隔離された勇者パーティ
「おわぁ!?」
キヨシが合図した時にZoneでショウコの足元と結界の中を繋げた。
突然転移させたことで、びっくりしたのか、ショウコが乙女らしからぬ大声で結界に入って来た。結界に入った時に強くお尻を打ち付けたのか、しばらくさすっていた。
「あいたたたた・・・あ、ルインちゃん・・・」
ようやく痛みが引いたのか、初めて私の存在に気付いたようだ。
「こんにちは、ショウコさん。昨日ぶり?私からしたらさっきぶりなんだけど・・・」
キヨシがオリヴィアに変装していたように、私もガイアに変装していた。
それはキヨシが既に伝えていることだけど、騙したことは事実だから一応私も謝っておいた。
キヨシ相手に騙したりしたら、夕飯抜きの上にアイアンクロ―食らわせられるからね。
あの人、外面じゃなくて内面重視の人間だから私が幼気な少女でも容赦しないのよね・・・
「そんないいよ。結果としてみんなも助かったわけだし・・・それより、おじさん!何か神様と戦っているけど大丈夫?援護とかした方が良いんじゃない?」
ショウコもキヨシが普通の人間じゃないことは知っているからキヨシが死ぬ可能性は微塵も考えていないみたいだけど、それでも心配みたいだ。サクラやアスナンみたいに恋慕で不安なんじゃなくて、純粋に心配しているのは彼女の性格なのだろう。
実際、彼女の思い人は別にいるみたいだし。
「問題ないわ。ショウコさん達が援護しようとしても、お父さん位の耐久度が無ければ、ちょっと危ないからここにいて。お父さんもショウコさん達には死んでほしくないみたいだから。」
色々と面倒なことになるし・・・
「私は結界を張るのと援護は同時には難しいから、あなた達を隔離することに集中しているからそもそも不可能なんだけど。奥にみんなもいるし、お茶でも飲む?お父さんとアスタロトの勝負のLIVE映像でもみながら。」
「そ、そうなんだ・・・」
何故か、ショウコが呆然としている。
そこまでおかしなことは言っただろうか?
場を和ませるためにキヨシを真似してお茶らけてみたけど、やっぱTPOってのを考えた方が良かったかな?
「・・・強いんだね、ルインちゃん。」
突然、聖子が誰に聞かせるわけでもなく、呟く。
「強い?私がですか?」
確かに、そこら辺のごろつきだけでなく、そこら辺の神様程度なら軽く消滅させられる力を持つが、今更過ぎる。何故に今?
「うん。おじさんを大分信用しているんだね。私だったら、不安で自分に何かできないか必死に探しちゃうもん。その点ルインちゃんは自分がすることをしっかり理解しているからすごいなって・・・」
ああ、父親の勝利を信じていて疑わない父親思いの娘って見えたのかな?
私からしたら、キヨシが負ける可能性の方が低いし、負けたとしても死ぬ可能性に関してはほぼ皆無だから心配しても無駄なだけなんだけどね・・・
「私が強いんじゃないわショウコさん、お父さんが強いだけ。」
「あはは、そうだね・・・」
そう言って聖子とルインは結界の奥にある空間へと向かった。
結界の外では既に激しい戦闘が繰り広げられていたが、激しすぎて砂埃しか見えないため何が起きているか全くわからない。
「あ、ショウコ様、無事だったのですね。」
「うん。おじさんに助けてもらったから。」
奥の空間へ移動した途端セイリが聖子を見つけ話しかけた。
勇者パーティの中では妖刀の浄化に必要だったこともあり、唯一清達が安全圏へ隔離していなかったため、清は少し心配していたが、どうやら無事に押し込まれたようだ。
「まったく、あいつも勝手よね。事前説明もなしに勝手に部屋に侵入してこんなところに連れて来るんだもん、最初何が起きたか全くわからなかったわよ。」
「俺なんか、3日以上もこんなところに押し込まれていたんだぞ。」
相談もせずに勝手に拉致ったことにハルキとナタリーが不満を隠そうともしない。
実際、清は不法侵入や誘拐をやっているため、後々ハルキなどに殴られても文句は言えないだろう。
自分がいるとかえって説明がややこしくなると判断した清がルインに誘拐した人たちへの説明を丸投げしていたため、誘拐した翌朝には毎回ルインは苦労をした。
「・・・・でも、何で誰にも気づかれなかったの?普段いい加減なナタリーはともかく『ヲイ!』ガイアや悪魔だったダンタリオンまで欺くなんて、普通じゃ無くない?」
さりげなくナタリーをディスりながらオリヴィアが如何にして自分たちをさらったのかを質問する。
「うん、お父さんが操る毒に睡眠毒っていうのがあるの。お父さんは毒を操る能力を持つから、必然的に毒に対する耐性もすごく高いんだ。そんなお父さんでも使えば5~10分でぐっすりできる毒。無味無臭だから、ショウコさん達が食べた食事に混ぜたり、ショウコさん達が寝室で寝る前や寝るタイミングに部屋に充満させて眠りを誘ったりして、私が空間を操る能力で連れ去った。」
説明されたみんなは少し複雑な顔をした。
そりゃそうだ。さっきの説明を要約すると、『食事に毒盛って、部屋に任意のタイミングで毒霧充満させて、不法侵入して誘拐しました。』ということだ。
「えっと、その毒で死ぬ可能性は?おじさんでもすぐに効くってことは、大分強い毒なんだよね。私たちがいま無事だからいいけど、一応聞きたいんだけど・・・」
おずおずと聖子が手を上げて質問をする。
「問題ないわ。お父さん曰く、ただ深い眠りを誘発するだけの毒なだけで、最悪でも一生寝続けるだけみたい。お父さんは計画を実行するときに大分薄めてたらしいから、後遺症があるとしても少し眠気が残る程度らしいよ。もっとも、その時に『誘拐』じゃなくて『隔離』って言葉を使っていたから、飽く迄犯罪をしたっていう認識はないみたい。あったとしても『必要悪』っていうと思うけどね。」
「とりあえずこの騒動が終わったらおじさんを何回か殴ろうそうしよう。」
乙女の部屋に無断侵入とはよくやるの・・・この蛮勇者が・・・
「ところで、そのどうでもいい変態誘拐犯は大丈夫なの?何だかさっきからあの悪魔に向かって行っては壁に叩きつけられてを繰り返しているけど?」
ついに清に犯罪者の烙印が押されたらしい。
基本人の事を悪く言わないセイリもスルーしているので味方は皆無だ。
ハルキの言う通り、清は桜花を手にしながら何度も立ち向かっては、壁に叩きつけられている。赤と緑の光が所々見えるので、アスタロトの能力は風と火を操る能力だろうか?
火は雑草やごみを燃やして肥料を作って、風は季節風を運ぶ的な?
「あ、たしかに・・・おじさんって、毒以外使えないし、射程も大分短いって言ってなかった?」
若干聖子だけがキヨシに同情したのか、心配をしてくれた。
実際、さっきから同じような行動しか清は行っていないため、これが実況動画だったら、低評価コメントの嵐だろう。
しいて言えば攻守が交代し、アスタロトが清を追い詰め始め、清はは回避に専念し始めた程度だ。
依然清の劣勢に変わりはなく、ついには腕を貫かれて壁に叩きつけられる。
握っていた桜花は遥か遠くへ弾かれていた。
そんな中、ルインだけが唯一清の勝利を確信していた
「問題ないわ。多分、あと10数分でお父さんが勝つはずだから。」
「え?どうしてそんな・・・」
ルインの予測通りに急にアスタロトがもがき苦しみ始めたかと思うと、光が輝いてアスタロトが消滅した。
反論しようとしたガイアが口に手を当てて固まる。
「え?な、何があったの・・・?」
「実はね・・・」
ルインが語った清の戦法に再び聖子達は呆れたのだが、それはまた別の話。
最後の戦闘シーンを少し変更いたしました。




