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室町っく・わーるど  作者: 勒野宇流
納屋から同仁斎へ
3/27

第1章の(3)


「なぁカスピ、この人は?」


 着物姿の男に怪訝そうに挨拶したあと、カスピに小声で聞いた。


「よっちゃん」


「よっちゃん?」


 カスピの言うことに普段から信用を置いていない渓市は、その返答にテキトーな雰囲気を感じ、睨みつけて聞き返した。


「わたし、よく分かんないけど、ヨシマサさんって言うんだって。わたしはよっちゃんって呼んでるんだけど」


「えっ、何ヨシマサ?」


「足利」


「そうじゃ」


 と、目の前の男も頷く。


「えっ、足利? ヨシマサ?」


「そう」


 渓市は混乱する頭の中で、今飛び交った言葉を並べる。室町、ヨシマサ、足利……。


「八、代、将軍……、足利、義政様?」


 呟くように、渓市が言う。


「そうじゃ。そのとおりじゃ」


「ええっ!」


 渓市は後ろにひっくり返った。しかし将軍に対して頭が高いととっさに思い、バネのようにポンと起き上がって頭を畳にこすり付けた。


「ご無礼を申し訳ございません!」


「やっぱり渓市知ってたんだ。さすが文系のスペシャリスト!」


 カスピが明るい声で、渓市の肩をポンポンと叩く。


「さすがじゃない。カスピ、頭が高いぞ!」


 渓市は伏せた状態のまま、手を伸ばしてカスピの頭もグイと抑え付けて下げさせた。


「イタタタ、痛い痛い」


「バカ! バタつくな。将軍の前だぞ。おとなしくしろ」


「これこれ畏まらなくてもいいんじゃよ。ここはそういう場所じゃからな。身分は関係ないんじゃ。それより争いはやめなさい。わしは争いが嫌いと言っておるじゃろう」


 もしかして、と渓市は気付く。目の前の人物が本当に足利義政公であれば、ここは銀閣寺の一室、東求堂同仁斎ではないだろうか。

 


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