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室町っく・わーるど  作者: 勒野宇流
カスピの邸宅
20/27

第3章の(4)

「ところでさ、鏡なんだけど、こんな納屋じゃなくてさ、もっと安全なところに置いた方がいいんじゃないの?」


「私もそう思ったの。でね、私の部屋に持って行ったんだけど、ここじゃないと鏡に入り込めないのよ。だからここに置きっ放しなの」


「えっ、そうなの?」


「うん。試したんだけど、ダメなの。この納屋じゃないと、この時を超える鏡は、ただの鏡になっちゃうの」


「さっきさ、あの土蔵の方が安全かと思って運んでみたんだけど」


「そうなんだぁ。それでこっちに戻ろうと思ってもつっかえちゃったんだね」


「つっかえた?」


「うん。戻れなかったのよ。きっと納屋から動かしたからね」


 渓市はサァッと顔が青ざめた。もし土蔵が開いていたら、きっとその中に鏡を設置してしまったことだろう。そうしたらカスピはこっちの世界にずっと戻れなかったのだ。


「なんでそんな大切なこと教えないんだ!」


「え、うーん、なんでって言われても……」


 珍しい渓市の怒鳴り声に、カスピがたじろいだ。一方渓市は不思議で仕方がなかった。こんな話にも、不安な表情一つ見せない。カスピはこちらに戻れなかったときに、なにも不安を持たずにじっと待っていたのだろうか。もしも自分だったら、つっかえてると思ったと同時にパニックになってしまうだろう。


「渓市、お腹すかない?」


「なんだよ急に。こんな話をしてるときに、お腹すくわけないだろ」


「そぅお? 私はすいたんだけど。ちょっと私ん家で食べて出直そうよ。そしたらよっちゃんの部屋のお客も帰ってるんじゃないのかな」


 そう言いながら、カスピは渓市の手を引っ張っていく。


 こんな話のときに腹がすいたなんて、どういう神経してるんだ。渓市はカスピに引っ張られながら、不思議で不思議で仕方がなかった。

 


 



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