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ちさ×ちさ    作者: といろ
1/3

あの子は

午前7時 今日はなんと始業式 少し早目にセットした時計のタイマーがピピっと鳴りだす。

4月15日春が近づいてきたとはいえまだ少し肌寒い。

家賃一ヶ月3000円と安いアパートのキッチンで家族の朝食を用意しているのは千郷である。

小花千郷、少し青みのかかった黒髪は短く切ってある。

身長は平均より少し高めの173cm。八月十日生まれ乙女座。

大きな欠伸をしたあと背伸びをすると間抜けな声が出る。いつもの朝。

後ろからは毎朝お馴染みの女性アナウンサーが占いをしていた。

占いなんて信じても意味がないと分かっているのでさほど興味がなく聞き流していたとき、


『今日の運勢ナンバーワンは乙女座のあなた!気になる異性に近づけるチャンスかも!』


ボードに貼られた乙女座のシールをビシッと指差した女性アナウンサーの声が聞こえた。


(乙女座の…あなた!?)


カッと目を開き目玉焼きを作っていた箸から手を離し勢いよく振り返りテレビの前までダッシュする。

「気になる異性・・・鈴村!?そういえば二年になってからまだ話してないもんなぁ…」

テレビの前で一人で「いやぁ…でもなぁ…所詮占いだし…話しかける話題もないし…」などと独り言を言っていると、


『気になる異性に話しかけづらいそこのあなた!今日のラッキーアイテムは』

(うおお!!)


まるで心の中を読まれたような絶妙なタイミングでアナウンサーが言った。

ドキドキしながら次の言葉を待っていると、あらかじめポケットに入れていたであろう黒い物を取り出しこう言った。


『それは…これ!黒のストッキング!これを履いていれば勇気100倍!』

どこかで聞いたフレーズがアナウンサーの口から出るがそんなことすらも気にならなかった。

目が点になり少しの放心状態の後冷静に考える。

(え?おかしくない?ストッキングとか履くこと以前に持つ事すら出来ないと思うんだけど男は)


『ポイントは黒ね!黒!黒以外の色はダメヨ!』

「知らねーよ!黒かどうかなんて!」


テレビ相手にツッコミを入れている。朝から何してるんだろう俺は。

少しして落ち着きを取り戻し「あれ、今なにしてたんだっけ…」と、考えていると

後ろから黒い煙が立っている。フライパンの鉄が焦げその中にかすかに卵の臭いがした。

テレビの前で馬鹿やっている間に目玉焼きが焦げ焦げになってしまい異臭を放っていた。

あーあ、と溜息がでる。フライパンの中の黒い物体をごりごりと落とし水の中につける

なんだか料理するのが面倒になってきたので今日の朝ごはんはアツアツの白米に塩こんぶ。

テレビの上に置かれた時計を見ると7時30分と表示されていた。

学校は8時30分からなので余裕で間に合うがいつも45分には家をでているので少し急ぎめにご飯を食べあげ自分の部屋に行き教科書をかばんに入れいってきます、と誰もいない空間に声をかけ家を出る。

と、千郷がドアを開けたと同時に隣りの部屋のドアもガチャリと音をたて中から人がでてくる。

目線を下に下げる。150cmくらいの体に腰まである綺麗な茶髪の髪をした女の子だった。

無意識にじっと見ていると部屋の鍵を閉めた女の子がこちらに気づき目が合う。

見知らぬ女の子を凝視している、というヤバイ状況に気づき何か言おうと考える。


「あ、どうも」


と、一言。自分の言語力のなさに呆れていると、ニコっと軽く笑顔を作り


「どうも、おはようございます。」


そして軽く会釈をして階段を下りていく。

なんていうかたった一言挨拶を交わしただけなのに見惚れてしまっていた。

人形のように整った顔立ちをしていて、こんなただボロいだけなのに危ない物件だと思われているアパートには似合わないくらいだった。


通学路を歩く。

さっきの女の子の顔が頭の中に残っていて離れなかった。

見惚れてしまうほど可愛かったから?いや違うそういうわけではなく

どこかで見た事がある気がするというモヤモヤだった。

うーん、と考え事をしながら進んでいくと聞きなれた音が遠くから耳に届いた。

なんの音だっけ?と一瞬考えすぐに答えにたどりつく、これは

学校の8時30分のHRのチャイムの音。始業式に遅れる。

先ほどまで考えていた事を放棄し全力で走り出す。


結果から言うと遅れた。校長先生が長々と話している間に体育館の扉を開け自分の席に着こうとした先生に見つかり怒られた。

始業式が終わり無事高校2年生となった千郷は新しいクラスが展示されている廊下へ行き自分のクラスを確かめる。

廊下のボードにはでかでかと『平松高校2年クラス』と掲示されていた。

(4組・・・か)

自分のクラスを早々に確認し速足で向い自分の席に着いた瞬間机につっぷす。

知らないやつと話すのが少し苦手なため新しいクラスは知らない人だってもちろんいるわけでちょっと怖かったりもする。といっても千郷はまだ学校の生徒の10分の1は知らないやつだ。

この学校はこの辺では一番大きな学校であり生徒数も多く人学年で500人以上がいるため組も10組あり

正直頭があまりいい方ではない千郷は自分のクラス、そして千郷が入っている陸上部の先輩後輩を覚えるくらいでいっぱいいっぱいだった。

陸上は小さい頃からずっと続けておりその為か今では走る以外ほとんどの事に興味を持てない脳筋になってしまっていた。


多分それが原因である。

よくしゃべる男友達、そして中学の時一緒だった鈴村以外にはあまり興味を持た無かったからであろう。


廊下で笑い声が聞こえる。

ちらっと目をそちらへ移すと女子達が数人で話していた。

特に興味もなかったので机につっぷして寝ようとした、が

もう一度顔あげ女子達の軍団を見る。


あの子だ。

朝初めて会った女の子。

初めてにしては頭に残ったモヤモヤもやっと理解ができた。

同じ学校だったんだ。多分廊下ですれ違ったり行事などで見かけることがあったんだろう。

またも朝と同じくじっと凝視し続けているとあちらもこちらの様子に気づいたのか千郷の顔を確認しようと見てくる。そして朝会った男だと気づく。


瞬間、彼女の顔が一気に青ざめていく「え?・・・え?」みたいな感じで戸惑っているのが遠くからでも見て取れた。


なぜそんなにも戸惑っているのかまったく理解ができないままだったが

2回目の出会いは彼女にとって嬉しいものではなかったという事だけは脳筋にも理解できた。



















初めて書きました。

毎日更新できたらいいなと思ってます。

生暖かい目で見守ってください

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