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花は花に、鳥は鳥に。  作者: まめ太
『冷蔵庫 味噌』
65/124

2-4

 母が風呂を使っている間に、仲居さんが夕食の膳を運んでくれた。

 母が呑みかけだったお茶碗と使い終わりのティーパックも、手慣れた様子で持ち帰ってくれた。

「ビールの追加は、添え付けの電話でフロントにお申しつけくださいね、」

 一通りの注意事項を述べ、テーブルを片付けて仲居さんが言う。ビールは後で運ばれてくるそうだ。

 二人掛かりで、テキパキとセッティングが整っていく。

「ほな、これで。」

 やはり京都のイントネーションの混ざった挨拶を残して、仲居さんは退出した。


 座卓の上には卓上コンロを中心に、小鉢や刺身や一品料理が所狭しと並んでいた。

 小さな塗りの御櫃をお行儀悪くちょこっと覗いたら、中身は炊き込みご飯だった。

 すごい御馳走だ。気分が浮き立ってくるくらい。


「ふー、いいお湯だった。あら、ご飯来てたの。」

 入れ替わりのタイミングで、母が家族風呂から上がって顔を見せた。

「まー。すごい御馳走ねぇ、無理したんじゃないの? 遙香。」

「遠慮しなくていいわよ、お母さん。どーぞ、召し上がれ。」

 ちょっと得意げな顔で、お膳を示してわたしはそう言った。

 今回の旅費は、ぜんぶわたし持ち。

 親孝行なのだから当然だ。ちょっと痛かったけど。


 卓上コンロには鉄なべが置かれ、中で大きな昆布が一枚煮えていた。

 はみ出しそうな大きさの肉厚の昆布をどうしたらいいのかと戸惑っていた。

「失礼いたします、」

 また仲居さんが戻る。

 正座で襖を開け、脇へ置いたお膳を座敷へ運び入れた。

 お膳には大きなザルに、カニが一杯、それに豆腐とか菊菜とか、鍋の用意が乗っていた。


 カニがお鍋にダイブする様子は感動的ですらあった。

「まずはカニだけでお楽しみくださいね、後で他のもんも入れますよって。」

 にこやかな仲居さんが慣れた手つきでカニを捌いて鍋をセットしていく。

 わたし達は何もする必要がなく、その手許を見物していた。

「ゆずポン酢と、お好みでそちらの特製味噌もご賞味くださいねぇ。お豆腐によぅ合いますよって。」

 仲居さんはセッティングを済ませ、一通りの料理を進めて素早く退出した。

「そんなら、ごゆっくり。」

 頭を下げる仲居さんに、釣られて母娘でぺこり。


「お味噌ですって、遙香。」

 一見して、市販の普通の味噌じゃないことが解かるお味噌が小鉢に盛り付けてあった。

 上品に盛られた味噌の上に山椒の葉が一枚。味噌はゴマの粒が目立つほどに混ざっていて、舐めると甘く、生姜の刺激が後を追ってくる。

「おいしい、これ。」

「どれどれ?」

 母もついと箸を出した。


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