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02章 二人はクリソツ

【注意点】

キャラ崩壊必至のギャグ要素有り

主人公が怖じない

英語

「運命の悪戯か……?」


 桜夜は真剣な顔でその言葉を言ってのけたが、一方で真剣に聞いていた咲夜と美鈴は呆然とした顔と白い目で桜夜を見つめていた。そして桜夜の後ろには冷たい風が吹いた。


「……あれ、割と真剣にボケ無しで言ったんですけど」


「でしょうね、あれがボケだったら座布団全部剥ぎ取るレベルよ」


「私もあれは御世辞でも笑えないですね……」


「だったら『何……だと……』の一言ぐらいノリで言って欲しいんですが……」


「まぁそれは良しとして、とりあえず中で話を訊かせてもらうわ。美鈴、彼を通してあげて」


「はい、わかりました!」


 咲夜の言葉と共に美鈴は鉄格子の門を勢いよく開け放ち、どうぞと言わんばかりの笑みで桜夜を門内へ迎え入れる。門外からでもわかるサイズの建物である紅魔館、それは桜夜の目には違和感でしかなかった。


 まず窓が無い、本来ならどの建物にも設置されている窓がこの館には見当たらない。そして赤い、塗装が赤い、とにかく赤い、館の全てが赤い、怪しい以外の何ものでも無い。


 桜夜は目を擦り、見ていたら今にも目が痛くなりそうな紅魔館の赤い姿を見て再び目を擦った。擦った後に今度は目に入ってくる赤色を少しでも減らそうと目を細めた。


「何してるの?」


「いや、目が痛くて」


「そんな早く痛くなるワケ無いでしょ……。慣れるしか無いわね」


「マジですか……」


「マジね」


 桜夜は思った、こんなに塗装を紅くする理由なんて何処にある? 目どころか体全体の健康が心配になる──と。確かに、未だ嘗てないほど、これほど色が集中した建物は存在しない、いや寧ろ桜夜の現状、この世界はこんな建物ばかりなのか? と思っているに違いない。


 やはり目が痛い桜夜は目を瞼の上からマッサージしながら紅魔館内へと案内されて入って行った。そして桜夜は紅魔館に入ってから吃驚仰天の四文字を体現するのだった。


 何故ならこの館、外装だけに留まらず、内装のカラーリングまでもが赤かった、真っ赤っかだったのだ。吃驚仰天の桜夜曰く、マジで健康に悪いって──だそうだ。


 更に、桜夜は紅魔館に入ってから体感する空間を奇妙に思った。外から見た紅魔館も確かに大きかった、だが、桜夜の体感した館内部はそれ以上に広大で、非常に違和感だった。


「咲夜さん、この館変ですよ?」


「何がかしら?」


「外から見たこの館は確かに大きかった、でも中に入った途端、更に大きくなったような……」


「気の所為よ、赤色の見過ぎじゃないかしら?」


「そうなのかな〜……」


「ところで、あなたはお嬢様を知っているのかしら?」


 桜夜は紅魔館内の異様さを訴えるも、咲夜に目の錯覚と断定されてしまった。それから直後、唐突に咲夜は桜夜に"お嬢様"を知っているかを問い掛けてきた。


 無論、桜夜は咲夜の言う"お嬢様"を全く知らない、それどころか、一体何処の誰なのかすらもわからない。桜夜は"お嬢様"は恐らくこの紅魔館の主の事だと論理的に解釈した。


「ここの館に住んでる人ですか? そんなの知りませんよ……てか、何で俺がそんなの知ってるんですか」


「あら、てっきり知ってるのかと思ったわ。大抵の外来人は皆私達の事を知ってるから、あなたもその一人かと思ったんだけど、例外も居るのか。どうやら私の勘違いだったみたいね、ごめんなさい」


「そんな、何も謝られるような事じゃないですよ」


「一応説明しておくわ。お嬢様は、この紅魔館の主、名をレミリア・スカーレット。間違っても人間じゃないから気を付けなさい」


「それって吸血鬼って事ですか……」


「えっ? 何故それを知っているの?」


「えっ?! そうなんですか!?」


「えッ!? 当てずっぽうなの!!?」


「えッッ!? 当たっちゃったんですか!!??」


「えッ!」


「えッ!?」


「えッ!!」


「えッ!!?」



「「えぇぇぇぇぇぇッ!!!」」



 桜夜と咲夜は互いを見合わせ、揃って声を合わせて絶叫した。その絶叫の瞬間、館内のカリスマな誰かがちょっとだけずっこけて、何故か椅子の足下を確認する状態になっていた。


 一方で桜夜と咲夜は見た目に違わぬ似た者同士のような意思疎通を交わし、その驚きに暫らく互いを見合わせて硬直していた。そして互いの顔の違いの無さに鏡を見てるような感覚にさせるのだった。


「見れば見るほど似てるわね」

「見れば見るほど似てますね」


 ついには言葉のタイミングや文字数までもが一致、いよいよ気色が悪い二人は一旦距離を置こうとして揃った動きで離れる。そんな場面で咲夜と桜夜は我に帰る。


「こんな事をしてる場合じゃなかったわね……」


「そうですよね……ところで、咲夜さん。今からどちらへ?」


「今からあなたをお嬢様の下へ献上するわ」


「け、献上? その言葉の意味は確か物品を差し上げる意味では?」


「そうよ、そのままの意味。あなたを献上する」


「……血とか吸いませんよね?」


「吸うかもしれないわね」


「マジですか……」


「マジね、だって吸血鬼だし」


 桜夜は顔が青褪めて思う、何でいきなりそうなってしまうんだ──と。確かに、自身は適当に吸血鬼と言ったら当たってしまった、だが、そんな事でまさか口封じのような事をするのだろうか? いや、あり得る、あり得てしまう……


「……間違っても殺しはしないわ、大丈夫よ」


「それって殺す(・・)って事ですか……!?」


「何故そうなるの……」


「だって、ダチ○ウ倶楽部だって『押すな』は『押せ』の合図なんですから、『殺さない』は『殺す』って事でしょう!?」


「な、何を言っているかよくわからないけど、大丈夫! 大丈夫よ! 『殺さない』は『殺す』の意味じゃ無いわ、『殺さない』は『殺さない』のままよ! Do you understand?」


「の、No, I don't……」


「Oh my god!」


「咲夜さん」


「何?」


「英語じゃなくて日本語を喋りましょうよ……」


「──そうね」


 何故か下りがダチ○ウ倶楽部に変わり、途中から会話が英語に変わっていた二人。さすがにワケがわからなくなった桜夜は話の路線を不本意ながら戻す事にした。


 結局桜夜は泣くなく咲夜に案内されるままお嬢様の部屋の前まで連れて来られてしまった。まだ一杯やりたい事があったのに──と嘆くも桜夜、時は既に遅かった。


「だから殺しはしないとあれほど言ったのに……」


「そんなのどうやって信じろって言うんですか……!」


「……もう、開けるわよ? 涙も出てないのに泣くのはやめなさい」


 咲夜は溜め息を吐きながら部屋の入口扉をノックして開ける。扉が開いて桜夜に見えたのは、部屋の奥の玉座の肘掛けに肘を置いて優雅に座る子供の女の子の姿だった。


 しかし桜夜、どんなカッコ良い女性なのか期待してみたところ、開けたら中身はそれらしい雰囲気を醸し出そうとしてる子供だった。桜夜の中での予想とは大きく反していたようだ。


「あ、あれが、お嬢様?」


「そうよ」


「あの玉座みたいな椅子に座った子供が?」


「えぇ」


「──冗談よしてくださいよ」


「えっ?」


「本当は八頭身の美麗な女性なんでしょ? 本当はボンキュッボンなお嬢様なんでしょ??」


「ちょッ! 何を言ってるの!? やめなさい! 聞こえたらどうするの?!」


『悪かったわね、八頭身のボンキュッボンじゃなくて』


「お嬢様、申し訳御座いません。この青年、実は門前に倒れていまして、恐らく例の"妖怪"が元凶かと」


「そう、なら後で博麗神社にでも届けて来い。それはそうと、そこの銀髪。名前は?」


「あぁ、えーと、七星 桜夜です。七つの星に桜の夜と書きます。19歳、大学生及びフリーター、身長は185cm、頭はまぁまぁの方で、特技は……」


「もういい、そんなに要らん。しかし"七つの星に桜の夜"か。なかなか洒落た名前じゃないか」


「あ、ありがとうございます」


 桜夜は思う、さっき美鈴さんにも似たような事を言われたが、みんな名前のセンスがズレてるのかーーと。同時に桜夜は内心で視線の先の子供を疑いの目で凝視する。


「まぁ、良い。銀髪、こっちに来い」


 子供に言われた通り目の前まで歩み寄る桜夜。近くで子供を見て桜夜は改めて思った、やっぱ本当に子供だ、しかもかなり幼い、でも態度は一人前かーーと。


「どうした? ジッと見て、私の顔に何か付いてるか?」


「いや、子供だなと思って」


「子供で何がわr……お前、似てる……!」


「えっ?」


「さ、咲夜、ちょっとこっちに来なさい!」


 突然様子が変わった子供は、桜夜と言われた通り歩み寄ってきた咲夜を見比べた。そして開いた口を手で覆い、またじっくり二人を見つめてから開いた口を閉じた。


「やはり、似てる……! 顔が、顔が瓜二つだ……」


「咲夜さん、この子大丈夫ですか?」


「顔が似てる事に対して余程奇妙なのよ、大丈夫」


 驚愕する子供お嬢様を他所に、二人は静かに言葉を交わす。そんな中、子供のお嬢様は手を叩いて速やかに我に帰る。


「気が変わった。桜夜、今日から私の執事になれ」


「えっ?」


 いきなり何を言い出すのかと思えば、子供の執事になれって? 本当に何を言ってるんだか──。桜夜は頭の中で整理するのが面倒になり、両手を小さく上げてまた咲夜に静かに問い掛ける。


「咲夜さん、この子本気なんですかね?」


『本気だから言っているんだ! でなければ、お前みたいな態度の奴を執事にしようとは思わん!』


 先ほどから桜夜の態度にいい加減痺れを切らしたお嬢様が怒鳴る。桜夜も咲夜も、お嬢様が桜夜を執事として雇おうとする理由は確信出来るほどわかっていた、顔が瓜二つだからだ。


 寧ろ、二人の中でこれ以上の理由が他に見つからなかった。咲夜はお嬢様の性格を理解した上で、桜夜は常識的に考えた上で出た答えだった。


「私の直々の執事なんだ、ありがたく思えよ?」


「は、はぁ……」


 桜夜はもうこの状況がどうでもよくあった、夢なら夢で早く覚めて欲しい──と。咲夜も少々思考を捨て気味で、ただ状況の有様に目を瞑るだけだった。


「そうだな、桜夜と咲夜じゃ名前が同じでややこしいな。なら、桜夜は七星、咲夜は咲夜で呼ぼう。これなら間違えん」


 目の前で人の意見も訊こうとせず、何故か勝手に話を進めるお嬢様が一人。それを目の前で眺める二人は目を点の形にして佇んでいた。


「じゃあ、早速今日から働いてもらおうか、七星」


「えぇッ!? 今日からですか!?」


「当たり前だ。服は妖精メイドに急いで作らせる。咲夜、それまで七星に館の案内でもしておけ」


「は、はい。仰せのままに……」


「何だか大変な事になっちゃったぞ……」








続く

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