裏切り
十分休み、魔力も体力もスタミナも回復させた聖子達は念のため空間の広いゴーレム量産工場の中へ入った。
ちんみに、ダンタリオン曰く『ナタリーが突っ込んだ際に中枢となる部分が完全に壊されたため、使用も修復も調査も困難。調べたとしても、ゴーレム自体は土魔法で幾らでも作れる。かつて楽をしようと生産の大半を道具に任せた時代があったからその時代の産物の可能性大。』らしい。使えないとわかっていても、その大きさは圧倒的で、男心が擽られたのか、研究者魂が刺激されたのかは分らんが、「もう少し調べてくる」といって笑顔で部屋の奥へと向かった。
「セイリ~妖刀の鍔のセット終わったよ~!!」
聖子が離れた位置にいるセイリに準備の完了を伝える。
「分かりました。namzpqls,dwland.wkqiajdhgnrtyubmwnzkdgfganbcewq・・・・」
セイリの周りに魔力が集結してゆく。
万一妖刀が暴れだしたときにセイリが戦えなくならないように既に聖子の髪と目は緑色に染まり、セイリを補助していた。
妖刀の解呪には今まで口を酸っぱくして言ってきたが、本当に集中力がいる。
解呪の技は魔力の制御が難しく、術式に失敗をすれば、集まった魔力が急に霧散し、解呪している人だけでなく、周囲の人や建造物にも影響を与える。集める魔力量が少なければ急激な霧散の影響は少ないが、すると解呪の成功率が落ちる。中途半端な解呪は呪われた武具を暴走させ、最悪土地が物理的に地図から消し飛ぶ・・・らしい。
飽く迄そうなる可能性が高いだけであって、最近の資料にもエルフの持つここ数万年の資料にも魔力の霧散による被害はともかく、呪われたアイテムの暴走によるとされる被害はたった1件しか報告されておらず、その資料も解呪を試みた結果、周辺の町も含めて地上から消えており、実際に呪われた武具の暴走が原因なのかは調べられていなかった。
もっとも、調べようにもそのアイテム自体も共に消失しており、調べられなかったようだが・・・
ちなみに、魔力霧散による解呪の失敗の場合、まだ魔力が集まっただけで解呪はしていないという理屈なのか、失敗しても呪われたアイテムが暴走することは無かったようだ。
その為、セイリも詳しい事は知らない。
発動に失敗し、集まった魔力が急激に霧散すれば聖子達もただでは済まないが、少なくとも、今この場所で失敗しても仲間が護ってくれるし、最悪被害はこの部屋だけで済む。
奥にいるダンタリオンは問題ないだろう。
なるべく影響のないようにダンタリオンが向かった先とは案体の場所の端で解呪をしているし、そもそもこの祠には魔物は存在しなかったため、いるとしてもあのゴーレム軍団の残党だ。
彼ならば詠唱重複を使いながら下級魔法の乱射で十分対処出来るだろう。
ゴーレム軍団、大分足遅かったし一番早い狼傀儡もダンタリオンは捕縛系の魔法で捕まえて一方的に袋叩きにしていた。
「manzxslpqqorgfjagdnxmqoaiset・・・解呪」
そんなこんなで解呪の準備も整い、仲間への配慮も十分に行いセイリの長い詠唱が終わり魔法が発動した。僅かに黄色い色の儚い光が変色した刀身ごと鍔を包み込み、徐々に刀身に描かれた禍々しい模様を消していった。
解呪が成功している証だ。
しかし、やっとこさ刀身が元の金属の色になり、いよいよ鍔の番となった所で異変が生じた。
「カタカタカタカタカタ・・・」
突然、解呪真っ最中の刀が振動し始めた。
何事かとガイアとハルキが身構える。
途端、刀から禍々しい邪気がまるで竜巻のように周囲へ漏れだした。
ハルキが咄嗟に身構えたため、聖子達は無事だが、セイリに直撃すれば妖刀の解呪が中断してしまっただろう。そうなれば、全ておしまいだ。
「ぐぅぅぅぅ・・・・」
ナタリーと聖子、ガイアに支えられ、何とか踏ん張るハルキ。
オリヴィアは邪気の竜巻の中心から大きな塊が来た時に弓で狙撃して空中で霧散させていた。
「な、何これ!?」
「分らん!!とにかく耐えるぞ!ハルキと私で支えているが、耐えるのが精いっぱいだ!!」
聖子が邪気の正体を知りたがったが、今はそんなことにかまっている暇はない。
こういう時ダンタリオンがいれば、壁を作りながら邪気の正体を考察できたのだろうとダンタリオンの不在を嘆いた。
しかし、そんな嘆きは次の瞬間霧散した。
なんと、奥の方からダンタリオンがこちらに歩いてきたのだ。
彼には今この瞬間の暴れている邪気の竜巻が見えないのだろうか!?
「ダンタリオン!逃げて!!今、ちょっとヤバイ!!」
普段のダンタリオンの装甲は勇者パーティの中では最低だ。
突風で飛ばされただけでも下手をすれば重症になりかねない。
そんなダンタリオンは、一切防御系魔法も使用せず、詠唱もしていない。
それなのに、何と殴るように吹き付けてくる邪気の竜巻の中をまるで散歩にでも行くかのように歩いていた。
この状況で浄化に集中していたセイリ以外、目の前の状況が呑み込めなかったのか無言になった。
ついに、ダンタリオンが暴れている刀の柄を掴んだ。途端に邪気の嵐が収まる。
「はぁ、はぁ・・・い、一体・・・」
「ありがとうございましたみなさん。おかげで、我が主を解放できる計画が最終段階までゆきました。」
「け、計画?な、何を言って・・・」
「封印解除」
聖子のセリフを遮って、ダンタリオンが鍔に手をかざし、封印を解除する合言葉を言った。
すると、先ほどとは比にならない量の邪気が溢れだし、刀を中心に人の形を模った。
ガイアとナタリーが溢れ出した邪気に体を貫かれ、後方へ4回ほど転がっていった。
「な、ナタリー!ハルキ!!」
すぐに吹き飛ばされた二人にかけよった聖子だったが、既に二人は一切動かず、心臓の音も確認できなかった。
「そ、そんな・・・だ、ダンタリオン!!」
キッとダンタリオンを睨みつけた聖子だったが急にダンタリオンへの怒りが消えた。
その人は、身長は160cm程で、黄緑色のロングヘア―をしていた。
かなりグラマーなスタイルをしており、胸の大きさは巨を超えて俗にいう爆乳というサイズ・・・
とても先ほどの邪気が模った人だとは思えないほど美しい女性だ。
「ありがとうございましたダンタリオン。おかげで、数万年の封印から解放されました。」
「いえいえ、我が主。この程度どうとでもございませぬ。」
「え?誰なのその人?教えてよダンタリオン!!」
混乱した聖子が、ダンタリオンに女性の説明を求める。
ガイアとオリヴィアはセイリを護る体制になっており、セイリもすでに解呪を中断し、臨戦態勢だ。
ダンタリオンの返答は言葉ではなく、巨大な岩で返された。
「危ない!?」
とっさに避けて巨岩の攻撃を回避する。
セイリはオリヴィアとガイアが抱きかかえて横へ飛び移った。
「な、何するのよダンタリオン!!」
「何っとは?私は用済みな道具を処分しようとしただけですので。」
さも当然のように言うダンタリオン。まるで、何言っているの?とでも言いたそうな顔だ。
「用済みってどういうこと!?一体、その人は誰なの!!」
それでも、聖子はダンタリオンと話をしようと問い続けるが、ダンタリオンは一切聞く耳を持たず、いくつもの魔法を乱射してきた。
幸いにして女性は未だに静観し、我関せずを貫いているため、聖子はダンタリオンの攻撃の対処に集中できる。
しかし、なぜかやたらと魔法が濃いのだ。
普段のダンタリオンならば決してやらない中級以上の魔法を乱射している。
それなのに、魔力切れなど知らんとばかりに一方的にドカドカ撃ってきた。
聖子も髪と目を赤色に変え、空中にマシンガンを浮かべて応戦した。
セイリはガイアとオリヴィアが抱きかかえて何とか護っている。危険な魔法はオリヴィアが撃ち抜いている。魔法の余波程度ならばガイアもセイリも耐えられるためオリヴィアは魔法を打ち消す方に集中できる。
狭い洞窟内で魔法と銃が撃ちまくられているため非常に五月蠅い。
「うっとおしいですねぇ・・・さっさと当たって倒れてくださいな。」
「はぁ、はぁ・・・出来る訳ないじゃん。わ、私は勇者だよ・・・それに、仲間が何でこんなことをしてのかちゃんと説明してほしい。」
この様に攻撃されたのに、聖子は未だにダンタリオンを仲間と思っているようだ。
「仲間ねぇ・・・関係ありませんね。」
しかし、ダンタリオンは聖子の意見をバッサリと切り捨てた。
「か、関係ない?」
「ええ。私にとっては、あなたたちは単なる目的のための手段でしたので。」
「え・・・」
ダンタリオンに言われた言葉に呆然とする聖子だった。
「それでは、さようなら次元深淵」
ダンタリオンが、得意の詠唱重複で準備していた広範囲を殲滅する魔法を発射する。
「!?ま、マズイ!」
咄嗟に後方へ回避しようとした聖子だが、初動が遅れたため次元の渦を発生させた闇は実態を持ち、聖子へと襲い掛かった。
回避は既に不可能と悟った聖子の瞳に絶望の色が浮かぶが、次の瞬間、瞳には驚愕の色が浮かんだ。
何と、オリヴィアが聖子の隣に接近し、身を挺して聖子を守ろうとしていた。
解呪
神聖魔法スキルⅤ以上の人物が使用できる呪われたアイテムを解呪できる唯一の魔法。
解呪精度は発動者の神聖魔法スキルのレベル及び注がれた魔力の量に左右される。
次元深淵
巨大な闇を出現させ、強烈な次元の渦に周囲の敵を巻き込む。
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