表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼火遊戯戦記  作者: 鎌太郎
第1ターン:ゲームへの招待
15/94

14 過去と未来と






「――どういうつもりだ、マミ」


 イワトビの店のカウンター。そこには既に、マミとトーマしかいなかった。

 ブロッサムが何かモゴモゴと口の中で言葉を貯めているうちに、結局彼女の設定した制限時間を超えてしまい、その場で謝罪してからログアウトしていった。

 目に見えるほど動揺していた。当然だ。急に自分をギルドに誘うなんて、彼女はそう思っていなかったし、今日そのつもりで店に来たわけでもない。

 トーマもそれは同様だった。今日はたまたま都合が合ったから、マミや何人かのメンツに顔合わせしようと思っただけだ。

 マミが急にギルドに誘うなんて、寝耳に水もいい所。

 そんなトーマの怒りすら混ざっている声に、マミは素知らぬ顔でお猪口を傾けた。


「どうもこうもない。トーマから今まで聞いた話と、今日の態度を見て、ギルマスである私が決めた。

 それ以上もそれ以下もない。あとはブロッサムちゃんの判断次第だろう?」

「ふざけんな。本気でそう思っているわけじゃないだろう?

 あいつはまだこのゲームに慣れていない。そんな中うちに巻き込むなんて、そんな勝手して良いはずがないだろう?」


 ――ブロッサムは、本当の初心者だ。

 【ファンタジア・ゲート】どころかVRゲームの常識すらも知らない初心者。

 まだ道は定まらず不安定だが、そうであるが故にどこにでも行ける自由さがある。それを邪魔する権利は誰にもないし、彼女がどんな道を選ぶかも、彼女の自由だ。

 ここは確かに現実ではないが、だからって本気で考える必要性があるわけではない。

 もし本気で彼女がこの世界を楽しみ、この世界で生きたいのであれば、彼女の選択肢を歪める事をこちらがしてはならない。

 特にマミがギルマスを務める我がギルドは、この【ファンタジア・ゲート】の中でもっとも突飛なギルドと言えるだろう。

 そんなギルドに強制で入れたくはない。


「でも、どのタイミングなら都合が良い、なんて事はないだろう? どうせ君は誘う気でいたんだから良いじゃないか」

「いや、タイミングってもんは、」

「じゃあ、トーマのいうタイミングってのはいつやってくるんだい?」

「………………」


 その言葉に、トーマは何も言い返せなかった。

 ――正直、躊躇していたのは事実だ。

 ブロッサムと過ごしていると、最初はギルドに入れようと考えていた気持ちも冷めて言ったのは、確かな話だ。

 何せあの子は、可能性と才能の塊だ。

 ここ数日間ずっと先頭を行わせてみれば、みるみる彼女の才能は磨かれ始めていた。

 スキルランクの話ではない。所詮、スキルはプレイヤーを補助し、その戦闘能力をゲームの数値に置き換える為に必要なものなだけだ。

 戦闘には必要不可欠だが、重要ではない。

 そういう意味で、ブロッサムには才能があった。

 敵に攻撃されても怯まず目を空けていられる胆力。

 攻撃を上手く当てる為の観察力。

 どのように強い攻撃を放つかのセンス。

 もともとあったそのプレイヤースキルを、スキルが補助し、どんどん強くなっていっている。

 スキルランクはまだⅡに届くかという程度だが、戦闘能力としてはもはや新人のそれではない。

 ――だからこそ、それを自分が縛ってしまうのは如何なものか、と思う。

 このまま言えば、もっと大手から声がかかる可能性も否定出来ないのだ。そうすればもっと良い環境が手に入る可能性も、


「――トーマ。君が今思っているのは、言い訳だよ」


 見透かすような言葉に、肩が震える。

 トーマの動揺を無視して、マミは話を続けた。


「確かに、うちのギルドはちょっと特殊だ。全員が全員好きになるわけじゃない。まともとは言い辛いから、トーマの言いたい事は分かる。

 ――でもトーマのそれは言い訳だよ。本当は怖いんだ。ブロッサムちゃんがもしかしたら『彼女』と同じ道を歩んでしまうかも、ってね」


 バキリッ。

 トーマの手元で嫌な音が鳴る。持っていたお猪口の耐久値を超える力を込め、それを砕き切ってしまったのだ。


「――だからなんだっつうんだ」


 声は果てしなく冷えている。

 割れたお猪口を粉にしながら、隣に座っているマミを睨みつけた。


「そうだとしたらどうだっつうんだ。だからって俺の言っている事が間違っているとも言えねぇだろう

「ああ、勿論、そうだね」


 そんな憤怒を背負ったトーマにも、マミは冷静だ。


「別に私だって、ブロッサムちゃんを利用しようなんて思わないよ、むしろ私が気に入ったから誘ったって側面は強い。

 でも、同時に彼女に闇を見たのは君もだろう? 『彼女』と同種とは言い切れないが、ブロッサムちゃんもリアルじゃ相当苦労しているように見える。あくまで勘だけどね

 何せ、現実ではどんな人間かも知らない人間に――物理的に人を支える事が出来ない人間に助けを求めるくらいだ」


 チラリとトーマの足を見ると、マミはそのままお猪口に入った酒を一気に煽って話を続ける。


「――ッ、このままじゃ、君もブロッサムちゃんもな〜んにもしないでお互い壊れちゃうんじゃないかな? 断言しちゃうにはまだ情報が足りないけど。


 ブロッサムちゃんは、他人を気にして自分の抱えているものを吐き出せない。君も似たような所だ。お互いそうだから無理に聞かない、無理に助けられない。

 だから自分が干渉しすぎる事にも君は懐疑的だし、ブロッサムちゃんに至っては仲間になるって発想すらない。まぁそれは君が故意に色々教えなかったんだが。




 ――また失うのが怖いか、片翼(・・)




 座っていた椅子を倒しながら立ち上がる。

 流れるように装備欄を開いて武器を物質化させると、その切っ先をそのままマミの首筋にピタリと合わせる。

 ――今すぐにでも、喉元をかっ切らんばかりに。


「――トーマさん!」


 イワトビの制止の意味を込めた叫び声にも、トーマは反応しない。

 殺気を帯びたその視線で、今まさにマミを串刺しにせんと言わんばかりだ。


「――ついさっきブロッサムを見ただけで、知ったような口を利くんじゃねぇ。テメェに何が分かる」

「そういう君は、ブロッサムちゃんの何がわかってるのかな?」


 鋭い刃を気にもせず、横目でトーマを見る。

 これまで以上に鋭いその目線は、眼鏡の横から、刃を突き立てるそれと同等の意味と、威力を放っている。


「怖くて相手の事情に深入りしない、こっちも深入りさせないように話をしない。そりゃあ分かるわけないよね?

 しかも私はブロッサムちゃんの事を侮辱しているわけじゃない。彼女の遠慮は仕方のない話だからね。

 ――侮辱しているのは、君に対してだ。この臆病者が」


 最後の言葉には、もはや殺気も怒りも隠し切れてはいない。

 ――彼女も怒っているのだ。




「――表に出ろ、《首刈り》。その減らねぇ口三枚におろす」

「上等だ《神速の対翼(ツヴァイ・フィーゲル)》。臆病者を躾け直してやる」





「やめろ、阿呆ども」




 新たに現れた登場人物の拳骨が、マミとトーマの頭頂部に鈍い痛みをお見舞いする。安全域でダメージもなく、おまけに痛みが10分の1になっているこの世界で、それはダメージにならなければ、言葉に出すほどの痛みでもない。

 しかし目を覚まさせるには十分な威力を持っている。


「――酷いなぁコウ。急に殴る事ないじゃん」


 マミの困ったような視線に、殴った本人は小さな肩を竦める。


「そうでもしないと、お前ら止まらないだろう。本気で決闘デュエルして良い事なんて1つもない……トーマもだ。槍を納めろ」


 しばらく男の言う事を聞こうとせず、槍を構え続けるトーマだったが、小さく溜息をついて槍を納める。


「すいません、コウさん」

「いいや、納めてくれたならそれで良い」

「ちょっとトーマ、私への謝罪は!?」

「さっきのはお前が悪い」


 マミの不満げな言葉を一喝してから、男はマミとトーマの間、少し前までブロッサムが座っていた席に腰を下ろす。

 ――理知的な学者。彼の姿を見た者はそう答えるだろう。

 マミが今掛けている瓶底眼鏡とは違う、シンプルな片眼鏡。着こなされた深緑のローブと、一枚の大きな羽飾りをつけた学士帽もこの世界では珍しくはない姿だ。

 しかしここまでその格好が似合っているプレイヤーを、トーマは知らない。


「イワトビ、僕にも適当に飲み物と料理を頼むよ」


 優しげな言葉でのコウの注文に、イワトビは頷いた。


「了解です――止めていただいてありがとうございます。僕の言葉じゃ止まりそうになかったもんで」

「いいや、この場合はしょうがないさ……さて。話は凡そ予想出来る。例の新人の件だろう?」


 コウの見透かすような言葉に、トーマは困ったような笑みを浮かべる。

 彼は未来視と千里眼でも持っているんじゃないかと思えるほど、異常なまでに理知的だ。


「そうです。っていうか、この件ってどこまで話が進んでいるんですか?」


 多少マミに経過報告していたとはいえ、まだそれほど大した情報は上げていないはずだ。

 そんなトーマの言葉に、コウは何でもないように話す。


「知り合いの情報屋にいくつか調べて貰って、少なくとも彼女のゲーム内での行動は概ね把握している。言動もね」

「……信用されていない、って事ですか?」

「そうじゃない。ちょっと俺も興味があっただけさ。

 そこから判断した事をマミに話しただけだったが……どうやらその所為でマミが暴走したみたいだね」


 コウが呆れ顔でそちらを見ても、マミは知らんぷりでお猪口を傾けている。下手くそな口笛を吹いている辺り、自分が勝手な事をしたという自覚はあるのだろう。


「ただ暴走なのはたしかだが、今回の話を聞いている限り、当たらずも遠からずだろう。お前も自覚しているはずだ」

「……そりゃあ、まぁ、」


 図星でなければトーマもここまで起こることは無い。それに納得して不承不承ながら頷くと、コウも納得して話を進める。


「どちらにしろ、俺達の活動再開は近い。いずれバレる事ならば、ここで言って正解だったのかもしれない。

 それにどっちにしろ、判断するのは彼女自身だ。考える時間があるのは良い事だろう」

「……他のメンツはなんて?」


「ほぼ全員が、新人加入に同意した。もっとも活動再開日に間に合わないメンツは多いだろうがな。新しい風をみんな欲している。

 特に彼女に会っている仁王やクリアリィは大賛成といった様子だ。イワトビはどうだ?」


 コウの質問に、イワトビは少し料理をする手を止める。


「そうですね……良いんじゃないかな、と思います。

 確かにうちはちょっと特殊ですけど、メンバーを限定しているわけじゃないし、ああいう子が入っても良いんじゃないかなと。

 時々寂しそうな顔をする子ですけど、根は良い子で明るいって分かりますし」


「……あいつ、分かりやすいもんな」


 トーマの言葉で、皆思い思いの表情を作る。

 その場にいる誰もが、少なくとも会った事があるメンバー全員が思っているのだろう。

 どこか『彼女』に似ていると。

 彼女の代わりとは言わないが、それでもやはり放置しておくわけには行かないんじゃないかという気持ちを持っている事を。


「――まぁ、どちらにしろまだ先の話だ。トーマはしばらく、ギルドの事は忘れて彼女に色々教え込んで欲しい」

「はい、それは分かってます」


 彼女が自分達の中に入って来るにしろ、拒絶するにしろ、トーマには関わった責任がある。

 出来れば独り立ち出来るようになるまで面倒は見て行きたいというのは、トーマの偽りない思いだった。


「あぁ〜……そう言えば、トーマとイワトビに手伝って貰いたい事があったんだっタァ〜」


 先程まで随分大人しくしていたマミは、わざとらしく声を張り上げる。

 いつも自由人な彼女にしてははっきりしない物言いに、トーマはまたも不機嫌そうな顔になる。


「……今度はなんですか?」

「いやだな〜、そんなに邪険にする事ないじゃ〜ん、さっきのは私も悪かったからサァ。

 実はね〜、私のメインウェポン。覚えてる?」

「マミさんのメインウェポンって……確か、レアドロップの大太刀ですよね。装備名は〈迦羅廻り〉でしたっけ」


 とある特別イベントでのみドロップするレア武器だ。

 攻撃属性斬撃特化で、この世界では最高峰の刀系武器と言えるだろう。特殊効果にアーツのクールタイム短縮や、移動速度の上昇、さらに刀術系アーツの威力向上などがあったはずだ。

 武器としても大業物ではあるが、なにせ希少だ。現存しているものも両手で足りる程しかないだろう。


 その価値は金額に換算するなら、一振り5億M。


 マニアによってはそれ以上の価格をつける人間も多いだろう。

 随分と仁王が入れ込み、興奮気味に説明していたのを覚えている。


「そうそう、それそれ……実はサァ、




 あれ、壊れちゃいました♪」




「「――ハァ!?」」


 思わずトーマとイワトビが同時に叫ぶ。

 もはや2度とドロップしない大業物を壊したと言われて、動揺しないプレイヤーはいないだろう。

 この世界で装備品が『壊れる』というのは相当の事だ。

 まず装備それぞれに割り振られている耐久値がある。装備のレア度や攻撃対象によってその減り方は分かれているが、よっぽど粗悪品でなければ基本は100%から始まる。

 それが0になればその装備の性能は10分の1にまで激減するが、それでも鍛冶屋に修復を依頼すれば耐久値を回復する事が可能だ。

 しかしもしそれを怠って使い続ければ、その装備は壊れる。

 もはや修復も何も出来ず、アイテムとしてはゴミ扱い。生産職系スキルで制作時にかかったアイテムに戻したり、鋳潰して新たな装備の材料に出来るが、それも製作者の力量次第だ。


「何をどうすればそんな事になるんだ!?」

「あの装備結構強かったですよね!? 普通そこまでになるまで使わなきゃいけない状況になる事もないじゃないですか!?」


 マミのスキルランクや、プレイヤーとしての腕前は、言いたくはないが一級品。それに大業物を合わせれば、もはや斬れないものは無いレベルにまで辿り着いていたはずだ。

 それが壊れるなど、よっぽどの戦闘でないと、


「あー……実は先日、マミが復帰前に腕試ししたいと言い出してな。【クリスタル・マウンテン】に行ったんだ」


 コウが言い辛そうに話し始める。

 【クリスタル・マウンテン】は、いわば【ロックロックの丘】の上位版と言えるだろう。防御力が硬いモンスターが多く、HPも多い。攻撃への勘を取り戻す為ならば、絶好の場所と言えるだろう。

 防御力は高くとも、2人が片手間でも倒せるモンスターばかりだ。マミとコウならば、そう危ない目には――そこまで考えて、トーマは1つの可能性に気付いた。


「まさか――〈水晶竜〉に挑んだのか!?」


 〈水晶竜・ライメリア〉。

 【クリスタル・マウンテン】に住んでいるネームドモンスターにして、最高の防御力を誇っているモンスターだ。

 破砕属性の攻撃以外では殆どダメージが入らず、爪や牙の攻撃は強力な斬撃特性、尾や足での踏み付け(スタンプ)は破砕属性と非常に相手にし辛い。

 そして何より一番の特徴は、その特殊ブレスだろう。

 直線状の光のようなブレスを防ぐと、防いだ武器や防具の耐久値が大幅に半減する。しかも近づけば近づくほどその威力は大きく、簡単な装備なら一瞬で修復不能まで持っていかれる。

 ……つまり、そういう事だろう。


「いや〜、久しぶりでついテンションが上がっちゃって」

「あれって確か、高ランクプレイヤーでも4パーティー組んで倒すのが普通でしたよね?」


 イワトビの言葉にコウは頷く。

 ちなみに1パーティー6人なので、〈水晶竜〉は24人で倒すのが当たり前という事だ。


「倒したのか?」

「出来るわけないだろう?」


 さも当然だろうと言わんばかりに首を振る。

 トーマもイワトビも、ですよねーと納得する。

 どんなに1人のプレイヤーの強さがあろうと、倒せないものは倒せない。そのように設定されているし、プレイヤースキルで乗り越えるにしても限界があるのだ。


「それで〈迦羅廻り〉が壊れたってわけか……それ、仁王には話したのか?」


 うちのギルドのお抱え鍛冶屋である仁王に報告しないわけにはいかないだろう。

 そう言うと、マミはしばらく押し黙って、


「……新しいメインウェポンを造るのは良い。その代わり、そんな馬鹿をしたお前には罰が必要だって、




 今度の朝までに、神鉄(オリハルコン)50個納品しろって」




 ――重苦しい静寂が一度その場を支配し、


「おいイワトビ、俺帰るわ、勘定頼む」

「はい。あ、もう店仕舞いするんで2人ともおかえりください」

「待ってお願い!」


 そのまま帰ろうとすると、マミが腰にしがみついてくる。

 さっきまで気まずそうにしている程度だったのに、今にも泣きそうな勢いだ。


「ここで見捨てないでよぉ〜」

「見捨てるわ! 高ランク帯の激低採掘ドロップなんて付き合ってられるか!」

「あれ確か、採掘スキル上げまくってる採取メインプレイヤーでも、10個に1個でしたよね?」

「確か普通のプレイヤーだと100回に1回だったな」

「詰んでるじゃねぇか!!」


 恐らく――いや確実に仁王は怒っている。

 だからこそそんな無茶な要求をして、状況によっては武器を造らないつもりなのだ。そうでなければそこまで無茶な依頼なんか出さない。

 武器防具の類には人一倍うるさく、何より彼は〈迦羅廻り〉を相当気に入っていた。手入れしている最中にウットリと眺める程度には。

 それをそんな不注意で壊せば、それくらい要求する。理不尽ではあるのだが、そうでもしないとマミが懲りないと分かっているのだろう。


「お願い! 必要経費は払うし、なんだったら個人依頼(プレイヤー・クエスト)って扱いにして報酬払うから!!」

「それなら、本職の採取プレイヤーに頼めよ!」

「全員に断られた! 『流石に無茶だ』とか『自業自得だ』とか『報酬が足りない』とか言われた!!」


 ――うちのギルマス、人望無ぇ〜。


 マミ以外の全員の心の声が、今1つになった気がする。


「それにほら、トーマもイワトビも採取スキル持ってたし、イワトビなら火薬でなんとか出来るじゃん!」

「俺、最初は補助スキル扱いでランク低いぞ?」

「僕もあくまで簡単な素材しか集めていないので。そもそも火薬生成するのに結構金と時間かけてますからね、全部払えます?」

「払うよ! それでも武器造って貰わないと困るんだよ〜お願いだよ〜」


 泣きそうだった表情が変わり、もはや泣いている。

 確かリアルではもう20代後半だったはずだが、まるで子供のような泣き方だ。大人の定義を1回考えなおさなければいけないかもしれない。

 さっきの厳しかった彼女はどこに行ってしまったんだろう。酒で流されでもしたんだろうか。帰って来てほしいものだと今は思ってしまう。


「……はぁ、しゃあない。リーダーが丸腰なんて、ギルドとしちゃ様にならねぇからな。報酬はキッチリ頂く!」

「そうですねぇ、僕の方もお願いしますよ」


 根負けしたようなトーマとイワトビの言葉に、腰にしがみついているままだったマミが起き上がる。もうそこには涙の影も形もなく、満面の笑みだ。


「よっし、行くぞ野郎ども!」


 ――数秒でも同じテンションを保っていられない女、侍ガール☆マミ。1年の休止を経ても、彼女の性格は相変わらずだった。






次回の投稿は11月8日の0時に行います。

感想・ブックマーク・評価など、どうかよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ