女誑し聖子?
翌朝、ヒーフレスト連邦国が送って来た精鋭隊が里の目の前に来ていた。
どうやら、ほぼ徹夜しながら国の中心から端っこまで急いできたらしい。
というか、大の大人たちが片道丸一晩かかる距離をたった一時間ちょいで移動してきた勇者パーティの非常識さを再認識した(←盛大なブーメラン)。
俺は状況説明に再度状況の説明を行った
状況説明が終わり、聖子たちがこの国の王都へ向かう際に同行することになった。
何でもこの国を治めているハイエルフに報告する際の証人らしい。
そういえば、
「今更だが、どうして聖子のパーティは女性ばかりなんだ?」
中にはボーイッシュな女性もいるが、一応全員女性だ
「へ?う、う~ん・・・特に理由はないよ?強いて言えば適当に声を掛けたのが女性だっただけだよ。」
何だそれ?
「ようは女誑しってことだな。」
「ちょ!何その言い方!!私別にハーレム系主人公なんかじゃないよ!!!」
「どうだかな。勇者っていうのは理不尽に女性を侍らせる存在なんだよ。」
「ちょっと!私女だよ!」
俺は聖子の肩に手を乗せ慰める。
「安心しろ。この世界にも百合という概念もあるさ。受け入れてくれる人もいるさ。君は一人じゃない。」
「やめて~!!!私には心に決めた人が居るの~!!!」
あら以外。てっきり聖子ってそこらへん鈍いかと思ってたら、いっかり思い人いるんだ。
「あ、もちろんおじさんじゃないからね!!」
それは良かった。イヤ本当に。
これ以上増えるとまたルインに理不尽に殴られる。
今でもアスナンと桜の二人が俺に好意を持っているが、既にルインから何回も恋愛関係で殴られている。これって、俺が悪いの?ねぇ・・・
「ショウコ、そろそろ王都へ向かわない?」
俺たちの不毛な議論を見かねたのか、暇つぶしにルインと組み手をいていたはずのナ(・)タ(・)リ(・)ー(・)が俺たちに出発を促す。
どうやらナタリーはルインを気に入ったらしく、昨日から何度もルイン相手に組み手を行っている。
何でも、あの小さい体で高い威力の攻撃が出来るのが気に入ったとのこと。
脳筋ですね分かります。
対するルインも別に迷惑がっている様子もないため癇癪で周囲を消し飛ばすようなことはしないだろう。
実際、能力を使わないルインは火力では俺に劣るが、あの体格では異常なくらいの攻撃力を持つ。はたから見れば攻撃力へかなり偏っているようにも見えるため、同じようなタイプだと認識したナタリーが気に入るのも当然だろう。
ルインも能力を制限した状況下でのいい訓練になる。
致命傷だろうと、神達にとっては関係ないしな。
死んでも肉体を再構築すればいいでしょ?と考えている節があるし・・・
ショウコの思い人に関しては後でルインが勝手に調べるだろう。
あいつ、ああ見えて恋バナとか好きだし、セイリと聖子とナタリーで定期的にガールズトークしているから勝手に盗み聞きしそうだ。
「そうだな。悪い、時間を浪費させちまったな。」
とりあえず、骨折り損のくたびれ儲けになったリーフレスト連邦国の軍隊の人々に軽食と甘味を提供して歩く休んだ後王都へ向かうことにした。
イヤね、仕事で大急ぎで来たのに俺達が彼らの仕事勝手にやっちゃったんだし、せめてこれ位はね・・・
「キヨシ殿!!ぜひ、先ほどの甘味のレシピを教えてください!!!」
先ほどから精鋭部隊隊長にしつこく迫られている。
俺がふるまったのは、拳闘馬鈴薯をつかったスイートポテトと蒲公英コーヒーだったのだが、どうやらスイートポテトをえらく気に入ったらしい。
「別にいいけど、作れるかは分らんぞ?」
スイートポテトを作る際にホットケーキミックスを使ったんだが、それはルインのLoaf(麺麭)を使って作ったんだ。恐らく、この能力は小麦を材料にした食べ物又は材料を作れるのだろう。
Loaf(麺麭)のことは隠し、ちょうどホットケーキミックスを持っていたことを教える。
「そ、その「ホットクェウィキミック」スなるものは、どう作るのですか?」
ホットケーキミックスなホットケーキミックス。
「すまない。詳しい材料までは分らん。小麦、砂糖、食塩を使うことは分かるんだが・・・後一つの材料が上手く作れないんだ。手持ちにあるのも、親が作ってくれたものを保管しているだけだしな。あ、因みに親父もお袋もどっちも無くなっているから一度あの世へ行って帰ってこない限り作り方は分らんぞ。」
ホットケーキミックスを作るのに使う重曹は少し作るのが面倒だ。
確か作るのにアンモニア水がいるんだっけ?俺、アンモニア水の作り方知らんから教えられんよ。
「そ、そんな・・・」
なぜか隊長さんがこの世の終わりみたいな顔をして崩れ落ちた。
彼の部下はそんな隊長さんをみて苦笑しているだけで特に何もしようとはしない。
「何であんたそんなにスイートポテトを作りたいんだ?」
どっからどう見てもこの隊長さんが甘党には見えない。
エルフの割には筋肉が盛り上がっていて、接近戦特化の脳筋というイメージがぴったりくる外見なのに。
「実は・・・家内との約束をすっぽかしまして・・・」
なんだそりゃ?
聞けば、昨夜は結婚記念日で一緒に夕食を食べに行く約束をしていたのに今回の緊急集合がかかり、急いできた結果奥さんに伝えていなかった。
実質一方的に約束破った最低夫だ俺!
ヤバイ!怒らせたあいつは誰にも止められない!!俺が殺される!!!
そうだ!あいつは甘いものが大好きだから甘いもので怒りを沈めよう!!
いや待て、味にうるさい彼女の事だ。下手なものを送れば火に油を注ぎかねん。
そう考えた所で俺のスイートポテトを食べたのか・・・
な、なんだこれは!!味音痴の俺でもわかる!この甘味は絶品だ!これなら妻の怒りを沈められる!メンバー全員に配っていたからさすがにもうないだろう。何とか作り方を聞き出して、使用人に作らせねば!!
・・・という状況らしい。
何というか、尻に敷かれてんなぁ・・・
いやまぁ、女性に逆らうほど愚かな行為は無いとは思うが・・・
「あ、じゃあ余っているスイートポテト要ります?」
途端に隊長が俯ていた顔をガバっと上げて、俺を見つめた
「本当ですか!!」
うぉい、びっくりした。いきなり突っ込んで来ないでくれ・・・
「あ、ああ。丁度後一個残っているしな。」
どうせルインの腹に消えるのがオチだし。
「ちょっとお父さん!!それ私のモガァ!!」
俺は抗議をしていたルインを後ろから口を塞いで黙らせる。
後で別の甘味やるから黙っていろ。
「ありがとうございます!!これで私の寿命も半年ほど伸びました!!」
ヲイヲイ、半年単位で奥さん怒らせてんのかよ・・・
これは旦那さんが悪いのか、奥さんの方の沸点が低いのか分らんな・・・
「気にするな。妻を怒らせた時の対処の大変さはよく知っているからな。」
口を塞がれたルインが何かモガモガ言っているが、今はそれどころではない。
俺も前世では妻の機嫌をどう回復させようか大変だったんだよな。
とりあえず、王都へ着いたら彼にスイートポテトを渡す約束をしてやっと王都へ向けて出発できた。
だって、中の物の時間が停止するストレージに入れてた方が出来たままの状態で渡せるし、長期保存出来るしな。
「プハァ、お父さんちょっと!」
「悪い、今度新しいお菓子作ってやるから我慢してくれ。」
今更だが、最近ルイン子供っぽくなっている?あれか?精神が肉体に引っ張られてるってこと?俺としてはそっちの方が報酬次第では簡単に釣れるからいいけど。
その後も暴れようとしたルインを何とか説得して怒りの破壊衝動を鎮静化させた。
こんな所で力使えば、せっかく復旧し始めたハーフエルフの里が今度こそ復旧不可能な状態になるぞコラ。
俺がルインをなだめている間に聖子たちに先に王都へどんどん進んでいたため、一応護衛として残っているナタリーを除いて既にみんな周りにはいない。
「あ、やっと終わった?さっさと向かいましょ。もうショウコ達の後ろ姿も見えないよ。」
目を閉じて微動だにしていなかったナタリーが俺達の話が終わった途端に話しかけてきた。
まずい、大分時間食っちまった。
完全に置いていかれたので、ルインにAccel(加速)を付与してもらい、走って聖子たちに追いつく。
なお、空を飛ばなかったのは枝が茂る森の中では地上を走った方が圧倒的に早いからだ。
その日の夕方、俺達はリーフレスト連邦国の王都へと到着した。
ハイエルフがいるという中央区で最も栄えてる都市、王都イルペウ
どんな所か楽しみだな。
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