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絶対無理と思っていた学園一の美少女と付き合い始めたら、何故か甘々な関係になりました  作者: 延野正行
第1章

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9時限目 彼女と勉強会(前編)

日間ジャンル別6位まで来ました。

ブクマ・評価・感想をいただいた方ありがとうございます。

また前日のPVが1日で1万突破しました。

読んでいただいた方、重ねてお礼申し上げます。

 数学の小テストが返ってきた。


 50点中17点。

 半分以下だ。


 お、おう……。


 ぼくは数学が苦手だ。

 数字とか、公式とか、証明とか見てて訳がわからなくなってくる。

 割と覚えることも多いし、ちょっとしたひらめきも必要だ。

 中学までは何とかなったけど、高校から苦手になってしまった。


「おう。どうした、帝斗。暗い顔して」


 園市はぼくの広大な肩に手を回す。

 如何にも悪巧みを考えているような顔で笑い、ぼくの手から小テストを取り上げた。


「ほほう。なかなかの点数ですな」


「くっ。園市はどうだったんだよ」


 バッと小テストを掲げる。

 49点。ほぼ満点に近い。

 ちなみに1点の減点は、字が汚いという理由だった。

 確かに汚い。

 まるで古代文字だ。


 得意げに小テストを見せびらかす悪友を見ながら、ぼくはいった。


「君なら原エラム文字を解読できそうだね」


「何故、イラン辺りで5000年前に使われていた文字を俺が解明しなければならんのだ。文字の汚さのことをいっているなら、ほっとけ。1位をあの方に譲っただけだ」


 園市は兵隊に取り囲まれた詩子さんを見る。

 机に座り、ぼんやりと返された小テストを確認していた。


 詩子さんは頭がいい。

 特に数学は得意で、1学期の期末試験では満点を取っていた。ぼくとは正反対だ。

 今回の小テストも、もちろん満点だった。


 詩子さんはぼくたちの視線に気づく。

 目だけを動かし、こちらを見つめた。

 が、すぐにそらす。


「お、おい! 見たか、帝斗。今、『姫騎士』様が俺の方を見ていたぞ」


 正確にはぼくの方だけどね。


「きっと49点の俺をライバル視しているのだ。今の視線は『これからもお互いライバルとして切磋琢磨しましょう』という『姫騎士』様からのアイコンタクト」


 どうやったら、そういう思考になるんだよ。


「いや、違った。愛・コンタクトだ」


 はいはい……。

 詩子さんの恋人が、ぼくだって知ったら、園市はどう思うだろうな。





 放課後――。

 ぼくたちはまた例の空き教室で向かいあっていた。

 まだうまく名前が呼び慣れてなくて辿々しいけど、ぼくたちは他愛のない話をしている。

 それが詩子さんの望み。

 彼女がこれまでしてこれなかったことを、叶えるのがぼくの役目だ。


「ひ――詩子さん、今日の数学の小テスト満点だってね。おめでとう」


「ありがとうございます。お――帝斗くんはどうでした?」


「えっと……。満点の人には言いづらいかな」


「帝斗くんがわたしの点を知っていて、わたしが帝斗くんの点を知らないのはおかしいと思います」


 むっと頬を膨らませた。

 ちょっと怒っているようだ。

 でも、ごめん、詩子さん。

 ちょっと……いや、かなり可愛い。


「えっとね……。じ、17点……」


「……!!」


 怒りから一転。

 詩子さんは大きく瞳を広げ、驚く。


「あの……。差し支えなければ、見せていただけませんか?」


「え? ……うん」


 ぼくは大人しく従った。

 抵抗したら、きっと怒られそうな雰囲気が、詩子さんの背中から漏れている。

 ぼくの恋人は真面目だからなあ。


 小テストを見ながら、詩子さんの手は震えていた。

 こんな答案はじめて見たというような反応だ。


 やがて17点と右隅に書かれたテストを机の上に置く。

 ふー、と息を吐き出す辺りが、詩子さんの強い感情を表していた。


「ひ――詩子さん……」


大久野(ヽヽヽ)くん」


「は、はひぃ!!」


「別に大久野くんが勉強が出来なくても、わたしは嫌いになったりしません」


 ぼくがちょっと思っていた不安を、彼女は先回りして答えた。


「でも、大久野くんの将来のためにも勉強はきちんと出来た方がいいと思います」


「そ、そうだね」


「だから、勉強会をしましょう!!」


「勉強会!?」


「わたしが大久野くんに数学を教えます。いいですか」


 ガッと机を掴み、詩子さんは身を乗り出した。

 ぼくに顔を近づける。

 さらさらの黒髪と、サクランボのような薄い唇が息がかかりそうな距離にまで接近していた。


 頬が無性に熱くなる。

 詩子さんの瞳に真っ赤な顔のぼくが映っていた。


「どうしました?」


「え? あの……。えっと……。ちょっと顔が、近い……」


 指摘する。

 ようやく詩子さんは正気に戻ったらしい。

 みるみるぼくと同じく顔が赤くなっていった。


 すとんと席に着く。

 気恥ずかしそうに咳を払った。


「す、すいません。ちょっと取り乱してしまいました」


「元はぼくが悪いんだし。勉強会しようか。詩子さんが教えてくれるなら、心強いよ」


「そうですか!」


 パンと、詩子さんは手を叩く。

 悟りを開いた仏陀のように神々しい笑みを浮かべた。

 何だか、とても嬉しそうだ。


「じゃあ、どこでやろうか」


 ここでやってもいいけど、毎回この教室でやるというのも味気ない気がしてきた。


「では、図書室とかどうでしょう?」


 詩子さんは事も無げに提案する。

 図書室かあ。

 本の匂いを嗅ぎながら、2人っきりで勉強する。

 うん。いいかも。


 あ……。でも、難しくないかな。

 あそこは放課後、結構人が集まるし。

 1時間とはいえ、貸し切りにするのは困難なような気がする。


 すると、ぼくのスマフォに着信が鳴った。

 通話をタップすると、聞き覚えのある声が返ってくる。


『話は聞かせてもらったよ、大久野くん』


 生徒会長こと、詩子さんの姉――姫崎亜沙央さんだった。


 てか、どこで聞いていたんだよ。

 まさか盗聴器が仕掛けられているのではないだろうか。

 ぼくは周りを見渡したが、それっぽいものはない。


『はっはっはっ……。MI6でも見つけられないほど厳重に隠しているのに、素人の君が見つけられるわけがないじゃないか』


 スパイでも不可能なガチ盗聴器なんて仕掛けるなよ!


「今までのぼくたちの会話を聞いていたということですか?」

『これは防衛手段だよ。君がムラムラして、不純異性交遊とかしないためにね』


 この前は奨励していたくせに!


『それよりも図書室の件は了解した。任せてくれたまえ』

「出来るんですか?」

『私を誰だと思っているんだい?』


 単なる学園の生徒会長ですが、何か?


『図書館を閉鎖するぐらいわけないよ』

「それはもう生徒会長の権限を越えてませんか」

『うるさいなあ。君は詩子と勉強会がしたくないの? あ。そうか。君は勉強会がしたいんじゃなくて、詩子と別の勉強を』


 したいです!

 図書室で勉・強・会をさせてください!!


後半は本日夕方に投稿予定です。


☆ 次回の更新前にタイトルの変更を考えています。

混乱を招かないよう「リトルオーク」というキーワードはいれるつもりです。

(※ ブクマ推奨)

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