表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
室町っく・わーるど  作者: 勒野宇流
八代将軍義政のやったこと
26/27

第4章の(3)


「分かった。行くよ!」


 渓市はカスピの目を見つめ、そう言おうとした。


 でも、どうしても言葉が出てこなかった。


 興味がある。でも怖い。興味がある。でも怖い。……。頭の中は同じ言葉、同じ思いがグルグルと回転している。


「やっぱり、勇気が出ない」


 渓市はかすれた声で、呟くように言う。カスピの顔が目の前すぎて、のどがカラカラだった。


 カスピがさらに顔を寄せる。「あぁ」と渓市は頭の中に声を響かせたが、それは表に出てこない。


 ここでもしカスピに唇でも合わされて、「勇気出た? じゃあ行こ」って手を引かれたら、自分はきっと、ふらふらと行ってしまうだろうなぁと渓市は夢想した。そうなったらマズい。でもそうなってほしい。またもや心の中の葛藤が始まった。


 カスピは小さく唇を開く。そして、


「分かった。じゃあ覚悟決めなくていいから、とりあえず行こ、室町時代に!」


 と、にっこり笑って言った。


「えっ、あっ、えっ!?」


 渓市は手を引かれてふらふらと立ち上がり、なしくずしに鏡を超えてしまった。


「おれ、バカ。このまま翻弄されて死んじゃえばいいんだ」


 ゴンゴンと自分の頭を叩きながら、渓市は掴みどころのないグニャグニャな世界を通り抜けていった。

 

 


 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=391136276&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ