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23時限目 狂乱の王様ゲーム【前編】

最後のお話はかなり長くなってしまいました。

前編と後編に分けましたので、お気を付け下さい。

 あらかじめ予想されたかのようにくじが用意され、あっという間に王様ゲームは始まってしまった。


「「「「「王様、だーれだ!?」」」」」


 はい、と一番手に名乗りを上げたのは、ぼくだった。


 チッ、と遠慮ない舌打ちをするものが2名。

 言わずもがな、会長と理采だ。

 一応、ぼくって妹さんの恋人で、理采の兄なんだけどな。


 さてどうしようかな。

 なるべく穏便な命令で済ましたいよね。


 考えていると、理采は薄暗い声を上げた。


「お兄ちゃん、わかってるよね」


 ギロリと睨む。

 すると、パチパチと2回目配せした。

 おそらく「理采は2番だから」っていうアピールだろう。


 なんで命令を欲しがってるんだよ。


「大久野くん。君は王様ゲームというのをわかっていると思うけど、命令=罰ゲームでないといけないよ。罰ゲームと判断できないものは、採用しないから」


 おのれぇ、会長め。

 わざわざ釘を刺してきやがった。

 あくまでゲームマスターは自分だといわんばかりだ。


 会長の忠告に誰も異論は挟まない。

 理采などは手で口元を隠してコボルトのような笑みを浮かべている。

 よくわかっていない詩子さんは、みんなでゲームしてることが楽しいらしく、常にウキウキ顔だ。

 鈴江に至っては「なんでこうなった?」と今頃、後悔しはじめていた。


「えっと……。じゃあ、4番が3番の肩を揉む」


 まあ、よかろうと会長は腕を組みながら頷いた。

 もちろん2番は避ける。


「あ。3番、わたしです」


 手を挙げたのは、詩子さんだ。

 げぇ! しまった。まさか詩子さんを当ててしまうなんて。


 じゃあ、4番は……。


 いやな予感がした。


「しゃあああああああああ!!!!」


 シャキーン、と切れの良い音をさせガッツポーズを取ったのは理采だった。

 4番のくじの棒を、聖杯のように掲げる。


 なにいいぃいいいい!!

 ちょっと待って、理采!!

 君は2番じゃ。


「甘いわね、お兄ちゃん。こんな簡単なブラフに引っかかるなんて」


 まさか2番以外、当てるように仕向けたのか。

 そんなことしても、確実に自分に当たるかどうかわからないのに。

 なんという執念……。

 そこまでするか。


「じゃあ、詩子さん。肩を揉ませてもらいますね」


「はい。お願いします、理采ちゃん」


「げへへへ……。任せてくださいよ」


 笑顔で応じる詩子さんと、舌なめずりをする妹のギャップがひどい。

 詩子さん、ごめん。

 何もないことを祈る。


 理采は詩子さんの背後を取った。

 指をワキワキさせながら、詩子さんの肩を揉み始める。


「ど、どうですか、詩子さん」


 ふん、と理采は息を荒くしながら尋ねる。


「ええ。気持ちいいですよ」


「えへへへへ……。じゃ、じゃあ……。もっと気持ち良くさせてあげましょうか?」


 エロ親父かお前は!!

 おい! 涎ふけよ。詩子さんにかかるだろ。


「もういいだろ、理采? 次のゲーム行くぞ」


 もう1回もやりたくないけど、エロ化した妹を止めるためには仕方ない。


 だが、理采は首を傾げた。


「何言ってるの、お兄ちゃん。時間制限があるなんて一言もいってなかったでしょ?」


 こいつ!!

 まさかずっと肩を揉んでるつもりか。


 ぼくの鋭い眼光をかわしながら、鼻唄交じりに詩子さんの肩を揉み続ける。


 お前がその気なら、こっちにだって考えはあるぞ。


会長(ゲームマスター)。肩もみを即刻やめさせるべきです。これは3番にとって、何の罰にもなっていません」


「な! お兄ちゃん!!」


「なるほど。許可しよう。理采くん、もうやめたまえ」


「もう……。会長まで」


「さすがに大久野くんの言い分は一理ある。とはいえ、大久野くん。君が出した命令だからね。もう少し罰っぽいものを頼むよ」


「わ、わかりました」


 しまったぁああ!!

 難易度を引き上げられた。

 温い罰にすると罰ゲームとして扱わないぞ、という暗黙のお達しだ。


 すると、妹が詩子さんの影で口角を上げているのが見えた。

 ちっ! ここまでが読み筋か。

 会長はともかく、理采まで……。

 明らかにこのゲームをやり尽くしている。

 今にも2人から高笑いが聞こえてきそうだ。


 ぬぅ……。

 なんとか詩子さんを守らないと。

 とはいえ、打つ手がない。


「先にもいったが、同じ罰ゲームの申告はなしだからな」


「わかってますよ」


 最初のルール説明でいったことを会長は復唱した。

 同じ罰ゲームは使えない。

 つまり、ゲームが進めば、過激な罰ゲームしか選択肢がなくなるということだ。

 なるべく穏便に、出来れば時間がかかるものがいいかもしれない。


 第2ゲームが始まった。


「「「「「王様、だーれだ!?」」」」」


 はい、と手を挙げたのは詩子さんだった。

 神の奇跡といわれる少女の初めての命令に、一同息を呑む。

 おそらくは様々な思惑が、詩子さんの部屋で入り乱れる中、当人はというと極めて牧歌的な声で、こう命令した。


「じゃあ、2番の人が1番の人の頬をつねる、でどうでしょう?」


 おお。なかなかいい命令だ。

 一応、頬をつねるのは痛みを伴うわけだし。

 罰ゲームだが、穏便に終わりそう。


 問題は1番がぼくってことだ。


「えっと、2番は誰ですか」


 詩子さんが尋ねる。


 手を挙げたのは、会長だった。

 げぇっ! よりにもよって。


 会長は鼻を鳴らしながらぼくに顔を近づけた。

 瞳を細め、蠱惑的な笑みを浮かべる。


 思わず、うっとりと眺めてしまった。

 会長も詩子さんと同じ血を引いてるだけあって美人だ。

 もし学園に詩子さんがいなかったら、きっと彼女が騒がれていただろう。

 そんな人に迫られて、いくら恋人の前とはいえ、竦んでしまう。


「大久野くん、つねってほしいかい?」


「いや、ば、罰ゲームですからね」


「じゃあ、お姉さんにお願いしな。『大久野帝斗は卑しい豚です。どうかご主人様のその美しく濡れそぼって指で、贅肉が詰まった頬に罰をお与えて下さい』って」


「大久野帝斗はいや――」


 いうか!!!!

 百年の恋も冷めた気分だ。

 この人を美人なんていったぼくが馬鹿だった。

 お姉さんじゃなくて、単なる女王様じゃないか。


「なんだよ、大久野くん。ノリが悪いな……」


「ノリが悪くて結構です。つねるんですか? つねらないんですか?」


「そこはもうちょっと情感を込めてさ。せめて『俺様の頬をつねりたいだと? 仕方ねぇ……。ところで頬だけでいいのか』ぐらい言えないのか?」


 いわねぇよ!!


 なんで美男子キャラがいいそうなことをぼくがいわなければならないんだよ。


「帝斗、一言ぐらいいいのではないか?」


 鈴江ぇええ!!

 なんで顔真っ赤にしながら、頼んでるんだよ。

 君、そういう系なの? 男なのに?? 性別と同じでキャラぶれぶれじゃない?


 すったもんだの末、ぼくは思いっきり会長につねられた。


後編は同時に投稿してます。

お気を付け下さい。

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