこと?私は神奈川県在住だったから関東だよ。」
「カナガワ?守南河市か?分かったなら東方風だな。」
確か、地元の伝説で南方から来た敵の軍艦だけをピンポイントで沈めまくった龍神様の尻尾の一部と言われる川が流れる都市だったよな。
「ごめんセイリ、ちょっと取り調べ任せるね。おじさん、おじさんの地元って関西関東って言わないの?」
「ああ、俺の地元はかつて馬鹿なトップが付いたらしくてな。その時に『自分が世界の中心だ!』とかいって中方地方から東を東方、西を西方って言ったらしくてな。地元の神話でもディスられているちょっとした笑い話なんだが、有名すぎて二ホンを3分割して大体の場所は特定できるんだ。中方地方を境に分化が細かいところで違うところが多いんだ」
「私の地元では近畿地方の東側にあった関所を境に関東関西って分けてたけどね。」
「キンキ地方って、中方のことか?となると、境は京の東側か?」
「京っていうのが京都ならそれ位だね。」
「ま、とにかく東方風作りでいいな。世界が違うから味が違うかもしれんが。」
「問題ないよおじさんの料理美味しいし。本当に自炊程度だったの?」
「ズルをして料理スキルを無理やり上げたんだ。誇れるもんじゃないさ。お前もやろうと思えばできるぞ。何をやるかは自分の勝手だしな。」
前世は結構料理が雑な世界だったからな・・・せめて自分が食べる料理だけでも美味いものが食いたいと思って躍起になって料理スキルを上げたものだ。
おっと、そんなことより蒲焼を作らないとな。
東方風の作り方はまず背開きから始まる。身崩れせずに腹部の脂をしっかり落とせる特徴がある。
串は竹串を本来使うんだが、近くに木材しかないため、殺菌毒で念入りに消毒し、ルインのGeneで串の形にした串を使った。
身と皮の間を縫うように串を入れるのが特徴だ。
たしか焼く前に蒸す工程があったよな・・・
「ルイン!水蒸気って作れるか?」
「やってみるわvapor」
あっさり水蒸気が発生した。外部に漏れずにしっかり蒸せるようにZoneで外界と隔離して、木串で刺した石化蛇を蒸す。
元々石化蛇はあまり油は無かったのだが、蒸したことでさらに脂が落ちた。
軽く菜箸で突てみたがしっかり柔らかくなっていたな。
焼き台に関してはまたしてもルインのGeneで作って、火を通すのもHeatを使って手伝ってもらった。
「火の強さはどれくらがいいの?」
「知らん。必要になったらその都度調整を頼む。悪いが手伝ってくれ。」
何せ、鰻は裂き八年、串三年、焼き一生と言われる気の長い道だ。
基本冷凍食品で作ってた俺が詳しい事を言えるわけがない。
今までの知識も全部ネットで調べた知識をを見よう見まねで再現しているだけだ。
やはり、初心者には職人の腕の再現は難しいらしい。
当然と言えば当然だ。
しかし、高い料理スキルのおかげで3回ほど失敗してコツを掴めたため、それなりに成功してきた。
ズルで成功している為歴代の鰻焼き職人さんたちには若干申し訳ないが、これも美味いものを食うためだ。美味しいは正義!
・・・なお、失敗作は全て清が美味しく頂きました(生焼けや炭ばかりでお世辞にも美味しくは無かったようだが・・・)。
「う~ん!いい匂い!!」
ほぼ失敗をしなくなったため、本格的にタレを使って鰻を焼いていった。
パキパキとタレが焼かれて爆ぜる音とタレの濃厚な匂いが食欲をそそる。
お米は鰻を焼いている間にルインに炊いてもらう。
Eternalがあるから一瞬で炊き立ての完成だ。
聖子がインベントリに自分と仲間の丼を持っていたため、彼女らはそっちを使っておらって、俺達は王都イルペウで入手した木の皿を使った。
米をこんもりと各々の皿に盛って、白い面が見えなくなるほど石化蛇の蒲焼を乗せる。
「うんめ~~!!」
口に入れたナタリーが開口一番大声を上げた。
どうやら、みんなの口に合ったらしい。
俺も食べてみたが、箸をおいた途端、身がふっくらと崩れ、口に含むと溶けるように身が消えていった。それでいて、少し塩味が強いタレがお米に合っていた。
「へ~石化蛇って、鰻みたいな味がするんだ。」
「元々が蛇だから脂身は多くは無いがな。脂身を多く残す西方焼きは少し合わないかもな。」
「いや、私そもそもどっちも出来ないから・・・おじさんよく初めてなのに成功するよね。」
初めてで成功したわけじゃないぞ。
既に俺の胃袋に消えているが、タレを使った焼き方だけでも既に10回位失敗している。
白焼きの方は何となくコツは掴んでも、やっぱタレが付くと難易度が一気にあがった。
料理スキルを無理やり上げるというズルをしてこのありさまなんだ。
本職の鰻職人さんは、スキルなんて概念なしに自力でここまでいくんだから、脱帽しかない。
「ところで、今更だが、取り調べは終わったのか?作っている間に聞き耳をたてていたが、まとまった感じはしなかったが?」
「おじさん(キヨシ様)がこんなもの作るからでしょ!!」
・・・どういうこと?
セイリと聖子曰く、タレを焼く臭いでちっとも取り調べに集中できなかった様だ。
実際、ダンタリオンもちゃっかりと自分の皿で鰻丼を食べていた。
彼女も臭いに引き付けられたのだろうか?
「なら、さっさと始めようぜ。ルイン、手伝ってくれ。」
「?私?」
自分が指名されるとは思っていなかったようできょとんとしていた。
ダンタリオンの顔の左半分が明るい光球によって照らされる。
ダンタリオンは眩しさから目を守るように左手を顔に当てた。
「おい、国のおっかさんが泣いているぞ。さっさと全部吐いちまいな。」
「いえ、私は悪魔ですので、そもそも母親はおりませぬが・・・」
「かつ丼はねぇが、これ食いねぇ。俺のおごりよ。」
「いえあの、私も先ほど頂いたのですでに十分なのですが・・・」
「おじさん、ひょっとして、そのセリフ言いたいだけだったりしない?」
バレたか。
後ろにセイリたちのジトっとした視線を感じるが、無視だ無視。
「悪い、少しふざけた。真面目な話、どこら辺まで話は進んでいたんだ?」
「ダンタリオンに自分の主人が封印されようとしていたんだから、もう少し邪魔しようとは思わなかったのかを聞いていた所でキヨシ様が話の腰を折りましたね。」
「なら、そこからだな。ルイン、光球をもうちょっと近づけてくれ。」
「強い光を近くで当てるのは必要なんだね・・・」
ルインは俺の遊びに付き合うのが馬鹿らしいと思ったのか、光の強さを和らげて周り全体を照らし始めた。
「それで、改めて聞くけど何でアスタロトが再封印されるのを止めなかったの?」
「アスタロト様は一度封印を解いていただければそれでよいと言いましたしね。私の仕事はそれで終わりですから。」
「残業はしない主義ってこと?それでも、あの後に私たちを襲ったことは覚えているのに、何で今はなにもしないの?」
「そうですね。単純にあなた方と離れるためだというりゆうだけですね。」
「?どういうこと?」
「・・・・主人が復活した時点で、自分と聖子達が敵対する可能性が高かったから、先制攻撃して怯んだすきに逃げようとしていたってことか?」
考えてみれば、あの時ダンタリオンは消費魔力の高い魔法をドカドカ撃っていたが、即死しそうな技は一つも放っていない。
巨岩に押しつぶされようと、勇者の耐久力ならば、即死はせずにセイリの回復で対処できる。
実体をもった高威力闇魔法も押しつぶされて重傷はおっただろうが、髪と目が緑色の状態では、圧倒的回復力で凌ぐことも出来た。
俺とルインが護っていたセイリにも魔法が何発か放たれたが、俺が対処しきれない数の魔法は放たれなかった。
「それでも、ナタリーとガイアを貫いたよね。偽物だったけど・・・」
「いや、それは違うぞ。あれはダンタリオンがした攻撃じゃない。」
「?どういうこと?」
「あれをやったのはアスタロトでダンタリオンじゃない。アスタロトだ。」
ルインが操っていたナタリーとガイアを貫いたのは封印されていたアスタロトの邪気だ。
「・・・言われてみれば・・・」
解説をされて納得を示す聖子、ダンタリオンも、申し訳なさそうな顔をしていたため、あの攻撃も彼にとっては予想外の攻撃だったのだろう。
「まとめると、ダンタリオンは正面切って聖子とやりあったら勝ち目がないと判断したため奇襲をして聖子達を戦闘不能状態に追い込んで逃走しようとしていたってことか?今戦闘を行わないのも勝ち目がないから?」
「そういうことですね。もっとも、戦闘中にあなた方を利用していたというのは本当でしたけどね。」
「なるほど。俺からもいくつか質問させてくれ。あんた、一体何体の生き物を創った?」
「・・・なんのことでしょう?」
「とぼけるなよ。ウィントゥル帝国で大量のイナゴを放ったの、お前だろ。」
「・・・何故私だと?」
「あの大量のイナゴの名前は『軍隊蝗』、ラテン語だった。」
ラテン語といった途端にダンタリオンの表情が目に見えて変わった。
ラテン語ってのは、時代的にキリスト教の誕生したときに使われていた言語だ。
そして、アスタロトやダンタリオンはユダヤ教にも名前が乗る位の大悪魔。
ラテン語を使えない訳が無い。
「ラテン語なんて、この現代めったに使う事のない言語だ。それをわざわざ使うってことは、考えられる理由は本人の趣味かラテン語をよく使う人物か使える人物。
訳分らん名前が付いた存在なんて薄気味悪いことこの上ない。名前自体は鑑定スキルを持てば死体から誰でも調べることは可能だしな。あの害虫どもは、俺達が処理したが、下手をすればウィントゥル帝国だけでなく、奥にあるスミス共和国やスプリウム帝国の作物を全てやつらに食い荒らされかねなかった。あれほど沢山のイナゴを保存する空間があるなら、他の生き物を作ることも保存することも可能なはずだ。
俺はウィントゥル帝国でこの世界出身とは思えない魔物を倒したし、スプリウム帝国の東で実態を失った化物に変質した人間に襲われた。詳しくは見えなかったがその人間は何かを砕いて化物になった。アイテムがあったってことは使い方を誰かに教えられた可能性もある。
俺の呼んだ話ではダンタリオンてのは悪魔の中でもトップクラスの知能を持つ存在だ。実際、人間体のあんたのステータスも知能がかなり高いみたいだしな。」
「・・・恐ろしい洞察力ですね。我々の事も僅かな情報で調べましたし、普段ふざけた態度をとる人と同一人物とは思えません。」
「良く言われるよ。で、実際の所どうなんだ?言っとくが誤魔化しは効かんぞ。俺の娘の嘘発見精度は誰にも負けないからな。」
「Psychology」
ルインが俺にも嘘発見技を当ててくれる。本当は聖子たちにもかけたかったが、それをすると、ルインの能力を根掘り葉掘り聞かれそうなのでルインに自重してもらった。
「はぁ、何を言っても無駄なようですね。確かに、私はいくつかの生き物を使って生物を作りました。しかし、一応言っておきますが、私は生き物の創造が専門であってあなたがたが最後におっしゃった、人をガス状に変化させるアイテムなど私は知りません。」
Psychologyの反応は・・・真、嘘はついていないな。
バボのあの暴走はこいつが原因ではなかったのか。
「ウィントゥ帝国での騒動に関しては生き物を作ったのは確かに私ですが、全て私の不手際が原因です。ほんらい、あの生き物を解き放つつもりはございませんでした。」
これも真。
「不手際というのは?」
「牛蜘蛛の時はあの個体の放つ酸性の毒が強力過ぎて保存していたカプセルが毒で侵されて内部から浸食されて逃げられたのです。」
「牛蜘蛛?ルイン、教えてくれ。」
「ウアッカム、アラネ・・・アラテン語でそれぞれ牛と蜘蛛ね。お父さんは牛鬼って呼んでたけど、蜘蛛と牛の合成獣だったみたいね。」
ま~たラテン語か。
俺、ラテン語習ってないから、逐一ルインに教わるしかないな。
「イナゴの大群も保存カプセルから逃げ出した個体が保存カプセルの装置の隙間に入って壊してしまって逃げ出したのです。私が聖子様と長く行動を共にしていたせいで発見が遅れました。」
この発言にも、Psychologyは嘘の反応を示さなかった。
「意外とペラペラ喋るんだな。」
「嘘をついても無駄だと分かっていますから。それに、私はアスタロト様みたいに進んで人々と敵対したい訳ではございません。」
「他の生き物は?」
「全て保存カプセルの保存液を下げて低温処理いたしました。全実験体の冷凍保存を確認したので、もう逃げることもないでしょう。」
「それでも、過失とはいえ多くの命を危険にさらしたことには変わりはないぞ。」
イナゴ軍団はともかく、牛鬼に関しては調査隊が既に何人も死んでいたらしい。
話しぶりからして単なる合成獣だから、個体を増やすことは無いし、実験的にくっつけていた個体が逃げ出しただけで、まだ同じような生き物は作っていないみたいだから、再発の可能性は低いらしいが・・・
「分かっています。どのような罰でも甘んじて受けます。あなた方が望むのならばこの首も差し出しますよ。」
その言葉に聖子が少し悲しそうな顔をする。
今まで一緒に戦ってきた仲間が処刑されるかもしれないのだから、そりゃショックだろう。
彼女の話しぶりからして何度もダンタリオンに助けられたのだろうし。
俺は、聖子とその他の仲間、ダンタリオンを交互に見て、一言話す。
「なら、俺が今ここで罰っしてやる。」
そう言って、俺は桜を上段に構える。
「ちょ、おじさん!?」
「キヨシ様!いくらあなたが被害者でも、それはなりません!!」
聖子とセイリが止めようとするが、ルインに阻まれる。
日本人的感覚からすれば犯罪事件の被害者が私怨全開で無抵抗な加害者を罰しようとしているのだ。そりゃ、止めるだろう。
「ちょ、どいてルインちゃん!!」
「おどきください!!」
「断るわ。多分、お父さんの判断が一番いいから。」
ダンタリオンは抵抗するそぶりも見せずに俺の眼を見つめる。
「契約毒!」
俺は、桜に毒を纏わせ、ダンタリオンの左肩から右腹にかけて切り裂く。
「・・・あれ?ダンタリオン、斬られたよね・・・?」
ダンタリオンが絶命する未来を幻視したのか、一瞬目を背けた聖子とセイリだったが、一向にダンタリオンの悲鳴が聞こえず恐る恐る振り向いた所、ダンタリオンの体には傷が一切付いていなかったため、困惑しているようだ。
「お前ら、何呆けた顔している?」
「え?だ、だって・・・今、ダンタリオンを斬って・・・」
「ああそうだな。」
「じゃあ、何で…」
「おいおい、桜は物理的に存在するものには一切傷つけられないって説明したろ?」
「え?でも、アスタロトには・・・重症負わせて無かった?」
「それは、あいつの肉体が魔素で構築した肉体で、物理的な攻撃が効かない存在だったからだろ?あいつがダンタリオンの上司なのに、桜に対して一切対策を取らないどころか、存在すら知らなかった感じだから、そこら辺は意図してアスタロトに教えなかったんだろ?」
「いえ、そもそもあなた方が仲間に化けていたことにすら気付いていなかったのですが・・・」
ダンタリオンが若干頬を引きつらせて答える。
「第一、俺たちにダンタリオンを殺すことは出来ない。こいつが行ったのはあくまで殺人教唆だ。数は多いがな・・・予想だが、ダンタリオンの精神操作は強力だが、意のままに操るには時間もかかるし、効率も悪いからあれほど大規模な純血主義が暴れたってことは存在しない思考を植え付けられたわけじゃなく、本来持つ感情を増幅されただけだろう。つまり、人族の血が混じることをよく思わない感情はもともとあったんだ。彼はそれを後押ししたに過ぎない。少なくとも、人を殺していない奴を死刑にすることは出来んさ。」
俺の地元では死刑はごく少数の大量殺人者だけで、それ以外の重罪をいくつも犯した存在でもせいぜい終身刑だった。
終身刑だろうとそうでなかろうと、受刑者たちは刑務所内で様々な雑貨を作って一部は国の税金としても入っていたっけな。
一応、受刑者も罪を犯したとはいえ、貴重な労働源であることに変わりはない。重罪人=問答無用で死刑などただ単純に解決できる問題ではなかったな。
今回の場合は大分特殊かつ無理矢理な解決法だが、穏便に済ますにはこれが一番だろう。
「それに、彼を罰した所で、元々存在した憎しみの心は消えないし、今回俺たちが純血主義者を返り討ちにしたせいでその家族や知り合いがハーフエルフに対して理不尽な怒りを向けることもあるんだ。」
「無駄話はさっさと終わらせて、本題に入るぞ。」
「無駄話って・・・けっこう凄い話していたような・・・結局、ダンタリオンは裏切ったの?裏切ってないの?」
「ダンタリオン、」
「は、はい。」
聖子のセリフを無視して清がダンタリオンに話しかける。
「俺は、たった今お前に呪いをかけた。内容はお前が今後聖子達を裏切らなければ、俺はお前を殺さない。しかし、俺や聖子達を裏切ればお前にかけた呪いの毒は直ぐにその身を蝕み殺す。裏切らなければ、お前に俺の能力の一部を与える。」
いわばギブアンドテイクだ。要は力貸すから裏切るな、破れば死ぬからねってことだ。
「俺の能力は毒を操る能力の一部だ。劇薬までは作れんが、多少人体構造を変えられる毒を作れる程度だが、お前の研究には役に立つだろう。」
「あの・・・・」
「何だ?」
「それをしてあなたに何のメリットが?私は悪魔です。この肉体が滅ぼうと別に痛くもかゆくもありませんよ。」
「ああそうだろうな。」
今のダンタリオンの肉体は物理的に存在するが、ダンタリオンの魂が入っているわけではない。たとえこの肉体を失ってもダンタリオンの本体は痛くも痒くもないだろう。
「だが、お前本体はこの世界にないだろ?」
ダンタリオンとアスタロトは戦いの中でも話した通り、異世界の悪魔だ。
アスタロトは本体が時空転移でこの世界に存在したが、ダンタリオンの場合は分らん。
ルイン曰く、時空転移で吹き飛ばされる世界は基本ランダムでピンポイントに同じ世界にとばされることなど基本ないらしい。
しかし、ダンタリオンはこの世界でやっと見つけたようなことを言ってたということは、いくつかの世界を探しまくったということ。
ダンタリオンは悪魔であるため、自身の存在を完全に否定させられると消えてしまう。
異世界に自分の存在を知る人間が居なければ存在を否定されるのと同義らしい。勿論、転移者や転生者の中に西洋の悪魔に詳しい人物がいる可能性もあるが、こいつの速く回る頭なら、万一の可能性も考えて本体を直接送らず、肉体を持つアバターを送り込むはずだ。
魔法が発達していたり、科学が発達していたりと千差万別を持つ幾つもの世界でも唯一共通の法則が存在する。
それは、「一度その世界から消えた魂は二度とその世界には存在出来ない。」という法則だ。
本体が異世界に存在するダンタリオンは魂の一部をこの肉体に入れているが、肉体を失えば一部とはいえ魂がこの世界から消えたのでダンタリオンは二度とこの世界にアバターを送れない。
「それでも、私が逃げる可能性もありますよ?私は、この世界になんも未練もございませんから。」
「いや、お前はこの世界に残るね。」
「何故です?」
「お前は実験中の生き物を冷凍保存させたと言った。処分ではなく冷凍保存とな。つまり、お前はまだこの世界で行いたい実験があるということだ。それに、お前は『知性の悪魔』、自分の知りたいことは骨の髄まで調べ尽くしたいという欲望を根幹に持っている。加えて、精神体が本体のやつらは得てして自分の欲に素直だ。お前、目の前にある金のなる木をみすみす逃すヒトじゃねぇだろ?」
ダンタリオンが視線を逸らせた。どうやら図星みたいだ。
「俺は、お前の欲望を叶える手伝いをする。対価として、お前は絶対に俺らを裏切らないことだ。」
「ちょっと待ってください!!」
大きな声が祠に響き渡る。声の方向を見ると、セイリが憤慨していた。
「何勝手に悪魔と契約しているんですか!!今すぐ契約を解除してください!!」
「その必要は無い。それに、この契約はお前らにとっても悪くはないぞ。」
「大ありです!!私は神官ですよ!!それが、悪魔と契約しているなんて・・・」
「一つ言おう。こいつは確かに異世界の悪魔だが、この世界ではただの肉体を持ったエルフだ。それに、彼の知識や研究品はお前たちの役に立つ。直接間接を問わずな。」
「で、でも!その人は精神操作を出来るんですよね!!」
「いや、お前たちや俺たちに対してはもう精神操作は出来ない。」
「なぜ、確信できるのです?」
「俺は、ダンタリオンを『裏切るな』という曖昧な内容で縛った。この契約はお互いに違反の自覚が存在すると違反したと判断される。自覚しなくても肉体に不調が起こるなどして警告をまず行うんだ。つまり、ダンタリオンが意図して俺らを裏切れば、ダンタリオンは死ぬということだ。自分の欲望に正直な奴がそんなことをするとは思えん。これは、こいつに対する処罰でもあるんだ。」
「しかし・・・」
「第一、既に問題は起きているぞ。」
「?」
「勇者パーティの神官は世界でも指折りの存在だ。そんな存在が悪魔の仲間と行動を共にして裏切られるまで気付かなかったなんて、世間に知られれば赤っ恥だぞ。それでも、こいつがただのエルフだということにしちまえば、そんな醜態はさらさなくてすむ。ダンタリオンも俺との契約でお前たちの不利になるようなことは言わねぇし、ここに居るメンバーがそれを言いふらしたところで何のメリットも存在しない。ここは、黙って黙認するのがお互いの為だぞ。第一、ダンタリオンは元々知性を与える神様だったんだ。得た知識で馬鹿やらかした昔の人たちに悪魔認定をされただけだしな。精神を操る能力も地上の人たちにペラペラと色々喋ってもらいやすくするための能力で今回ハーフエルフの里を襲わせたのは彼女本来は自分の目的以外に能力を使おうとも思わんはずだ。俺が契約で強引に縛ったから自分の目的を達せない状況は避けるはずだ。」
それでも、未だに納得が出来ないのか、セイリは眉間に皺をよせ腕を組んで悶々と悩み始めた。
「ま、すぐに答えを出す必要は無い。とりあえずは頼りになる絶対に裏切らない後衛が仲間になったとでも思って、難しい事はまた今度考えろ。俺が勝手に罰を下したとでも思えばいいさ。」
「はい、分かり、ました・・・」
悪魔が仲間にいるなんて居心地は良くないだろう。
ま、気の長い話だが仲良くなってくれることを望むか。
人の心なんて、どう転ぶか分らんもんな・・・
vapor
HeatとOceanの力を内包した技。
水を生成して、蒸気を発生させる。
契約毒
対象を縛る呪いをかける。
契約の名の付く通り、どんな内容であれギブアンドテイクの関係がないと使えない。
一方的に自分だけ恵みを与えたり受けたりすることは不可能。その内容はお互いが同意した状態でなければ、一生契約は続く。脅して解除させようとしても解除は出来ない。
今後、3月の中盤まで、投稿が出来ません。申し訳ございません m(_ _;)m




