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室町っく・わーるど  作者: 勒野宇流
八代将軍義政のやったこと
27/27

第4章の(4)


 ポンと壺から吐き出されて、畳に落ちる。そして伸びているところに、上からカスピが落ちてくる。


「危ない!」


 将軍足利義政公が言うのもむなしく、カスピは渓市の背中に落ちた。


 しかし渓市は痛がらない。目を見開いたまま、ぼんやり中空を見ている。


「あれ、どうしたの、渓市!」


 なにも反応を示さない渓市を見て、カスピが不安顔で揺さぶった。それでも反応しない。


「よっちゃん、どうしよう」


 半分泣きながらカスピが聞いた。しかしカスピの慌てようとは正反対に、将軍は落ち着き、笑みを浮かべていた。


「なにも心配することないぞよ、カス殿。これは男がかかる病なのじゃ」


 渓市の表情を見て、義政公は確信していた。


「それじゃ、よっちゃんも男だから、この病気にかかってるの?」


 カスピが渓市を揺さぶりながら聞く。


「うーん、以前はかかっておったな。特にケイイチの頃のワシはもっと重症だったのう。でも今はその病気とは無縁じゃ」


「そうなの。なんかよく分からないけど、治ってよかったね」


 カスピがにこりと笑う。あぁ、この笑顔が渓市の病気の元なのだろうなと、義政公は心の中で頷く。自分でさえもあと30年若かったら、かかっていたかもしれないなと思う。


 義政公は別居している妻の顔を思い浮かべる。妻の日野富子が頭の中に現れ、義政公は全身を震えさせた。

 

 

 


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