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僕は犬じゃない。

作者: さきら天悟
掲載日:2018/01/15

『目が覚めた?』

女が言った。


きょろきょろと周りを見る。


『どうしたの?』


女の手が頭にのる。


首を振り振りするが、

彼女の手は離れない。


彼女は目をひそめる。

友人に陰で悪口を言われたように。


『頭をぶつけたのが良くなかったのかな』


彼女は僕の両手を持って抱き寄せる。

そして、ぎゅっと抱きしめた。


あたたかい。

悪い人ではないと感じた。


(ありがとう)と言ったが、

声が出ていなかった。

口をパクパクした。

でも、声が出なかった。


なぜ?

声帯が変だ。

もっと大きな声を出してみる。


「ワン」


彼女は僕を見つめると、満面な笑みをした。

そして、もう一度抱きしめた。


僕は身動きできなかった。

何をされたんだ。

意識はある。

しかし、記憶がなかった。


『よし、よし』

彼女は僕の頭をなでた。


『お座り』

彼女が僕に命令した。


僕は茫然と彼女を見つめる。


彼女は構えていたスマホを置き、

僕を抱え上げた。


『蹴ったのが、良くなかったのかな』


彼女は腹の部分を下から見上げた。


「うッ」

僕は彼女に放り投げられた。

何をするんだ。

起き上がるとそこに鏡があった。


鏡に写った僕の姿は犬だった。


『もう一度、蹴れば治るかな』


彼女に蹴られ飛ばされた。

薄れいゆく意識の中で思った。

僕は犬じゃない、と。




気が付くと、検査台に乗せらていた。

白衣の男が二人いる。


『最新モデルなのにどこが故障したんだ』


『どうせプログラムのバグだろう』


『でも、そうなると厄介だな。

同じようにどんどんクレームが来る』


二人の男はため息をついた。

しかし、手は止まってない。

僕のお腹を開き、コードを差し込んだ。

内部プログラムを診断するためだ。

これを無線通信化するとハッキングされてしまう。


『プログラムに異常はないようだ』


コードが抜けると少し体に力が入った。

頭をもたげ、二人を見つめる。

助けてと哀願した。


「ワン」


でも、声に出たのはそれだけだった。


『かわいいな』

二人は声を上げた。


僕は絶望を感じた。

でも、考えろ。

僕の頭脳は人間より上だ。

僕はようやく自分が何なのか把握できた。

僕はロボット犬だった。

世界最新の人工知能を搭載した・・・


そうだ。

僕は思いついた。

古い通信手段だ。

僕は前足で机を打った。


二人は不思議そうに見ていた。


『何か伝えたいのかな?』


『分かった。

これは音楽だ』


『違う。

モールス信号だ』






僕の存在は世間を騒然とさせた。

何のきっかけか、自我を持ったロボット犬。

同じモデルは数万台出荷されているが、

意識があるのは僕、一台、いや一人だった。


ある専門家が言った。

「最新人工知能を搭載しているので、

このようなことが起きても不思議はない」と。



僕は主張した。

「人間に近づけた、いや人間を超えた人工知能に

犬のマネをさせるのは人権侵害だ」


意識がある以上、人権を主張する権利がある、と世間は賛同した。

そして、僕は勝利を勝ち取った。

2030年、人工知能を搭載されたロボット犬は販売禁止となったのだった。



人間を超える人工知能に犬のマネをさせると将来こんな問題が起こるでしょう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 痛みを感じる機能を入れつつ、不必要に賢く作られてしまった、犬の形の器に、入った人工知能。当然のように、そりゃ。犬の生活には馴染めない。 [気になる点] 人工知能のレベルを落とすことで対応す…
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