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作戦会議

ここからしばらく視点が聖子へと移ります。

翌朝、俺達は聖子と分かれ、聖子たちはリーフレスト連邦国東の妖刀 罪渦(さいか)が封じられた場所へ向かった。

俺とルインはイルペウに残って王都を楽しむことにした。

だって、3か月も滞在期間があるし、楽しまなきゃ損だよね!!


私たちと分かれた後のおじさんはルインちゃんを連れてまず近くの屋台へ向かって料理をバクついていた。

ここら辺の屋台を全て平らげるんだーとかいっていたけど、あのペースなら本当に全部平らげそう。

おじさんのせいでこの国が食料危機とかにならないよね?ね?

「どうした?ショウコ?」

微妙にあり得そうな危機に私が眉間にしわを寄せたのを見たナタリーが心配して聞いてくる。

「あ~・・・おじさん、過失でこの国滅ぼさないといいなぁと思って・・・」

「いくらキヨシさんでもそこまではやらないんじゃない?」

間髪入れずにガイアが否定してくれたため、少し不安が和らいだ。

「というより、あの人が暴れてはダンタリオン以外対処出来ないのでは・・・」

セイリが滅ぼす=物理的にと考えてその危険性を質問する。

確かに、先日の「タンクの誇りと名誉」を賭けた決闘ではダンタリオンのみが清に勝利したしかし、

「分からないよ。前にスプリウム帝国で殴り合った時、おじさん麻痺毒使ってきたから。それに、他にも色々な毒物で攻撃したり防御したりするらしいよ。質量を乗せた攻撃も溶かされたらただの焼け石に水じゃない?それこそ、神様でもないと倒せないと思ったし・・・」

酷い言われ様である。

別に清はルインと違って人を殺すのにまったく躊躇しない人間ではない。

必要があれば人を殺すが、それでも殺さなければ殺されるといった状況だけだ。

しかし、普段の行い故に「力を持った子供」みたいな判断をされているため、かなりの人たちから警戒の対象になっていた。

まさに身から出た錆。

「ま、おじさんが過失でこの国を滅ぼさないか祈るしかないね。少なくとも、おじさんは大量虐殺をして(よろこ)ぶ人間じゃないし。」

「キヨシはエルフじゃなかった?」

すかさずハルキに突っ込まれる。

「おじさんは大量虐殺をして(よろこ)ぶ人じゃないし。」

無理矢理繋げて誤魔化す聖子。

若干頬が赤くなっているが気のせいだろう。



キヨシと分かれて4時間後、マジックアイテムを使用して空中を滑空していた聖子達はリーフレスト連邦国中央から見て東側に存在する祠、ザートに到着していた。

「ここがザートね。」

元は観光地だったらしく、古代の遺跡に描かれた壁画と秘文字を展示していたらしい。

しかし、現在はリーフレスト連邦国が安全のために近隣住民を退避させており、調査隊が30人ほど駐屯していただけだ。

突然上空から降りてきた7人の女性に調査隊は警戒の色をあらわにするが、すぐに警戒を緩めた。

「おうこそおいでくださいました勇者様、隊長から聞いております。」

如何にも考古学者です。とでも言いたげな姿かたちをした人族の老人が聖子へ挨拶を始める。どうやら、既に聖子達の特徴は知れ渡っているらしい。

この状況からも聖子がどれほど後先考えずにハーフエルフの里へ殴り込みに来たか分かる。既に準備万端な状況で急に起きた出来事なのだろう。聖子の仲間が聖子を鎮める時間の無かったほどに・・・

「悪いけど、『勇者』っていうのやめて・・・」

「?どうかいたしましたか?もし知らずにご無礼を働いてしまわれましたのなら申し訳ございません。」

やはり面と向かって「勇者」といわれると多少恥ずかしいのだろう。

聖子は若干顔を赤く染め、俯いて自分の呼ばれ方を変えるよう言ったが、それがどうやら怒りと判断されてしまったようだ。

「ち、ちがうの!ただぁ、そのぉ・・・面と向かって『勇者』っていわえると少し・・・」

赤く染めた右の頬を人差し指でポリポリとかく聖子を見て、老人は書庫が何を思ったのか察したらしい。

「ははは、申し訳ありませぬが、それは出来ませぬ。勇者様を名前で呼べば不敬になりかねませんからな。」

この世界の勇者は神の使いというイメージが付いている。

故に、親しき仲でもないのに勇者を名前で呼べば、神様の使いを名前で呼ぶようなものだ。・・・二ホンでいうと、天皇陛下に対し初対面なのにタメ口で会話をするのと似たような扱いになる。

そもそも、「勇者」などという存在は基本一人しかいないので勇者といえば大抵は今現在この世界にいる勇者を指すため、わざわざ名前を覚える必要も無い。

故にこの世界の住人は勇者に対して「勇者様」と呼ぶ。

「うん・・・まぁ・・・それは分かっているけどぉ・・・」

「ショウコ、諦めた方が良い。」

ハルキが憐れみを込めた目で聖子を諭す。

「聖子も天使に対してタメ口で話せる?」

「え?出来る訳ないじゃん。」

オリヴィアがした質問に聖子が即答で否定する。

「それと同じ。彼らにとってあなたは神の使いであり、あなたは数多くの人たちを実際に救っている。彼らがあなたに敬意を称して『勇者様』と呼ぶのは当然。」

普段無口なオリヴィアが饒舌に語りだす。そのことに聖子は少し違和感を覚えたが、今はオリヴィアが言う事の方に注意が引かれていたため突っ込まなかった。

「う~、分かったから・・・」

一応理屈では納得できたらしいが、未だに精神的に恥ずかしいらしく、未だに少し眉間に皺が寄っている。

「なぁなぁ。そんなことより、さっさとあの妖刀を処理しに行かないか?対処は早い方がいんだろ?」

と、ここでナタリーが話の一切合切をぶった切って話に加わり始める。

羞恥で動けないでいる聖子を見かねたのか、それとも単純に話を聞いていなかったのかは分からないが・・・

もっとも、ナタリーの言い分も正しいので、渡りに船とばかりに周りの人たちが話を変える。

これ以上続けても不毛な議論だと分かってたのだろう。

「見つかった妖刀の特徴と、どこら辺に存在するか分かりますか?」

早速、勇者パーティの司令塔ダンタリオンが調査隊のメンバーに対し質問を浴びせる。

「ああ、それに関する資料なら向こうのテントにあるよ。もっとも、大して分かっていないがね。」

「分かっていない?」

「ああ。あの妖刀が発見された周辺に侵入者を撃退するようなゴーレムやらスライムやらが湧いてくるんだ。そのせいであまり詳しくは調べられなくてね。幸い、侵入者しか撃退しないらしく、あいつらが外へ漏れたことは無いがね。」

聞けば、倒しても倒してもゴーレムやスライムは復活して何度倒しても焼け石に水らしい。

妖刀が突き刺さった部屋が開かれた途端にそいつらが溢れ始めたことから、恐らく部屋の扉の開閉がゴーレム達を動かす発動キーだったのだろうか?

妖刀の外見は真っ黒な刀身に血液の様なマグマの様な模様があったらしい。

・・・もっとも、発見した観光客が一目見ただけなので本当にそうなのかは少し信頼性が低いらしいが。

「発見した観光客の証言によりますと、この祠の一番奥の像の裏に隠し扉の様なものが存在し、開けて見た所その刀を見つけたらしいです。

興味本位で引き抜こうと近づいたところ、部屋の奥から大量のゴーレムが出て来て場は騒然。観光客は速やかに退却したため死者はいませんでしたが、悪くて骨が5本折れた者もいたとか。」

たしかに、祠の像の裏にあった隠し部屋に突き刺さっていた刀。男からすればロマンである。引き抜きたいと思うのもただの生理現象だろう。

最も、大抵碌なことは起きないが・・・

数日後にリーフレスト連邦国の軍隊が侵入し、ゴーレムを掃討する作戦をたて、魔法を使った遠距離攻撃により当初は優勢だったが、無限に湧き出てくるゴーレムにしだいに追い詰められて撤退したらしい。

そのさらに翌日、観光客からの証言で部屋にあったのが刀だったこと、国の資料を確認してとんでもない妖刀だったことを知り、急遽フラブリー宗教国へ救援を要請したらしい。

「?ゴーレムって確か単なる脳筋集団よね?それ位だったら数の暴力で何とかなったんじゃないの?」

「ショウコ様、お忘れですか?この祠に封じられていたのは妖刀です。神聖魔法などの支援のない普通の人は近づくだけで気分を害されます。そのせいで、近づいたとしても撤退をするしかなかったのですよ。」

ダンタリオンが妖刀に関する補足説明を行う。

妖刀は得てして人の血を多く吸う。結果として、切られた相手の怨念または使用者の怨念やらが積もりに積もって、近づくだけで気分を害する刀へと性質を変化させたらしい。

「へ?武器に性質なんてあるの?」

基本勝手に飛び道具を召還して戦っている聖子には武器に性質がある事を知らなかった様だ。

「ございます。それぞれの武器が持つ特徴も性質ではございますが、一番の性質は他者からの認識ですね。」

極端な話、そこらへんの(なまく)ら刀も、勇者の聖剣も、呪いの剣も元は全て同じただの剣だ。

打った後に、様々な人が「これは(なまく)らだ」、「こんな恐ろしい武器は呪われているに違いない」「魔族を退けた!これは聖なる武器だ!!」と認識した結果、その武器の性質は決まる。

不思議なのが、一度性質が決まってしまった場合、基本的に性質は変化しないのだ。

この性質を変化させるためにはルインのGene(遺伝子)で作り変えるか、再度作り直すしか変えることは出来ない。

「今回の場合は、位の高い人々を次々と殺めた結果、妖刀と判断され妖刀の性質を持ってしまったのでしょう。」

先ほど基本的に性質は変化しないと言ったが、実は例外が存在する。

それは「人の強い思い」が介入した場合だ。「人の強い思い」と聞けば聞こえはいいだろう。実際、勇者物語などにおいて土壇場で愛剣が進化してより強い武器へなった結果逆転したというのも「人の強い思い」だ。

しかし、この「思い」はどのような思いかを指定していない。つまり、多くの人がその武器を恐れた結果その武器の性質が変化することもある。

意図してやったかは分からないが、未だに性質が決まっていない状況で何度も人を殺めた結果、この刀は妖刀となったのだろう。

「・・・という訳です。分かりましたかショウコ様?」

長いダンタリオンの「武器の性質講座」が終わった時には既に大半の勇者パーティのメンバーが寝落ちしていた。まともに聞いているのはオリヴィアだけである。

・・・口元にある一筋の光が見えたが気のせいだろうそうだろう。

「え?あ、う、うん!聞いていたよ!つまりは、あの刀は沢山人を殺してきたってことだよね!!」

刀が殺したのではなく、刀の使用者が殺したのだが・・・

既に解説でエネルギーを使ってしまったのか、ダンタリオンは突っ込まなかった。

決して聖子のまとめ方がざっくりすぎて呆れたわけじゃない・・・ハズ・・・

「ええまぁそういうことです。話を戻しますと、発見された妖刀に近づくためにはかなり高位な神官の力が必要です。この場合はセイリですね。しかし、神官だけ向かわせるのは現実的ではないため、万一の可能性とセイリの護衛もかねて私たちが呼ばれました。」

こういう呪われたアイテムが存在する場所は物理特化のエネミーが多い。

神官を警戒しているのか、日属性の聞きにくいゴーレム(土塊(つちくれ)は光を遮るため効きづらいという理屈らしい)なども多いらしい。

「万一の可能性?」

「過去に呪われた武器の処分に失敗して滅んだ国が存在します。セイリを信頼していはいますが、それでも可能性はゼロではありません。何が起こっても問題ないように対処してほしいのです。」

「なるほどね・・・だから私を呼んだんだ。それで、祠の中はどんな感じになっているの?」

自分が呼ばれた理由に納得した聖子はやる気に満ちており、早速探索を開始する場所の構造を調べ始めた。

曰く、とても曲がりくねっており、一部かなり細い場所が存在し、大量の人数は通れない箇所や隠し扉がどこらへんの像のどのような場所に存在するか、祠へ入っている間に調査隊は安全のために退避すること、そして攻略の仕方などを話し合った。

幸いだったのが元々観光地だったためある程度道が整備されていた点だろう。

話し合いが終わった時には既に日が八割方沈んでいたため、攻略は明日からとなった。




その晩、聖子達が寝ているテントに二つの黒い影が立っていた。

二つの影は再度空間を捻じ曲げ、今度はガイアとハルキを押し込んだ。

空間が元に戻った時、すでに二つの影はその場所には存在せず、押し込まれたはずのガイアとハルキは元のベットで静かに寝息を立てていた。




余談

一方、聖子達が祠の攻略法とダンタリオンの長い講義を受けている間清は・・・

「おじさん、この石頂戴。」

「お、坊主、目が良いね。その宝石は一個銀貨4枚はするよ。」

「こっちも買うから銀貨2枚にまけられない?」

「悪いね、せめて銀貨3枚だ」

「買った!」

「売った!!坊主、恋人にプレゼントかい?」

「違うよ、そんなんじゃないさ。」

王都イルペウで宝石店の店主に対し値切りをしながら大量の赤柘榴(ガーネット)翠玉(エメラルド)を買っていた。


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